いかにして私はコピーライターを挫折したか。 第8話 苦悩編

苦悩といえば思い出すのはやはりらんま1/2であろうか。苦悩帯刀。
なんだこのジェネレーション限定のネタは。ハイ、はじめまーす。


「広告になってない」
という一言に込められたものは、「もっとまともなもん持ってこいバカ野郎」という罵倒ではなく、いや罵倒も含んでたのかもしれないけど要するに「商品の効能を伝え、魅力的に見せる要件を満たしていない」ということだ。

なお、この時は、ケータイのアプリを4コマでユーモラスに紹介するというお題だった。ということは面白い4コマ漫画があれば読んでもらえるからいいだろ、という想定で、自分としてはかなり「漫画」という部分に重点を置いていた。そこで冒頭の一言である。

ちなみにこの頃一つ下の男性コピーライター、本橋(仮名)君も入社していて、一緒に考えるようになっていた。本橋君はもともと他社で広告制作の経験があり、年数でいえばむしろ自分より多いくらいだったのだが、一応年上なので先輩面することにした。

その彼が絶賛したのが、某サンバゲーアプリの紹介で自分が考えた漫画である。
流れとしては「主人公(OL)の会社にブラジルから社員が赴任してくる」→「ラテン系はやっぱ濃いね~という反応になる」→「主人公がサンバなら負けないわ!と対抗する」→「サンバ系のリズムゲームを遊んでいるからだね、というオチ」
これで本橋君が爆笑していたのだが、その爆笑ポイントは、ブラジルから来た社員の名前が「ホセ・ロドリゲス」だったから、というものだった。正直あまり本編と関係ない。

「出オチじゃないすか」
と言われたのだが別に出オチのつもりはなく、ブラジルっぽい名前ならホセかなと適当に考えただけなのだがその適当ぷりがツボだった模様。とはいえいい反応をもらって気をよくしたので北さんに提出するとやっぱり冒頭の一言。

「サンバといえばブラジル」「ブラジルといえばロドリゲス」という感覚が個人的すぎたようで共感を得られなかった。唯一褒められたのは意外と絵が上手いということだけ。参考までに他の採用案を見せてもらうと、なるほど確かにアプリの特徴やメリットがちゃんと無理なく紹介されている。されているのだが…「面白いんかコレ」と思ったりしたことも事実だ。広告としてではなく、漫画として見ていたからかもしれない。しかし実際広告としてはケチをつけるようなところが見当たらない。北さんに案を見せられて「どう?何か納得できないようなところがあったら遠慮なく言ってみて」とは言われたのだが

「いや別に…いいと思います」

としか言えなかった。言えないよ、そりゃ。郷ひろみじゃなくても言えないよ(ネタが古い)。まぁとにかくもっとちゃんとアプリの特徴に寄り添わねばならないということだな、と思いいろいろ考えた結果、何とか一つだけ採用となった。だいぶ後になってわかったが、この案を見たデザイナーの人がかなり褒めてくれていたらしい。フフフ、そういうことは早く言ってくださいよ。

ちなみにその案とはワイン知識のアプリを紹介するもの。「アプリでワインの下調べをする」→「彼と一緒の食事で知識を披露する」→「私と同い年のワインなの!という」→「キミ●●年生まれじゃなかった?と年をごまかしてたのがバレる」というものだった。しかしこの時北さんのジャッジは厳しかったが、考えている人たちの案のどれかはなるべく拾い上げようと苦心してくれていたようにも思う。マネジメントって大変よなぁ。
なお期待の新人麦田さんは漫画に詳しくないようでかなり苦戦していたが、何かは採用されていたような気がする。彼女のセンスに男は団結して対抗していこうぜ!と本橋君と語ったり、はしなかったがその後もよく話すようになった。

こうしてどんどんコピーライターが増えていったように見えて、実際は社内の人の出入りが非常に多かったので単純に増えていたというわけではないのだった。

次回 「混乱編」に続く。

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