解釈のための古典文法①助詞・助動詞
これは高校生の大学受験のための知識確認を目的としたページです。
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■ Aで基本知識を確認し、Bの基本問題の例文を解釈してください。
■公式1:る・らる
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:受身・可能・自発・尊敬という四つの意味がある。意味の判別が大事。基本的には文脈で見分ける力が大事と思うが、それぞれの意味の判別のポイントは次のようなものである。
2:可能の場合には「恐ろしくて寝もねられず」のように、下に打消・反語表現を伴うことが多い。ただ鎌倉時代以降は、例えば「冬はいかなる所にも住まる」のように単独でも用いられるので注意が必要である。
3:自発の場合には「住みなれしふるさと、限りなく思ひ出でらる」のように「思ふ・しのぶ・ながむ」などの知覚・心情語と結びつくことが多い。ただこれも例えば「うち笑まれ給ふ」が「自然と微笑まれなさる」のように自発で解釈されるのが自然なケースも多くあり、知覚・心情語といってもその守備範囲は多く、文脈をよく読み取る必要がある。
4:尊敬の場合は「いとうしろめたしと仰せらるれば」のように尊敬語の下にある場合が尊敬である。ただし、平安時代の文章で「思さる」とあった場合には、「る」が尊敬語の下にあっても自発と解釈する。例外だが、出て来る頻度は高いので注意したい。
5:また「れ給ふ・られ給ふ」のように尊敬語の上にあるときは尊敬以外の意味であることは注意して覚えておきたい。「せ給ふ・させ給ふ」の「す・さす」がほとんど尊敬であることと混同しやすい。
6:このほかに受身の意味があるが、これは「~に~される」という形の「~に」という対象の有無をイメージして判断する。それが省略されている場合も多い。
7:岩波古語辞典(大野晋)には「る・らる」の四つの意味を農耕生活の中で自然の成り行きに身を任せる日本人の在り方の反映だと説明している。人為、作為的に起こすのではなく、自然の成り行きとして起こる感覚が自発であり、その「出で来る」という感覚は、自然の成り行きで事が成る、すなわち「出来る」という可能のニュアンスに通ずる。また、その自然に起こることを身に引き受けねばならないことが受身であり、そこに必然的に生まれる畏怖の感覚が尊敬に通じる。
■→接続と活用:未然形接続。二つの違いは「る」が四段・ナ変・ラ変に、「らる」がそれ以外の活用をするものに接続することである。活用は下二段型(れ・れ・る・るる・るれ・れよ)■→識別問題へのリンク:「る・れ」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:涙のこぼるるに、目も見えず、ものも言はれず。
イ:なきことにより(無実の罪で)、かく罪せられ給ふを、
ウ:家の作りやうは夏を旨とすべし。冬はいかなる所にも住まる。
エ:「少納言よ、香炉峰の雪はいかならむ」と仰せらるれば、
オ:(姉が死んで)言はむかたなくあはれに悲しと思ひ嘆かる。
カ:思ふ人の人にほめらるるは、いみじううれしき。
キ:哀しうあはれにおぼさるれども、気色にも出だし給はず。
ク:筆を執れば物書かれ、楽器を取れば音を立てんと思ふ。
ケ:かの大納言、いづれの船にか乗らるべき。
コ:秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる
解答
ア・可能・未然
・涙がこぼれるので、目も見えず、ものを言うこともできない。
イ・受身・連用
・無実の罪でこのように罰せられなさるのを
ウ・可能・終止
・家の作り方は夏を中心に考えるのがよい。冬はどんなところにも住むことができる。
エ・尊敬・已然
・「少納言よ、香炉峰の雪はどんなであろうか」とおっしゃるので
オ・自発・終止
・言いようもなく、しみじみと悲しいと、自然と思い嘆かれてしまう
カ・受身・連体
・自分の思う人が人にほめられるのは、たいそううれしいことだ。
キ・自発・已然
・哀しくしみじみとお思いになられるけれども、そぶりにも出しなさらない
ク・自発・連用
・筆を執れば自然と物が書かれ、楽器を取ると音を立てたいと思う。
ケ・尊敬・終止
・あの大納言はどの船にお乗りになるのだろうか。
コ・自発・連用
・秋が来たと目にははっきり見えないが風の音に(秋が来たと)自然とはっと気づくことだよ
C・入試問題
■1:適当な意味を選びなさい。
A:かかるすずろごとに心を移しはかられたまひて
B:ただいとまことのこととこそ思う給へられけれ
選択肢→①断定・②伝聞・③完了・④過去・⑤尊敬・⑥受身・⑦自発
■2:次の「る・らる」の用法を1~4の中から選べ。
古代の親は、宮仕へ人はいと憂き事なりと思ひて過ぐさするを「今の世の人は、さのみこそは、出でたて。さてもおのづからよきためしもあり。さても心見よ」といふ人々ありて、しぶしぶに出だしたて(イ)らる。
まづ一夜まゐる。菊のこくうすき八つばかりに、こき掻練をうへに着たり。さこそ物語にのみ心を入れて、それを見るよりほかに行き通ふ類、親族などだにことになく、古代の親どものかげばかりにて、月をも花をも見るよりほかの事はなきならひに、立ち出づるほどの心地、あれかにもあらず、現ともおぼえで、曉にはまかでぬ。
里びたる心地には、なかなか、定まりたる里住よりは、をかしき事をも見聞きて、心も慰みやせむと思ふをりをりありしを、いとはしたなく悲しかるべきことにこそあべかめれと思へど、いかゞせむ。師走になりて又まゐる。局してこの度は日ごろさぶらふ。うへには時々、夜々ものぼりて、しらぬ人の中にうち臥して、つゆまどろま(ロ)れず。恥づかしう物のつゝましきまゝに、忍びてうち泣か(ハ)れつつ、曉には夜深くおりて、日ぐらし、父の老い衰へて、我を子としも賴もしからむかげのやうに思ひたのみ、向かひゐたるに、戀しくおぼつかなくのみおぼゆ。母なくなりにし姪どもも、生まれしより一つにて、夜は左右に臥しおきするも、哀れに思ひいで(ニ)られなどして、心も空に眺めくらさ(ホ)る。たち聞き、かいまむ人のけはひして、いといみじく物つゝまし。
選択肢→①受身・②自発・③尊敬・④可能
解答
1・A=⑥・B=⑦
2・イ=③・ロ=④・ハ=②・ニ=②・ホ=②
■公式2:す・さす・しむ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「す・さす」は、使役・尊敬という二つの意味を持っている。
2:使役の場合は、「たよりごとに物も絶えず得させたり」のように、尊敬語と結びつかず単独で用いられる。
3:尊敬の場合は、「入道殿の大井川に逍遥せさせ給ひしに」のように、尊敬語と結びつく場合であることが多い。「せ給ふ・させ給ふ」は、その代表的な例であり、いわゆる最高敬語の形として頻繁に登場する。
4:ただ「せ給ふ・させ給ふ」の場合も「す・さす」が尊敬ではなく使役であることが8%程度あると言われている。例えば「(御琴を)このかたに心得たる人に弾かせ給ふ」などのように文脈上、使役と取らなければいけないケースがあり、それが例外として入試で出題される可能性が高いので注意しなければならない。
5:「しむ」は漢文脈で用いられる。
■→接続と活用:未然形接続。二つの違いは、「す」が四段・ナ変・ラ変に、「さす」はそれ以外の活用の動詞に接続する。活用は下二段型(せ・せ・す・する・すれ・せよ)■ 識別問題へのリンク:「せ」の識別
B・基本問題(意味・活用形・口語訳を確認)
ア:(女官に)御格子あげさせて、(私が)御簾を高くあげたれば、(中宮様は)笑はせ給ふ。
イ:何によりてか目を喜ばしむる。
ウ:(帝は)猫を御ふところに入れさせ給ひて、
エ:月の都の人まうで来ば、捕らえさせむ。
オ:御随身を召して遣り水はらはせ給ふ。
解答
ア・使役・連用:尊敬・連用
・女官に御格子をあげさせて、私が御簾を高くあげたところ、中宮様はお笑いになった
イ・使役・連体
・何によって目を喜ばせるのか。
ウ・尊敬・連用
・帝は猫を御ふところに入れなさって
エ・使役・未然
・月の都と人がやってきたとしたら、捕らえさせよう。
オ・使役・連用
・御随身をお呼びになって遣り水をはらわせなさる。
C・入試問題
■1:傍線「せ」と同じ意味・用法のものを選びなさい。
この道に志の深かりし事は、道因入道並びなきものなり。七、八十になるまで、秀歌詠ませ給へと祈らむため、かちより住吉へ月詣でしたる、いとありがたきことなり。
選択肢
①:上おはしますに、ご覧じていみじう驚かせ給ふ
②:こなたかなた心をあはせて、はしたなめわづらわせ給ふ
③:父判官も軍奉行をつかまつらせらるる上は、われこそ先陣を駆けめ
④:家来多く討たせ、馬の腹射させて引き退く
⑤:御門おりさせ給ひて、春宮四つにならせ給ふにゆづり申させ給ふ
■2:次の文章を読み、後の説明文の空欄部分ア~エの中に入れるものとして適切なものを選択肢の中から選んで記せ。
淑景舎などわたり給ひて、御物語のついでに、「まろがもとに、いとをかしげなる笙の笛こそあれ。故殿の得させ給へりし」と宣ふを、僧都の君、「それは隆円に賜へ。おのがもとにめでたき琴あり。それに代へさせ給へ」と申し給ふを、聞きも入れ給はで、こと事を宣ふに、いらへさせ奉らむと、あまたたび聞こえ給ふに、なほものも宣はねば、宮の御前の、「いなかへじと思いたるものを」と宣はせたる御けしきの、いみじうをかしきことぞかぎりなき。
説明文
助動詞「さす」には(ア)の意味と(イ)の意味とがある。傍線部「故殿の得させ給へりし」は、「さす」の意味をどちらに解すかによって、解釈に大きな差が生ずる。(ア)の意味として解せば(ウ)が笙の笛を入手したという意味になるが、文脈からみて(エ)が(ウ)から笙の笛をもらったと解釈する方が自然である。したがって、この「さす」は(イ)の意味と解すのが妥当である。
選択肢→・可能・謙譲・使役・尊敬・自発・僧都の君・主上・宮の御前・故殿・淑景舎
解答
1=②→使役・④は軍記物において受身を表す
2:ア=尊敬・イ=使役・ウ=故殿・エ=淑景舎
■公式3・4:き・けり
A 基本知識:覚えるべきポイント
1:「き」「けり」は共に意味上、過去・回想の助動詞と言われる。
2:二つの助動詞の違いは、「京に下りしとき」「昔男ありけり」の例文にうかがえるように、「き」が直接体験(経験過去)の表現であるのに対し、「けり」は間接体験(伝聞回想)を表現している。
3:「けり」にはほかに「今宵は十五夜なりけりとおぼしいでて」などのように、あることに初めて、あるいは改めて気がついた心の揺れを表す詠嘆(気付きの「けり」とも言われる)の意味がある。和歌の末尾にある「けり」は詠嘆である。また散文においても、会話・心内語末における「けり」には注意して文脈を読む必要がある。また「なり(断定)けり・べかりけり」の「けり」も詠嘆であるケースが非常に多い。
■→接続と活用:「き・けり」とも連用形接続。「き」はカ変・サ変につく場合、「こし(用例は「来し方」のみ)・せし」など未然形につくケースもある。「き」の活用は特殊型(せ・○・き・し・しか・○)なので覚える必要がある。「けり」の活用はラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)■→識別問題へのリンクはこちら:「し」の識別・「けれ」の識別・「せ」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:雨のいたく降りしかば、え参らずなりにき。
イ:「げにおもしろく詠みけり」と言ふ。
ウ:あひみてののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり
エ:昔ありし家はまれなり。
オ:今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
解答
ア・過去・已然:過去・終止
・雨がひどく降ったので、参上することができなかった。
イ・詠嘆・終止
・「なるほど趣深く詠んだものだなあ」と言う。
ウ・詠嘆・終止
・あなたにお会いしてから後の切ない気持ちに比べると、昔(あなたとお会いする前)は何も物思いをしていなかったようなものですよ。
エ・過去・連体
・昔あった家は希である。
オ・過去・終止
・今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた(そうだ)。
C・入試問題
■1:傍線部を「けり」の用法に注意して口語訳せよ。
たいだいしとおぼしたるなりけりと、われにもあらぬ心地して
■2:この文章ではある規準によって助動詞「き・けり」が使い分けられている。その基準によって空欄に「き・けり」を適当な活用形に直して入れよ。
宿河原といふ所にて、ぼろぼろ多く集まりて九品の念仏を申しけるに、外より来たるぼろぼろの、「もし、この御中に、いろをし房と申すぼろやおはします」と尋ねければ、その中より、「いろをし、ここに候ふ。かくのたまふは、誰そ」と答ふれば、「しら梵字と申す者なり。己が師、なにがしと申し(ア)人、東国にて、いろをしと申すぼろに殺され(イ)と承り(ウ)ば、その人に逢ひ奉りて、恨み申さばやと思ひて、尋ね申すなり」と言ふ。
解答
1:いいかげんだとお思いになっているのであるなあ
2:ア=し・イ=けり・ウ=しか
■公式5:つ・ぬ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「つ・ぬ」は、基本的に完了・強意・並列という三つの意味がある。
2:「一夜のうちに塵灰になりにき」の「に」は完了。「き・けり」などと結びつき「てき・にき・てけり・にけり」などと用いられるケースも多い。完了のニュアンスの違いとしては、「つ」が人為的意志的・「ぬ」が自然的無意志的と言われるが、それを覚えたり、とらわれわれたりする必要はないだろう。
3:「つ・ぬ」で大事なのは「髪もいみじく長くなりなむ」などのように「つべし・ぬべし・てむ・なむ・つらむ・ぬらむ」のように推量系統の助動詞と結びつくときは強意の意味で解釈するのが基本である。「風吹きなむ」であれば「風がきっと吹くだろう」と解釈する。「む・べし」が意志の場合でも、「このこと成じてん」なら「ぜひとも成し遂げたい」のようにその意思を強調する働きをする。
4:並列は「行きつ戻りつ」という現代に残る表現を思い出せばそれでよい。
5:完了・強意が高校文法の一般の覚え方であって、それでいいが、本来的には確述の助動詞とするのが正しいかもしれない。完了という言い方がよく考えると難しい。生徒が「先生が来た」と言う場合、先生が教室に到着した状態を表すと同時に、まだ到着していないのに、むこうからこちらに来つつある先生の状態も「~た」と表現される。また全くのついでだが、朝起きて窓を開けたら一面の銀世界であったとき、「あ、雪が降ってる」と言うが、それは今雪が降っているという状態も指すと同時に、すでに雪は止んでいる状態をも示す表現である。
■→接続と活用: 「つ・ぬ」とも連用形接続、活用は「つ」は下二段型(て・て・つ・つる・つれ・てよ)、「ぬ」はナ変型(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)■→識別問題へのリンクはこちら→「ぬ」の識別・「ね」の識別・「に」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:用ありて行きたりとも、そのこと果てなば、とく帰るべし。
イ:黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。
ウ:このことかのこと怠らず成じてむ。
エ:乾飯の上に涙おとして、ほとびにけり。
オ:かばかりになりては、飛び降るとも降りなむ。
解答
ア・完了・未然
・用があって行ったとしても、その用が終わったならすぐに帰るのがよい。
イ・完了・終止:強意・終止
・黒い雲が急に出てきた。きっと風が吹くだろう。
ウ・強意・未然
・このことやあのことを怠らずにきっとやり遂げよう。
エ・完了・連用
・乾飯の上に涙をおとして、(乾飯は)ふやけてしまった。
オ・強意・未然
・これくらい(の高さ)になっては、飛び降りたとしてもきっと降りられるだろう。
C・入試問題
■傍線12「ぬ」の文法上の意味は何か。
松はひとりになり(1)ぬべきにやと、遠き旅寝の胸にたたまり、人びとの別れ、芭蕉の名残、ひとかたなら(2)ぬわびしさも、つひに五年の春秋を過ぐして、再び芭蕉に涙をそそぐ。
解答:1=強意・2=打消
■公式6:たり・り
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「たり・り」は存続・完了の助動詞である。
2:存続は、存在「~テアル」と継続「~テイル」。この意味で、例えば「かきつばたいとおもしろく咲きたり」のように「美しく咲いている」などと意味が取れる場合は存続。そうではなく「小野道風の書ける和漢朗詠集」のような場合は完了の意味と取る。存続が基本と考え、その意味で解釈できない時に完了を考えればよい。
■→接続と活用:活用はともにラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)。「たり」の接続は連用形であるが、「り」の接続はサ変の未然形と四段の已然形(命令形とする考えも強い)である。これをさみしい(サ未四已)と覚える。「り」は識別問題ではKEYになる助動詞であり注意が必要である。■→識別問題へのリンクはこちら→「る・れ」の識別・「らむ」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:くらもちの皇子おはしたり。
イ:五月のつごもりに、雪いと白う降れり。
ウ:家を出でて世をそむけり。
エ:このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、
オ:雪のおもしろう降りたりし朝
解答
ア・完了・終止
・くらもちの皇子がいらっしゃった。
イ・存続・終止
・五月の下旬なのに、雪が白く降っている。
ウ・完了・終止
・家を出て遁世した(出家した)
エ・存続・連体
・この元の女は不愉快と思っている様子もなくて
オ・存続or完了・連用
・雪が趣深く降っていた朝
■公式7:む・むず
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:意味は、推量・意志・勧誘・仮定・婉曲・適当である。「べし」のスイカトメテという覚え方を真似て、スイカカエテと覚える人も多いと思うが、「カ」が可能と勧誘で異なるため混乱する人がいる。無理はあるが、スイエカテカ(水泳家庭科)とでも覚えるか。文章中に出て来る頻度としては推量・意志・婉曲が圧倒的に多い。よく言われる判別の形を次にあげるが、文脈で柔軟に解釈する力を持つことの方が重要かと思う。
2:特に意識したい識別の形として、婉曲の場合には「恋しからむをりをり」のように、「む」+体言の場合が意味の識別の目安になる。婉曲は「~ような」くらいの文字通り婉曲表現であるので、あえて訳さない場合も多い。仮定は、「犬を二人して打たむにははべりなむや」のように、「む」+は・に・には・体言などの形を取ることが多い。入試問題では仮定が狙われる可能性があるが、全体の文脈把握という点においては「二人で打ったとしたら」であっても、「二人で打ったような場合には」でも大きな妨げにはならない。
3:適当・勧誘の場合は、例えば「花を見てこそ帰り給はめ」のように、なむ(や)・てむ(や)・こそ‐めなどの形を取ることが多いが、これも文脈で柔軟に捉えたい。
4:「むず」は「むとす」の約であろうと言われている。「むず」は「む」よりも強く狭い用法、平安時代から会話の中で使われていたようだが、中世になって地の文にも頻繁に用いられるようになる。基本的には「む」と同じであると理解しておけばよい。
■→接続と活用:「む・むず」は未然形接続の助動詞。「む」の活用は四段型(○・○・む・む・め・○)であるが、覚えてしまった方がよい。
B・基本問題(意味・活用形・口語訳を確認)
ア:こよひは、ここにさぶらはむ。
イ:子といふものなくてありなむ。
ウ:仏性は白き桔梗にこそあらめ。
エ:月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。
オ:あはれ知れらむひとに見せばや
カ:思はむ子を法師になしたらむこそ心ぐるしけれ。
キ:忍びては参りたまひなむや
ク:二つの矢、師の前にて、一つをおろそかにせんと思はんや。
ケ:鳶のゐたらむは、何かは苦しかるべき。
コ:心あらむ友もがな
解答
ア・意志・終止
・今宵はここにお仕え申し上げよう。
イ・適当・終止
・子というものはないほうがよい。
ウ・推量・已然
・仏性は白い桔梗のようであるだろう。
エ・婉曲・連体
・月が出ているような夜は(月を)ごらんになってください。
オ・婉曲・連体
・情趣を知っているような人に見せたいものだ。
カ・婉曲・連体:仮定・連体
・かわいいと思うような子を法師にしているとすれば、それは痛々しいことだ。
キ・勧誘・終止
・こっそりと参内なさいませんか。
ク・意志・終止:推量・終止
・二つの矢を、師匠の前で、その一本をいい加減にしようと思うだろうか。
ケ・仮定・連体
・鳶がいたとしたら、何か不都合だろうか。いや・・・
コ・婉曲・連体
・情趣を解するような友がいたらなあ。
C・入試問題
■ 次の「む」と同じ意味のものを選択肢から選びなさい。
文を多くみれば、おのづからひとり知らるべき事なり。始めより一枚二枚の文にても、残らず見解(けんげ)せむとする事なりがたかるべし。功をつもればおのづからことわり分明なりと申されけるとなり。
選択肢
① 折にすれば、何かはあはれならざらむ
② いとやすきこと、たしかに守り侍らむ
③ 子といふものなくてありなむ
④ この獅子の立ちやう、いとめずらし。深きゆゑあらむ
解答:②
■公式8:らむ・けむ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「む」が未来推量であるのに対し、「らむ」は現在推量、「けむ」は過去推量の場合に用いられる。また「らむ・けむ」は現在・過去という違いはあるが、推量のほかにも、原因推量・伝聞婉曲という共通する二つの意味がある。
2:原因推量は、A「夕べは秋となに思ひけむ」(夕暮れは秋が一番良いとどうして思っていたのだろうか)のように理由を尋ねる疑問の副詞を伴い直接理由を問う場合、B「時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ」(いったい今をいつだと思って鹿の子まだらに雪が降っているのだろうか」のように直接理由を問う疑問詞でない場合、C「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」のように「どうして桜は散っているのだろうか」と疑問詞はなくても文脈上原因を問うていると読める場合も(微妙な点はあるが)原因推量とする。とりあえずは、そこに「なぜ?」という気持ちが働いているかを考えたい。
3:もう一つ大事なのか、伝聞・婉曲。「行平の中納言の、関吹き越ゆると言ひけむ浦波」といった伝聞、「これをかなしと思ふらむは、親なればぞかしとあはれなり」のような婉曲の用法もある。特に伝聞の用法は大事にしたい。
■→接続と活用:接続は「らむ」は終止形(ラ変には連体形)、「けむ」は連用形。活用は両者とも四段型。(○・○・らむ・らむ・らめ・○)(○・○・けむ・けむ・けめ・○)で「む」と同じである。■→識別問題へのリンクはこちら→「らむ」識別
B・基本問題(意味・活用形・口語訳を確認)
ア:吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
イ:鸚鵡いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。
ウ:恨みを負ふ積もりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、
エ:吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしずくにならましものを
オ:風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
カ:ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
解答
ア・現在の原因推量・終止
・吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほどそれで山風を嵐というのだろう
イ・現在婉曲・連体:現在伝聞・終止
・鸚鵡はたいそう趣深い。人の言うようなことを真似するということだよ。
ウ・過去原因推量・連体
・恨みを受けることが積もりつもったためであろうか、たいそう病気がちになってゆき
エ・過去伝聞・連体
・私を待ってあなたが濡れたとかいう山のしずくになれればいいのに
オ・現在推量・連体
・風が吹くといつも沖の白波が立つ。そのたつという名の竜田山をこの夜半にあなたがたったひとりで越えているのでしょうか
カ・現在原因推量・連体
・光がのどかなこの春の日にどうして落ち着いた心もなく桜は散っているのだろうか
C・入試問題
■ 次の傍線部の助動詞の意味を答えなさい。
我ながら心弱くおぼえつつ、逢坂の関と聞けば、「宮も藁屋も果てしなく」と詠め過しけむ蝉丸のすみかも、跡だにもなく
解答:過去伝聞
■公式9:べし
A・基本知識:覚えるべきポイント
「べし」の意味は、推量・意志・可能・当然・命令・適当・予定である。「スイカトメテヨ」と覚えよという昔からの語呂合わせが有効。「べし」の基本的意味は「当然」だが、微妙なニュアンスの違いは文章全体から考えて識別する必要がある。「返す返す心は素直なるべきものなり」の意味は当然、「家の作りやうは夏を旨とすべし」であれば適当と考えられる。ただし、Bの例文の解釈でも、例えば当然・適当・命令などは明確な判別が困難なことも多い。予定は「舟に乗るべき所へわたる」(乗ることになっている所)のようなケースである。
■→接続と活用:接続は終止形(ラ変には連体形)。活用は形容詞型。
B 基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:龍に乗らずは、渡るべからず。
イ:この人々の深きこころざしは、この海にも劣らざるべし。
ウ:必ず来べき人のもとに車をやりて待つに、
エ:金(こがね)は山に捨て、玉は淵に投ぐべし。利に惑ふは、すぐれて愚かなる人なり。
オ:潮満ちぬ。風も吹きぬべし。
カ:必ず救い参らすべし。
キ:御疑ひあるべからず。
ク:羽なければ、空をも飛ぶべからず
ケ:月の影はおなじことなるべければ、人の心もおなじことにやあらん。
コ:作文の(船)にぞ乗るべかりける。
解答
ア・可能・未然
・龍の乗らなければ、渡ることはできない。
イ・推量・終止
・この人々の深きこころざしは、この海にも劣らないだろう。
ウ・当然・連体
・必ず来るはずの人のところへ車をやって待っていると
エ・当然(適当・命令)・終止
・金は山に捨て、玉は淵になげるべきだ。利益に惑うのはひどく愚かな人である。
オ・推量・終止
・潮が満ちた。風もきっと吹くだろう。
カ・意志・終止
・私が必ずお救い申し上げよう。
キ・命令・未然
・お疑いになってはいけない。
ク・可能・未然
・羽がないので空を飛ぶことができない。
ケ・当然・已然
・(中国でも日本でも)月の光は同じはずなので、人の心も同じことなのでしょう。
コ・適当・連用
・漢詩文の船に乗ればよかったなあ。
C・入試問題
■1:次の「べき」と同じ意味の「べし」を含む文を選択肢からから選べ。いづれにも、心ざし浅く、稽古工夫おろそかなる不堪無智の人の、けだかう幽遠のことわり離れたる境、おぼろげにも知るべきにあらずとなむ。
選択肢
① 舟に乗るべき所へわたる
② 物ひと言いひおくべきことあり
③ 家の作りやうは夏をむねとすべし
④ 今の世の人のよみぬべきことがらとは見えず
⑤ をとこわづらひて心地死ぬべくおぼえけり
■2:次の傍線部と同じ用法のものを一つ選べ。
かくてしもやはありはつべき。
選択肢
①ほめられなばこそうれしかるべきに
②人のもとへ言ふべきことありて文やる
③拙なき文なれば人の見るべきにあらず
④草茂りて分け入りぬべきやうなし
解答:1=④:可能・2=③:適当
■公式10:じ・まじ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「じ」は「む」の打消である。ただ、基本的には推量と意志の打消、すなわち打消推量・打消意志と理解すればよいだろう。「一生の恥、これに過ぐるはあらじ」なら打消推量(ないだろう)、「吉野山やがて出でじと思ふ身を花散りなばと人や待つらむ」であれば打消意志(~まい)。この二つの意味を押さえておく。「よも~じ:まさか~ないだろう・まい」のような呼応関係も覚えたい。
2:「まじ」は「べし」の打消である。「べし」のスイカトメテを順に打ち消して行けば「まじ」の意味になる。列挙すると、打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当となる。「冬枯れのけしきこそ秋にはをさをさおとるまじけれ」であれば打消推量、「わが身は女なりとも、敵の手にはかかるまじ」は打消意志、「妻というものこそ、男の持つまじきものなれ」は不適当(打消当然)と識別できる。
■→接続と活用:「じ」の接続は未然形、活用は無変化(○・○・じ・じ・じ・○)。「まじ」の接続は終止形(ラ変には連体形)、活用は形容詞型。
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:京にはあらじ。東の方に住むべき国に求めにとて行きけり。
イ:雀などのやうに常にある鳥ならば、さもおぼゆまじ
ウ:帰り入らせ給はむことはあるまじくおぼして
エ:よもあらじ。
オ:こよひはえ参るまじ
カ:我が身は女なりとも、敵の手にはかかるまじ。
キ:人に漏らせたまふまじ
ク:妻といふものこそ、男の持つまじきものなれ。
解答
ア・打意・終止
・京にはいまい。東の方に住むのによい国を探しに行こうと思って出かけた。
イ・打推・終止
・雀などのやうに常にある鳥ならば、そうは思われないだろう。
ウ・打当・連用
・お帰りになるようなことはあってはならない(あるべきではない)こととお思いになられて
エ・打推・終止
・まさかないだろう。
オ・不可能・終止
・今夜は参上することができない。
カ・打意・終止
・私は女であっても、敵の手にはかかるまい。
キ・禁止・終止
・人にお漏らしになってはならない。
ク・不適当(打当)・連体
・妻というものは、男が持たないのがよいものである。
■公式11:まし
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「まし」は反実仮想・ためらいの意志、希望がある。また、中世以降は単に推量の意味で用いられるようにもなった。
2:反実仮想は事実と反することを仮に想定するということである。英文法の仮定法をイメージするとわかりやすい。「もし~だとしたら~だろうに」と意味を取る。解釈する場合は「~だろうに」の「に」に実現不可能な気持ちがこもるので、そこまで正確に解釈したい。また、提示されている「反実」に対して「事実」は何であるかも考えたい。
3:反実仮想は、仮想の条件を伴う形で次の四つの呼応関係を押さえたい。A:未然形+ば・・まし・B:せば・・まし・C:ませば・・まし・D:ましかば・・まし。「鏡に色かたちあらましかばうつらざらまし」「世の中に絶えて桜のなかりせばば春の心はのどけからまし」などのように用いられる。
4:「まし」には他に、「しやせまし。せずやあらまし」(しようかしら、やめようかしら)のように、ためらいの意志・実現不可能な願望の意味があり、この場合には疑問詞や係り結びなど疑問表現とともに用いられる。
■→接続と活用:未然形接続の助動詞。活用は特殊型(ましか・○・まし・まし・ましか・○)なので覚える必要がある。
B・基本問題:意味・口語訳を確認!
ア:鏡に色かたちあらましかばうつらざらまし
イ:世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
ウ:わが背子と二人見ませばいくばくかこの降る雪のうれしからまし
エ:これになにを書かまし
解答
ア~ウ:反実仮想・エ:ためらいの意志
ア:鏡に色や形があるとしたら、映らないだろうに
イ:世の名全く桜がなかったとしたら、春の心はどんなにのどかだっただろうに
ウ:夫と一緒に二人で見ることができたとしたら、この降る雪はどんなにかうれしかったことであろうに。
エ:これに何を書こうかしら。
C・入試問題
■ 次の文を現代語訳せよ。
(和歌をほめられた藤原公任がこう述懐する)さてかばかりの詩(漢詩)を作りたらましかば、名のあがらむこともまさりなまし。くちをしかりけるわざかな
解答
これほどの漢詩を作ったなら名声のあがることも今以上であっただろうに
■公式12:らし・めり・なり
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「らし・めり・なり」は推定の助動詞である。「なり」には他に伝聞の意味もある。推定とは根拠のある推量のことを言う。
2:「らし」は「~らしい」と意味を取ればよい。推定の根拠が示されているケースが多く「春過ぎて夏来にけらし(けるらし)白妙の衣ほすてふ天の香具山」であれば、「白妙の衣ほすてふ天の香具山」を根拠として「夏が到来したらしい」と推定する。平安以降殆どは和歌の中で用いられる。
3:「めり」は眼前にある事実、はっきりした事実を「~ようだ」とやわらかく推定・婉曲的に表現する場合に用いることが基本である。語源は「見・あり」だと言われ、視覚的な推定・推量に多く用いられる。推定・婉曲の意味の区別よりも「~ようだ」というニュアンスを大事にすればいい。
4:推定の「なり」の語源は「音(ね)・あり」だと言われ、聴覚的な推定に多く用いられる。断定や伝聞と形の上で区別できなくても、音に関する記述があれば推定だと判断できる。
■→接続と活用:三つとも終止形接続(ラ変には連体形)。活用は「らし」は無変化(○・○・らし・らし・らし・○)「めり・なり」はラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)である。■→識別問題へのリンク:「なり」の識別
B・基本問題:口語訳を確認!
ア:立田川色紅になりにけり山の紅葉ぞ今は散るらし
イ:簾少しあげて花奉るめり。
ウ:妻戸を、やはら、かい放つ音すなり
解答
ア:立田川の色が紅に染まったことだ。山の紅葉が散っているらしい。
イ:簾を少しあげて、花をお供えしているようだ。
ウ:妻戸をそっと開ける音がするようだ。
■公式13・14:なり
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「なり」には断定と伝聞推定の二種類の「なり」がある。
2:体言もしくは連体形に接続していれば断定の助動詞。断定は「~である」と断定することだが、他に存在・所在の意味があり、この場合には多く場所を表すことばの下について「~にある」と意味を取る。
3:終止形(ラ変には連体形)に接続していれば伝聞・推定の助動詞である。人づてに聞くのが伝聞、推定は「音あり」が語源だと言われ、音に関する推定が中心である。撥音便に続いて「なり」があれば伝聞か推定である。
4:ちなみに断定の「なり」の語源は「に・あり」であり、「に」の識別問題では「に」の下に「あり」の存在を確認し、その部分が「である」と解釈できるか否かを判断する。「なり」の識別問題では、二つの「なり」は基本的には接続で区別する。「男もす(A)なる日記といふものを、女もしてみむとてする(B)なり」では、(A)はサ変の終止形に接続しているため伝聞(推定とは文脈判断)、(B)は同じサ変の連体形に接続しているため断定の助動詞と識別できる。終止形・連体形が同形の場合は文脈判断。詳細は次の識別問題リンクへ。
■→接続と活用:上にも書いたが、断定は体言・連体形に接続、伝聞推定は終止形(ラ変には連体形)に接続。活用は断定が形容動詞型(なら・なり‐に・なり・なる・なれ・なれ)、伝聞推定はラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)である。■→識別問題へのリンク→「なり」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人にあはぬなりけり
イ:世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、
ウ:おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり。
エ:秋の野に人待つ虫の声すなり。
解答
ア・存在・連体:断定・連用
・駿河にある宇津の山辺のうつではないが、うつつ(現実)でも夢でもあなたにあえないことです
イ・伝聞・連体
・世の中に物語というものがあるそうなのを、どうにかして見たいと思い続けて、
ウ・断定・連用:断定・終止
・私はこの国の人ではない。月の都のひとである。
エ・推定・終止
・秋の野に人を待つという名の松虫の声がするようだ。
C・入試問題
■ 次の文中の傍線部A~Dは、それぞれ次のどれに該当するか。
その十三日の夜、月いみじくくまなくあかきに、みな人も寝たる夜中ばかりに縁に出でゐて、姉(A)なる人、空をつくづくとながめて「ただ今ゆくへなく飛びうせなばいかが思ふべき」と問ふに、なまおそろしと思へるけしきを見て異事に言ひなして笑ひなどして聞けば、かたはら(B)なる所にさきおふ車とまりて「をぎの葉、をぎの葉」と呼ばすれど答へざ(C)なり。呼びわづらひて、笛をいとをかしく吹きすまして過ぎぬ(D)なり。
選択肢
① 動詞
② 形容動詞の語尾
③ 断定の助動詞
④ 存在の助動詞
⑤ 伝聞の助動詞
⑥ 推定の助動詞
解答
A=③・B=②・C=⑥・D=⑥
■公式15:格助詞 の・が
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:①格助詞の「の」の用法として、主格・連体修飾格・同格・体言の代用・比喩がある。
2:このうち主格、例えば「月の澄む夜」と連体修飾格、例えば「僧の衣」は、まず誰でも取り損ねることはない。他の三つを押さえることが大切。
3:同格は用法は最も注意が必要。入試問題にも頻繁に出題される。
A:基本的な形は【・・名詞+の+・・連体形・・】
B:連体形の下には上で出てきた名詞を補うことができる。
この二点をきちんと押えたい。例えば「白き鳥の脚赤きが魚を食ふ」ならば、「足赤き」の下に「鳥」という名詞を補える。「白き鳥」と「足赤き鳥」は「魚を食ふ」という述部に対して同格であるため、二つの間に挟まれた「の」を同格の「の」と言い、述部に対して同格であるため二つを並立させ「で」と訳す。
4:体言の代用の「の」は、その名のごとく名詞の代わりをする。現代語でも「これ誰の鉛筆?」と問われたとき「僕のだよ」と答える「の」である。この「の」が「鉛筆」という体言の代用をしていることは明らかだ。現代語にもある用法なのでこれも多分大丈夫。ただ、体言の代用は別に準体法とも言い、連体形自体が体言の代用をする場合、例えば「中納言、言ひたるは」であれば「中納言が言ったこと(の)は」と、名詞や体言の代用の「の」を補って訳すことは解釈の問題では大切だ。
5:比喩の「の」は「~ような」と訳す。散文においては「例の集まりぬ:いつものように」「玉の男皇子:玉のような」など限定された用法だが、和歌で、例えば「瀬をはやみ岩のせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ:滝川のように、今お別れしても」のように序詞の切れ目として使われる用法には注意が必要である。
6:「が」は、比喩以外の「の」と同じ用法と考えておけば、概ねよい。ただ、例えば「いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり」の「が」を接続助詞と考えがちだが、逆接の接続助詞の用法は中古末以降からのものであり、これは同格。中古の文章における「が」は基本的に格助詞である。
B・基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:さては、扇のにはあらで、海月のななり。
イ:手のわろき人の、はばからず文書き散らすは、よし。
ウ:日の入り際のいとすごく霧わたりたるに、
エ:あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
解答
ア・体言の代用
・それでは扇の(骨)ではなくて、海月の(骨)であるようだ。
イ・両方とも主格
・筆跡がよくない人が遠慮なく手紙を書き散らすのはよい。
ウ・同格
・日の入り際で、たいそう物寂しく霧が一面に立ちこめているときに
エ・連体修飾格:比喩
・山鳥の尾の垂れた尾のように長い長い秋の夜を私は一人寂しく寝るのだろうか
C・入試問題
■1:次の「の」とは異なる用法の例を選択肢から一つ選べ。
みめのうつくしき女房の、もの思ひたるが、ものをも言はでゐたるに
選択肢
① 女のこれはしもと難つくまじきは、難くもあるかな
② 行きて見ぬ境の外のことをも知るは、ただこの道ならし
③ 早くよりわらは友だちにはべりける人の年ごろ経て行きあひたる、ほのかにて
④ 白き鳥の嘴と脚と赤き、川のほとりにあそびけり
⑤ 里にはべりしをり、花のいとおもしろきを式部卿にたてまつるとて
⑥ 東宮の御息所の箱合せのころ、紅梅のつぼみたるを入れて
■2:次の文章を読んで後の問に答えよ。
ふもとに宿りたるに、(A)月もなく、暗き夜の、やみにまどふやうなるに、遊女三人、いづくよりともなくいできたり。五十ばかりなる一人、二十ばかりなる、十四五なるとあり。庵の前に、からかさをささせてすゑたり。をのこども、火をともして見れば、昔、こはたといひけむ(B)が孫といふ。(共通一次)
問一:Aの現代語訳としてどれが最も適当か。一つを選べ。
① 月の出ない暗い晩だったので、闇の中で混乱してしまいそうな気持でいたところが、
② 空には月もなく暗い晩で、何が何だかわからないほどの真暗闇であるところへ
③ 空には月もなくて、暗い夜の闇の中からあたかも迷い出てきたかのように
④ 空に月もない暗い晩であって、道に迷ってしまいそうであったが、
問二:Bの文法的説明として最も適当と思われるものを選びなさい。
① 連体格の格助詞
② 主格の格助詞
③ 接続助詞
解答
1=②・2:問一=②・問二=①
■公式16:格助詞 に
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:格助詞の「に」については基本的に現代語と同じ用法であるので細かくその用法を覚えることに労力を割かなくてもよい。ただ、「に」の識別問題では、格助詞の「に」についてイメージを持っていることも大事。例文を示すので、どの用法に当たるか、考えてみよう。
用法・選択肢→ア 動作の目的・イ 受身の対象・ウ 時・エ 添加・オ 原因・カ 場所・キ 対象・ク 使役の対象・ケ 帰着点・コ 比較の対象・サ 変化の結果
① 十二日、山崎にとまれり
② 春の日に雪仏を作り
③ 行き行きて駿河の国に至りぬ
④ あの御方に奉る
⑤ 女の鬼になりたるを
⑥ すむべき国求めにとて行きけり
⑦ 近き火などに逃ぐる人は
⑧ 国の守にからめられにけり
⑨ 人に書かするはうるさし
⑩ 昼の明るさにも過ぎて
⑪ いと暗う細きに、蔦かえでは茂り
2:識別問題を考える上では次の二つのことも押さえておきたい。
一つは格助詞の「に」の基本的な役割はいま示したような用法で、「に」を含んだ文節がその下にある述部(用言)にかかっていくことである。従って格助詞の「に」は文脈上、その「に」の位置で意味を切ることができない。そこで切ると文意が成立しないことになる。
もう一つは接続。格助詞「に」は体言・連体形に接続、接続助詞「に」は連体形にのみ接続する。連体形に「に」が接続する場合には、識別が困難なことも多い。連体形の後に名詞が補えれば格助詞、補えなければ接続助詞という言い方もされるがそれで片付かないことも多い。詳しくは識別問題のページを参照。
■→識別問題へのリンク→「に」の識別
B・基本問題:A・1のどの用法か確認・口語訳を確認
ア:去年に似るべくもあらず
イ:白馬(あおうま)見にとて、里人は車清げにしたてて見に行く。
ウ:日もいとながきにつれづれなれば
エ:ある人に誘われ奉りて、
オ:よろづのことは月みるにこそ慰むものなれ。
解答
ア:コ・去年に似るはずもない
イ:ア・白馬の節会を見(るため)に行くと言って、里人は車を美しくしたてて見に行く。
ウ:エ・日もたいそう長い上に退屈なので
エ:イ・ある人に誘われ申し上げて
オ:オ・すべてのことは月を見ることで慰められるものである
■公式17:格助詞 より
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:格助詞「より」が現代語と違うのは手段・即時の二つの用法であり、それだけを意識すればよい。
2:★手段の「より」は、例えば「徒歩よりまうでけり」であれば「徒歩で参詣した」と解釈する用法である。「徒歩より」というフレーズで覚えてしまおう。「徒歩」は「かち」と読むことも一緒に覚えたい。「馬より」とあれば「馬で」と解釈する。
3:★即時の「より」は文字通り「すぐに・~やいなや」である。「名を聞くより、やがて面影は・・」は「名を聞くとすぐに」という意味。これもこの例文で覚えてしまいたい。
B・基本問題:用法を選択・口語訳を確認!
選択肢(上記以外の用法も含む)→ア 動作の基点・イ 経過する場所・ウ 比較の基準・エ 手段・方法・オ 即時
ア:命婦、かしこにまかで着きて、門ひき入るるより、けはひあはれなり
イ:関白殿、黒戸より出でさせ給ふ
ウ:おなじほど、それより下﨟の更衣たちはまして、安からず
エ:他夫の馬より行くに己夫し徒歩より行けば
オ:物の隠れよりしばし見ゐたるに
解答
ア:★即時
・命婦がそこに着いて、車を門内に引き入れるとすぐに、邸内の様子はあわれに感じられた
イ:経過する場所
・関白殿が黒戸から出なさる
ウ:比較の基準
・同じ身分、それより身分が低い更衣たちはまして心穏やかではない
エ:★手段
・他人の夫は馬で行くのに、私の夫は徒歩で行くので
オ:動作の基点
・物の隠れからしばらく見ていると
C 入試問題
■ 次の「より」と同じ用法のものをイ~ホから一つ選びなさい。
三井寺へ行かむとするには、いかでか歩より行かむずるやうにては立ちたるぞ。乗物のなきか。
選択肢
① 人より賢し
② 明日より始めん
③ 人を手より打つ
④ 右よりにすすむ
⑤ 風より他に問ふ人もなし
解答=③
■公式18:接続助詞 ば
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:接続助詞の「ば」は、未然形について仮定条件を表し、已然形について確定条件を表す。「もし海を行くなら」としたいのであれば「海行かば」であり、「海を行くと」としたいのであれば「海行けば」となる。仮定条件は解釈の上では明確に意識すべきだろう。本来、未然形は「未だ然らざる形」であり、打消、推量、仮定などのニュアンスを形成する活用形であり、已然形は「すでに然る形」であり、未然形に対して確定的なニュアンスを持つ活用形である。未然形にあった仮定が已然形の形で表現されるようになり、現在では仮定形という活用形の名称になっている。
2:確定条件については三つの用法があり、たまたまそれが起こる偶然条件「~すると・~したところ」、原因理由を表し「~ので」と解釈される用法、「~するといつも・必ず」というニュアンスを持つ恒時・恒常条件という三つの訳を文脈によって見定める。「命長ければ恥多し」であれば恒時条件であろう。普通に読んで読める部分にこだわる必要はないが、心理説明や和歌に歌われた心理の理由に相当する部分が、その前や別の箇所に原因理由を表す「ば」を伴って書かれているケースも多く、真理を読む場合にも入試問題でも、少し意識していいかと思う。
B・基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:年寄るまで石清水を拝まざりければ、心憂く覚えて
イ:それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
ウ:瓜食めば、子ども思ほゆ
エ:悪人の真似とて、人を殺さば、悪人なり。
解答
ア:確定・原因理由
・年寄りになるまで石清水八幡宮を拝みに行ったことがなかったので、情けなく(不本意)思って
イ:確定・偶然条件
・それを見ると三寸ほどの人が、たいそうかわいらしく座っていた。
ウ:確定・恒時条件
・瓜を食べると必ず子どものことが思われる
エ:仮定条件
・悪人の真似といって、人を殺すなら、それは悪人である。
C・入試問題
■ 次の「ば」と異なる用法のものを一つ選べ。
家あるじの、「木にこれ結ひつけて持てまゐれ」と言はせたまひしかば、あるやうこそはとて、持てまゐりて候ひしを
選択肢
1:梅の木の枯れたりしか(A)ば、求めさせたまひしに、
2:「きむぢ求めよ」とのたまひしか(B)ば、一京まかちかるきしかども3:勅なれ(C)ばいともかしこしうぐひすの宿はと問は(D)ばいかが答へん
解答=D
■公式19:接続助詞 が・に・を
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:接続助詞「が・に・を」は共通する三つの用法がある。逆接の確定条件「~のに」・順接の確定条件「~ので」・単純接続「~と」、過去形に繋がる場合は「~ところ」である。文脈に従って三つの意味を自在に判断したい。文法的な名称を覚える労は回避し、「のに・ので・と」という三つの解釈があることを頭に焼き付けたい。
2:ただし、「が」については中古までは格助詞の用法のみで、接続助詞としての用法はそれ以降である。
3:「に」の識別問題にかかわって次の二点を明確に押さえておきたい。
一つは接続助詞の役割は、SV+に+SVという形の中で、上の内容と下の内容を「のに・ので・と」という接続語でつなぐということである。
また格助詞の「に」との識別では連体形接続であることも大事な要素となる。■→識別問題リンク→「に」の識別
B・基本問題:用法を選択・口語訳を確認!
ア:抜かんとするに大方抜かれず。
イ:あやしがりて見るに筒の中光たり。
ウ:あすは物忌みなるを、門(かど)強くささせよ。
エ:八重桜は奈良の都にのみありけるを、このごろは世に多く侍るなる。
オ:涙のこぼるるに、目も見えず、物も言はれず。
選択肢
ア:順接確定条件:ので
イ:逆接確定条件:のに
ウ:単純接続:と・ところ
解答
ア:イ・抜こうとするけれども、全く抜くことができない。
イ:ウ・不思議に思って見ると、筒の中が光っている。
ウ:ア・明日は物忌みなので、門をしっかり戸締まりさせよ。
エ:イ・八重桜は奈良の都にだけあったのに、このごろは世間に多くなっているようです。
オ:ア・涙がこぼれるので、目も見えず、物を言うこともできない。
C・入試問題
■ 次の中でほかと種類の異なるものを一つ選べ。(センター試験)
ア:桐院の左大将出だされたりける絵に
イ:世の中は皆夢の中のうつつとこそ思ひ捨つることなるに、こはそも何事のあだし心ぞや
ウ:笠宿りに立ち寄るべき心地
エ:御車に召されて
オ:年久しく住み荒らしたる宿のものさびしげなるに、撥音気高く、青海波をぞ調べたる
解答=イ
■公式20:接続助詞 で
A・基本知識・覚えるべきポイント
■接続助詞「で」は打消の接続助詞。項目を立てたが「~ないで」と訳されることを承知すれば他はまったく問題はない。「鬼あるところとも知らで」であれば「鬼のいるところとも知らないで」と解釈する。
B・基本問題:口語訳を確認!
・なめしとおぼさで、らうたくしたまへ。
解答=無礼だとお思いにならないで、かわいいとお思いなされ。
■公式21:接続助詞 つつ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:接続助詞「つつ」は動作の並行・動作の反復・動作の継続・詠嘆の用法がある。
2:動作の並行「~しながら」は現在でも普通に使われているので、意識せずともよい。
3:古典で最も出会う頻度が高いのが、動作の反復。「野山にまじりて竹を取りつつ」であれば、竹を取ることが繰り返して行われることを表し、これを「~ては」と訳す。また反復より用例は少ないが、動作の継続も大事。「女はこの男をと思ひつつ」であれば「思い続けて」という解釈をする。
4:和歌の末尾にある「つつ」は「つつ止め」と呼ばれ詠嘆を表す。時間的な継続のニュアンスも含んでの詠嘆が多いか。
B・基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:君がため春の野に出でて若菜摘む我が衣手に雪は降りつつ
イ:人まにはみそかに参りつつ、額をつきし薬師仏の立ち給へるを、
ウ:天ざかる鄙に五年住まひつつ都の手振り忘らえにけり
エ:狩りはねんごろにもせで、酒を飲みつつ、やまとうたにかかれりけり。
解答
ア:詠嘆・あなたのために春の野に出て若菜を摘む私の衣の袖に雪が降りしきることよ
イ:反復
・人のいないときにお参りをしては、額をついた薬師仏が立ちなさってているのを
ウ:継続
・田舎に五年も住み続けて都のみやびな風習をすっかり忘れてしまったことですよ
エ:並行
・狩りは熱心にもしないで、酒を飲みながら和歌を作ることに熱中していた
■公式22:接続助詞 ながら
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:接続助詞「ながら」には、動作の並行・逆接・~のまま・全部という意を表す用法がある。
2:動作の並行は「AしながらBする」のように現代でも使われているので問題はない。
3:古典ではそれ以外に★逆接の用法がある。例えば「身はいやしながら母なむ宮なりける」は「身分はひくいけれども、母は内親王であった」と解釈する。現代でも「狭いながらも楽しいわが家」などのように「ながらも」という語を思い浮かべれば理解しやすい。
4:また、「ながら」が名詞や副詞につく場合、★「~のままで」★「~全部」の意を表し、「旅の御姿ながらおはしたり」なら「旅のお姿のままいらっしゃった」。「さながら捨つべきなり」なら「そっくりそのまま・全部捨てるべきである」、「六つながら賜びにけり」であれば「六つ全部お与えになった」という意味になる。大事な二つの用法と思う。出てくる頻度は少ない。ここに挙げられた例文を覚えてしまおう。
B・基本問題:用法・口語訳を確認
ア:すべてをりにつけつつ、一とせながらをかし。
イ:なほ昔よかりし時の心ながら、世の常のことも知らず
ウ:「やがて」と申しながら、直垂のなくてとかくせしほどに
エ:からうじて(僧を)まちつけて、喜びながら加持せさするに、
解答
ア:全部
・すべて季節に応じて一年すべてに趣がある。
イ:~のまま
・やはり昔のよかった時代の気持ちのままで、世間のことも知らない。
ウ:逆接
・「すぐに」と申したのに、直垂がなかったので、そうこうしているうちに
エ:並行
・やっとのことで僧を待ち迎えて喜びながら加持をさせると
C・入試問題
■「ながら」に注意して口語訳しなさい。
国の守、眼賢しくして、この主は不実のもの、この男は(1)正直のものと見ながら、なほ不審なりければ、かの妻を召して、別の所にして事の仔細を尋ぬるに、夫が申状にすこしもたがはず。国の守いはく、「・・これは六つあれば別の人のにこそ」とて、(2)六つながら夫妻にたびけり。
解答
(1)正直なものと見えるが
(2)六つ全部を夫妻にお与えになった
■公式23:「もの」のつく接続助詞
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「もの」のつく接続助詞とは「ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」のような助詞であり、これらは基本的に中古では逆接と覚えておく。「ものの・ものを」は現代の感覚からも分かりやすいが、「ものから・ものゆゑ」に逆接の使われ方があるのに注意が必要である。
2:ただ、「ものから・ものゆゑ」には「~ので」と訳す順接の用法が中世にかけて加わって来るので注意したい。「ものゆゑ」は打消しを含む「ぬ・ざらむ・なき」につき「こと行かぬものゆゑ」「おぼされざらむものゆゑ」などと用いられることが多い。
3:「ものを」が文末に使われる場合は、詠嘆を表す。例えば「梓弓引けど引かねど昔より心は君に寄りにしものを」などのような用法である。ただ、「ものを」を逆接で「~のに」と解釈できれば、そこに詠嘆が加わるかどうかは自然と判断される。また「を」を逆接の接続助詞としても解釈自体を損ねないだろう。
B・基本問題:用法を選択・口語訳を確認
ア:白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消なましものを
イ:いつはりと思ふものから今さらに誰がまことをか我は頼まむ
ウ:事ゆかぬものゆゑ、大納言をそしり合ひたり
選択肢
ア=逆接・イ=順接・ウ=詠嘆
解答
ア:詠嘆
・あれは白玉ですか、何ですかとあの女が言ったとき「露です」と答えて消えて死んでしまえばよかったのになあ
イ:逆接
・偽りだと思うけれども、今さら誰の真心を頼りにできようか(あなたを頼みにするほかないのです)
ウ:順接:ので
・納得がいかないので、大納言を非難し合った。
C・入試問題
■解釈として最も適当なものを選べ。
こはいかなる処ぞとあたりを見回せば、ここは大なる寺の門前なり。いぶかしと思ふものから、門の中に入りて見れば、こは大きなる古刹にして、・・
選択肢
1:奥行きが深いと思いながら
2:恐ろしさを感じはするものの
3:どういうことかとまどいながらも
4:とてもこころをひかれることがあるので
5:理屈に合わないと思うけれども
解答=3
■公式24:副助詞 だに・すら・さへ
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:ここでは二つの覚えたい大切な事項がある。一つは「だに」に最小限の希望と類推という二つの意味があること。最小限の希望は「せめて~だけでも」と訳し、類推は「~さえ」と訳す。類推とは程度の軽いものを挙げて重いものを推測させること。例えば「この問題はA君でさえできる」といってみたとき「ましてB君ならなおさらできる」という内容を類推するのだ。「AでさえCなのだから、ましてBはなおさらCだ」という漢文の抑揚形と同じ理屈である。
2:もう一つは「だに・すら・さへ」が混同しやすいということ。「だに」と「すら」に共通する意味は類推「~さえ」である。先ほど言った漢文の抑揚形では、この「すら」が用いられる。ところが、「さへ」は「Aの上にBまでも」という添加を表しており、現代語の「さえ」には相当しない。ややこしいが、だから「さへ」は「さえ」と解釈しない。「玉の男皇子さへ生まれ給ひぬ」なら「(二人が素晴らしい愛で結ばれた上に)玉のような男皇子までもが生まれなさった」ということである。
B・基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:蛍ばかりの光だになし。
イ:散りぬとも香をだに残せ梅の花恋しき時の思ひ出にせむ
ウ:玉の男皇子さへ生まれたまひぬ。
エ:聖などすら前の世のこと夢に見るは、いとかたかなるを、
解答
ア:類推:さえ
・蛍ほどの光さえない。
イ:最小限の希望:せめて~だけでも
・散ったとしてもせめて香りだけでも残してくれ、梅の花よ。恋しく思うときの思い出にしよう。
ウ:添加:までも
・玉のような男皇子までもが生まれなさった。
エ:類推:さえ
・聖などでさえ前世のことを夢に見るのは難しいというのに
C・入試問題
■1:次の文章の「だに」について設問に答えよ。
跡とふわざも絶えぬれば、いづれの人と名をだに知らず、年々の春の草のみぞ、心あらん人はあはれと見るべきを、果ては、嵐に咽びし松も千年を待たで薪に摧かれ、古き墳は犂かれて田となりぬ。その形だになくなりぬるぞ悲しき。
① 次の説明文を選択肢の語で補充しなさい。
説明文
「だに」は一般に(1)や(2)を表す(3)であると説かれている。本文中の「だに」は共に(1)の意味で用いられており、現代語訳としては「サエモ」をあてるのが適当であろう。ところで「だに」と同じ(3)「さへ」は現代語「さえ」と違い、「マデモ(ガ)」と訳すべき語である。「さへ」の意味はあくまでも(4)であって、「だに」と区別すべきものである。
選択肢
① 婉曲・② 添加・③ 強意・④ 類推・⑤ 逆接・⑥ 反実仮想・⑦ 最小限の希望・⑧ 副詞・⑨ 接続詞・⑩ 副助詞・⑪ 接続助詞・⑫ 間投助詞
②:本文中の「だに」と同じ意味で使われているものには1を、違った意味で使われているものには2を、それぞれ答えなさい。
A 言繁み君は来まさずほととぎす汝だに来鳴け朝戸開かむ
B 国遠み直にあはず夢にだに我に見えこそあはむ日までに
C 深山には松の雪だに消えなくに都は野辺の若菜つみけり
D 散りぬとも香をだに残せ梅の花恋しきときの思ひ出にせむ
■2:解釈で適当なものを選べ。
ここらの子どものたはぶれに、蛙を生きながら土に埋めて、うたうていはく「ひき殿のお死になつた。おんばく持つて弔ひに、弔ひに、弔ひに」と口々にはやして、おほばこの葉をかの埋めたる上に打ちかぶせて帰りぬ。しかるに『本草綱目』車前草の異名を蝦蟇衣といふ。この国の俗、がいろつ葉よよぶ。おのづから和漢こころを同じくすといふべし。昔は、かばかりのざれごとさへいはれあるにや。
選択肢
1:このようなつまらない子どもの遊びにまでも、何か深い根拠があるので、軽視してはならない。
2:つまらない遊びには、特別な意味があるはずはないので、軽視しておけばよい。
3:このような博物学の知識は、過去からの継続があるので、注意して伝えなければならない。
4:この程度のたわいもないことでさえ、なにか昔からの言い伝えがあるので、重視しなければならない。
5:蛙の死体を粗末にすると、罰が当たるから、葬式をする必要があるというのは、昔からの習慣だ
■3:適当な内容を補って解釈しなさい。
懐紙に「少し春ある心地こそすれ」とあるは、げに今日のけしきにいとようあひたるも、これが本はいかでかつくべからむ、と思ひわづらひぬ。・・主殿司は「とくとく」と言ふ。げに遅うさへあらむはいと取りどころなかりければ、
解答
1①:1=④類推・2=⑦最小限の希望・3=⑩副助詞・4=②添加
1②:A=2・B=2・C=1・D=2
2=1
3=なるほど(返歌がつたない上に)遅いとまであったとしたら
■公式25:副助詞 のみ
A・基本知識:覚えるべきポイント
副助詞「のみ」は限定の意味だけでなく、強意の意味があることに注意をする。「とりあつめたること(何やかやと趣深いことが重なっていること)は秋のみぞ多かる」といった場合、「秋だけが」ではなく、「特に秋が」と意味を取る必要がある。
B 基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:今日は都のみぞ思ひやらるる。
イ:夜なくもの、何も何もめでたし。乳児どものみぞさしもなき。
解答
ア:強意
・今日は都のことばかりが思われてならない。
イ:限定
・夜なくものは何もかも素晴らしい。ただ赤ん坊の泣くのだけはそうでもない。
■公式26 副助詞「し」
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:副助詞の「し」の意味は強意である。だからこれを除いても文意自体は変わらない。係助詞の「も」を伴って、「しも」という形で出てくることも多い。現代でも「折しも」などいくつかのことばが残っているが、「果てない」を強めて「果てしない」と言い、さらに強めて「果てしもない」という言い方があることを考え合わせたい。
2:いま「除いても文意成立」と書いた。識別問題の参考書ではよくそういう言い方で説明されているが、実際には、例えば「名にし負はば」の「し」がそれであり除いてよいのだということは分かりにくいのではないかと思う。特に「し」の識別問題においては、しも・しぞ・AしBば(旅にしあれば・人しなければ、など)という代表的な形を覚えておきたい。■→識別問題リンク→「し」の識別
B 基本問題:識別・口語訳を確認!
ア・いかにわびしき心地しけん。
イ・昔ありし家は稀なり。
ウ・はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ。
解答
ア:サ変動詞「す」の連用形
・どんなにつらい気持ちがしただろうか
イ・過去の助動詞「き」の連体形
・昔からあった家は稀である
ウ・強意の副助詞「し」
・はるばる来てしまった旅を(しみじみと)思うことだ。
■公式27:係り結びの基本
A 基本知識:覚えるべきポイント
1:係り結びとは文中に係助詞を挿入し、文末を特定の活用形で結ぶことで文に強意・疑問・反語の意味を与える法則である。
2:「ぞ・なむ・や・か」が文中に挿入されると連体形で結ばれ、「こそ」が挿入されると已然形で結ばれる。
「ぞ・なむ・こそ」では強意、「や・か」では疑問・反語の意味が加えられるが、これを三つのタイプに整理して覚えるとよい。
A「ぞ・なむ」-連体形:強意
B「こそ」-已然形:強意
C「や・か」-連体形:疑問・反語
3:ABについては書き手の強調の意図を汲むことは大切であるが、強意は読解上、例えば初見の文章で文脈をつかみたいときには読み流すことも可能である。ただBの已然形については、已然形自体が文章中に出てくる頻度が少ないため違和感を感じてしまう場合がある。このときには係り結びを外す(係助詞を外して文末を終止形に直す)とよいと言われる。例えば「今こそ別れめ」であれば、ここから係結びを外せば「今別れむ」となる。そうすると「さあお別れしましょう」という意味が明らかになる。
4:これらに対して「や・か―連体形」の形は文章を読解する上で非常に重要である。疑問・反語は屈折した表現であり、解釈上のポイントになることが多いので、絶対に押え、疑問反語を文脈で読み分けて解釈することが必要となる。
■→識別問題リンク→「なむ」の識別
B 基本問題:( )の語の変形・用法・口語訳を確認!
ア:かかることなむあり(き)。
イ:世は定めなきこそ(いみじ)
ウ:蓑笠や(あり)、貸し給へ。
エ:春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見え(ず)香やは(隠る)
解答
ア:し・強意
・このようなことがあった
イ:いみじけれ・強意
・世の中は定めのないこと(無常)が素晴らしい。
ウ:ある・疑問
・蓑笠があるか。貸しなされ。
エ:ね・強意(逆接)=隠るる・反語
・春の夜の闇は筋の通らないことをする物ものだ。暗闇の中の梅の花は、色は見えないけれど香りは隠れようがあるだろうか。いや隠れようもない。
C 入試問題
■( )に終止形で示した語を文中にふさわしい形で記せ。
つくづくと思ひ続くることは、なほいかで心として死にもしにしがなと思ふよりほかのこともなきを、ただこの一人ある人を思ふにぞ、いと(A:かなし)。人となしてうしろやすからむ妻などに預けてこそ、死にも心やすからむとは思ひ(B:き)。いかなる心地して、さすらへむずらむと思ふに、なほいと死にがたし。「いかがはせむ、かたちを変へて、 世を思ひ離るやと、こころみむ」と語らへば、まだ深くもあらぬなれど、いみじうさくりもよよと泣きて、「さなりたまはば、まろも法師になりてこそあら(C:む)、なにせむにかは、世にもまじらはむ」とて、いみじくよよと泣く。
解答:A=悲しき・B=しか・C=め
■公式28:係助詞文末用法
A・基本知識:覚えるべきポイント
係助詞「ぞ・や・か」は係り結びを作らず単独で文末に用いられる場合があり、これを文末用法と言う。文末に置かれているだけで用法は変わらない。「その母も吾を待つらむぞ」の「ぞ」は強意であり、「お子はおはすや」の「や」は疑問である。あまり意識しなくても恐らく文脈の中で自然と理解できる。
B 基本問題:口語訳を確認!
その時悔ゆともかひあらむや。
解答
その時悔いたとしても、甲斐があるだろうか、いやありはしない。
■公式29:にや・にか:やは・かは
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:係り結びの「や・か」の用法は、疑問・反語であり、そのどちらを取るかは基本的に文脈判断。
2:しかし、例えば「何事にかあらん」などのように断定の助動詞「に」と結びつき「にや・にか(あらむ)」の表現を取る場合には疑問である。ただし、「夜半にや君がひとり越ゆらむ」のような場合、(ここでは「や‐らむ」で疑問だが)「に」は格助詞であるので注意したい。
3:また、例えば「命は人を待つものかは」などのように、係助詞の「は」と結びつき「やは・かは」の表現を取る場合には基本的に反語である。これは、読解上、非常に強い味方となるのでぜひ覚えたい。勿論100%ではない。
B・基本問題:次の係助詞の用法を答え、口語訳しなさい!
ア:月は隈なきをのみ見るものかは。
イ:心といふものなきにやあらむ。
ウ:たれかは物語求め見する人のあらむ。
解答
ア・反語
・月はかげりのない状態(満月)だけを見るものだろうか。いやそうではない。
イ・疑問
・心というものがない(から)であろうか。
ウ・反語
・誰が物語を求めて見せてくれるだろうか。いや誰もそんなことはしてくれない。
C・参考問題
■ 口語訳しなさい。
いつくしみ深き 友なるイエスは
罪とが憂いを とり去りたもう
こころの嘆きを 包まず述べて
などかは下ろさぬ 負へる重荷を
解答
どうして背負っている心の重荷を下ろさないのですか。いやおろしましょう。
■公式30:結びの省略
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:係り結びにおいて、その結びの語が省略されることが頻繁にある。例えば、「そののちにや、良秀がよじり不動とて」であれば、「や」のあとに「あらむ」が省略されている。また「かかる徳もありけるにこそ」であれば、「こそ」のあとに「あらめ」が省略されている。
2:結びの補い方の基本は二つあり、一つは格助詞の引用の「と」についたとき、例えば「とぞ・となむ・とや・とか」などの後には、「言ふ・思ふ・聞く」など、引用の「と」を受ける語を補う。
3:また、断定の助動詞につくケースでは、「にや・にか」であれば、基本的に「あらむ」、過去文脈であれば「ありけむ」を補い、「にこそ」であれば「あれ・あらめ」のどちらかを推量のニュアンスの有無を考えて補う。「あり」は断定の助動詞の語源である「に・あり」の「あり:補助動詞」であり、その欠落を補うことになる。「侍り・候ふ・おはす」などの敬語の補助動詞が補われることもあるので注意が必要である。逆に、「に」の識別問題では、下に「あり」の存在を探すことが大事な識別方法になる。
B 基本問題(用法・口語訳を確認)
ア:いかなることのあるにか
イ:たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名をつけけるとぞ
ウ:いづれの御時にか。女御、更衣あまたさぶらひ給ひける中に、
エ:かかる徳もありけるにこそ
解答
ア:あらむ
・どのようなことがあるのだろうか
イ:言ふ
・たびたび強盗にあったために、この名をつけたのだと言う。
ウ:ありけむ
・どの天皇の御代のことであっただろうか。女御や更衣がたくさんお仕え申し上げていた中に
エ:あらめ
・このような徳もあったのだろう
■公式31:結びの流れ
A・基本知識:覚えるべきポイント
■係り結びにおいて、結ぶべき語が省略されている場合は結びの省略と言うが、結ぶべき語はあるのに、その語で文が結ばれず(終止せず)、下に続く場合、これを結びの流れと呼ぶ。例えば「いつぞや縄を引かれたりしかば」では、本来は「しか」が「し」という形を取って終止すべきであるが、接続助詞「ば」につながり、下に続いていく形になっている。これが結びの流れである。ただ、文法問題にならない限り、解釈は自然と成立するので、解釈上は大きな問題ではない。
B 基本問題:次の係助詞に対する結びの語を本来の結びの形に改め、口語訳!
知恵と心とこそ、よにすぐれたる誉も遺さまほしきを、
解答
・まほしけれ
・知恵と心に関して、この世で優れた名誉も遺したいが、
C・入試問題
■ 123の係助詞の結びについて考え、説明文の空欄を補え。
それを見て(1)なむ、親ども、また男あはせむの心もなくて、やみけり。昔の女の心は、今様の女の心には似ざりけるに(2)や。つばくらめ男ふたりせずといふこと、文集の文なりと(3)ぞ。
選択肢
1:「なむ」の本来の結びは「ア」の部分で、それが係り結びの法則に従って、「イ」という形をとらなかったのは、文がそこで終止しないで、接続助詞にみちびかれてあとへ続いていったためである。
2:「や」の方は、上の「に」が(ウ)の助動詞の連用形であるので、このあとに「エ」などの表現を補って解すればよい。
3:「ぞ」も同様で、あとに「オ」の意を補って解する。1の場合は結びが(カ)た例であり、23の場合は(キ)された例である。
解答
ア=なく・イ=なき・ウ=断定・エ=あらむ・オ=言ふ・カ=流れ・キ=省略
■公式32:こそ‐已然形の逆接用法
A・基本知識:覚えるべきポイント
係り結びにおいて、「こそ‐已然形」が終止せずに下に続く場合、これを逆接で訳す。例えば、「品・かたちこそ生まれつきたらめ、心は・・」なら「身分や容貌は生まれつきのものであるが、心は」という意味になり、「八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり」では「人は訪れないが秋は来たことだ」と解釈する。和歌にもよく用いられるが、和歌では句点がつかないので、歌意を正しく読む必要がある。
B 基本問題:口語訳を確認!
ア:春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる
イ:心ばせなどの古びたる方こそあれ、いとうしろやすき後見ならむ。
解答
ア:春の夜の闇は筋の通らないことをする物ものだ。暗闇の中の梅の花は、色は見えないけれど香りは隠れようがあるだろうか。いや隠れようもない。
イ:気性は古風なところもあるが、大変安心できる後見人だろう。
C・入試問題
■ 解釈として最も適切なものを選べ。
殿のうしろのかたよりまゐらせたまひけるも、例のやうになどしてまゐらせたまふこそしるけれ、このごろは、たれも、をりあしければ、うちしめりならひておはしませば、いかでかはしるからん。
イ:いつものようにして参上なさるのであればはっきりわかるのであるが、
ロ:まるでふだん着のようにお着せするものを理解なさって
ハ:つね日ごろ変わらず参詣なさるお姿が印象深いので、
ニ:健康であるときと同じようにして召しあがるのだが、汁気が多くて、
解答=イ
■公式33: もぞ・もこそ
A・基本知識:覚えるべきポイント
■「もぞ・もこそ」は危惧の念を表し「~すると困る・~すると大変だ」と訳す。例えば「雨もぞ降る」は「雨が降ったら困る」、「烏などもこそ見つくれ」であれば「烏などが見つけたら大変だ」などのように解釈する。
B 基本問題:口語訳を確認!
ア:あなかま。人に聞かすな。わづらはしきこともぞある。
イ:あるまじき恥もこそと心遣いして
解答
ア:しっ、静かに。人に聞かせるな。やっかいなことが起こったら困る
イ:あってはならない恥があったら大変だと気づかいして
■公式34:ばや・なむ・もがな・しが
A 基本知識
1:望を表す終助詞群である。
2:「ばや・しが」は自己の願望を表し、「~たい」と訳す。「ばや」の古典的な覚え方に「バヤリースを飲みたい」がある。同様に「しが」には「てしが・にしが・てしがな・にしがな」などのバリエーションがあるが、願望の基本は「しが」にあるので、「志賀・滋賀に行きたい」と覚えるとよい。
3:それに対して「なむ」は他にに対する願望を表す。誰かに、何かに対して「~してほしい」と願望する。「いつしか梅咲かなむ」を覚えたい。「早く梅が咲いてほしい」(「し」は強意の副助詞で「いつしか」は「早く」という意になる)という意味。「なむ」の識別において、終助詞「なむ」が未然形接続であることは重要。
4:「もがな」は実現不可能な願望。「心あらん友もがな」で覚えたい。「情趣を解する友がいたらなあ」と意味を取る。宝くじで10億円当たったらなあという思いで「10億もがな」と覚えるといいかもしれない。
■→識別問題リンク→「なむ」の識別
B・基本問題:口語訳を確認!
ア:あはれ知れらむ人に見せばや。
イ:小倉山峰のもみぢ葉こころあらばいまひとたびのみゆき待たなむ
ウ:さやかにも見てしがな。
エ:心あらん友もがなと都恋しうおぼゆれ。
解答
ア:自己希望
・ものの情趣が分かる人に見せたい。
イ:他への希望
・小倉山の峰のもみじ葉よ。お前にもし心があるならもう一度の天皇のお出かけを(散らずに)待っていてほしい
ウ:自己希望
・はっきりと見たいものだ。
エ:実現不可能な願望
・情趣を解する友がいたらなあと都が恋しく思われる
C・入試問題
■ 「ばや」と用法上合致する「ばや」が用いられているものを選べ。
→「ばや」の識別
園の別当入道は、双なき包丁者なり。ある人のもとにて、いみじき鯉を出だしたりければ、皆人、別当入道の包丁を見ばやと思へども、・・
選択肢
1:紅葉すればや照りまさるらむ
2:春の花のとく咲かばや
3:ほととぎすの声を聞かばや
解答=3
以下、作成中です。
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