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気まずい土曜日、とろろうどん、ミドリの本、文化的雪かき

a.m. 6:00
最近、腰を悪くして、変な話、トイレも難しかったので、YouTube動画を見ながらストレッチ(今はちょっと痛いくらい)。そのあと、朝ごはんにアイスを食べ、英文の音声チェックの仕事にかかる。

a.m. 11:00
音声チェックを終えたくらいに、同居人のJunが起きてくる。「あれ、今日は神奈川でマラソン大会があるはずじゃあ」と寝癖がついたままの頭で、にやにやしながらわざとらしくにいう。そう、わたしは今日、マラソン大会に行かなかったのだ。(冒頭に伏線をはったのは、うしろめたい思いがあり、言い訳を書いたと思ってください。行けないこともなかったので。とにかく、行かなくて良かったと思える日にするために、今日は朝から活動的に動くことにしたわけですが、まあ、でも結論からいうと、自分に対するうしろめたさが消えることはなかったです)

a.m.11:15
お昼ごはんにとろろうどんを作る。

シンプル イズ ベスト

a.m.11:30
図書館で借りてきた本をそろそろ返さなくてはならないので、行ってみたい(古)本屋を手帳にリストアップしておく。

『日本の小さな本屋さん』と『続日本の小さな本屋さん』

これら本には日本全国の個性的な本屋が紹介されている。猫だけの本を集めている本屋さんや、サクラダファミリアのように店主自らが改装を繰り返している本屋などなど、見て読んで飽きない。今は3月。青春18きっぷの季節だし、いろいろ行きたいなあ。

p.m 12:00
今日は『日本の小さな本屋さん』に紹介されている書店に行くことにした。Junに13:00に出ようといわれたので、それまで読書を楽しむ。今日は、『貧乏ピッツァ』と『その本は』を読むことにする。

どっちもミドリ!

そういえば、今日のとろろうどんは、ひとり60円ほどなので、貧乏飯といえるのではないか。ただ、そうとも気づかなかったところに貧乏暮らしが染みついている、とふと思う。ちなみに『貧乏ピッツァ』は食の文化論エッセイ。イタリアを第二の故郷とする筆者が独自の視点で、イタリアの食文化だけでなく、日本の食文化についても掘り下げている。

p.m 1:00
電車に乗って、『その本は』を読む。これは、「その本は…」からはじまる短い物語をいくつも集めたちょっと変わった本だ。ヨシタケシンスケさんの絵もあいまって、童話のよう。たとえばこの本には、自分のプライベートなことが赤裸々に書かれた本をみつけた男の話がある。男はそのことにぞっとするが、それよりももっと恐ろしいことが待っている……というように、本は希望ばかりを与えてくれるわけでないという、本のさまざまな側面を短い物語を通して描いた本だった。

と、わたしが夢中になって読んでいると、JunがニヤニヤしながらXの投稿をみせてきた。そこには、今日わたしが行くはずだったマラソン大会の優勝者の写真。ほかにも、タンクトップ姿で走る選手たちの写真もあった。これを見てあらためて、行かなくて良かったとほっとした。わたしは、毛玉だらけのTシャツとぴちぴちパンツで走るつもりだったので、参加したら、さぞ浮いていただろう。とはいえ、やっぱり自分に対してうしろめたく、気まずい。

p.m. 3:00
お目当ての場所に到着。ここは、世田谷の駒沢にあるブックストア兼ギャラリーSNOW SHOVELING。

SNOW SHOVELING

この素朴な扉を開けると、店主こだわりの世界観が広がっている。なかの写真をとっていいか聞く勇気がなく、ここに掲載できないのが残念なくらいおしゃれだ。コンクリート打ちっぱなしの店内に、木の本棚がとてもよく合う。コンクリートの壁が石のようにみえ、木が映えるのだ。選び抜かれたインテリアにも目を奪われた。まるで外国にある書店のようだった。

店内では、サロンのように、店主とともに数人が会話を楽しんでいた。なんの話をしているかまでは分からなかったが、声の音を聞きながら本を物色した。書店の名前から想像がつくが、村上春樹の本が多く並んでいた。ただ、わたしは悩んだ末、村上春樹でもアメリカ文学でもなく、高野文子さんの短編漫画集『棒がいっぽん』を購入。

紙袋には、店主がマジックで書いたと思われる言葉。オリジナルのしおりもかわいい。

『棒がいっぽん』は昔、京都の喫茶店で読んだことがあった。「美しき町」や「東京コロボックル」が大好きだった。店を出て乗り込んだバスのなかで、我慢できずにさっそく読んだ。あれから歳を重ねたわたしに、思いのほか沁みた。とくに「美しき町」。

p.m 7:00
サンマルクカフェにて、この文章を携帯に打ちこむ。いろいろ読んで、新しい場所にも行けたけれど、気まずさは消えない土曜日だった。次の機会があれば、走ろう。懲りない性格なもんで。



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