見出し画像

意外な事実も、すぐ周知の事実になる時代。

「人間の体の60%は水でできている」
「人生の1/3は睡眠です」
「人間は寝ている間にコップ一杯の汗をかく」
「豚の体脂肪率が15%だなんてショックじゃないですか?」



上記のうち、いくつくらい聞いたことがあるだろうか。全部広告に関連するのでだいたいはご存じかなと思う。一番下のものは一般に流通した広告ではないので知らない人も多いかもしれないが(たしか宣伝会議賞の受賞作)。

睡眠のだけちょっと違うが、基本的には「えっ、そうなの?」という意外な雑学を下敷きにしている。もちろん単純に豆知識を披露したいわけではないのでそこからメッセージにつなげるわけである。
「人間の体の60%は水→水分補給が大事→効率のいい水分補給ができるドリンクあるよ」といった具合に商品に繋がる。

「1/3は睡眠→いい枕や布団」「コップ一杯の汗→脱水症状を防ぐ水分補給」「豚の体脂肪→人間の体形キープ」…ということですなわち広告の入り口なわけだが、興味を引くためには「意外な事実」でなければいけない。

上記のものは当時はともかく、現在は普通に知られている事実だ。そのため「実は人間の体は半分以上水分なんです!」といま言ったところで何も響かない。
こういう情報が出ては話題になり、話題になったものはその後「当たり前の知識」となる。意外な知識を見つけようと思うとどんどん深くしなければいけない。
「地球の7割は海で陸地は3割」というのはさんざん知られている知識だが、これが「実は陸地のうち人が生活しているのはそのうちの2割」だとするとどうだろうか!ビックリ!もっと住んでるだろと思ったあなた!正解です

実際には陸地の88%に人がいるらしいです。すいません、ただのウソで。

広告コピーの手法の一つにこうした「意外と知られていない事実からメッセージにつなげるパターン」があるのは昔から変わらないのだが、みんなが情報を検索できるようになったことでハードルが上がっている。昔はそれこそ業界しか知らなかったり図書館で専門書を読むことでしか得られなかったような知識があっさり手に入ったりするので。ネットスラングでいえば「ゴリラの血液型は全部B型」みたいなのも有名になってしまった。ただこれらがトリビアとして終わるか広告になるかのラインは、もちろん「商品またはサービスに落としこめるか」というところだ。

上記の「ゴリラの血液型は全部B型!」からは何につなげられるか。正直あんまり浮かばない。「人間は4種類必要です、献血に行きましょう」とかだろうか。マジメな感じがなくなるからNGくさいが。

そう考えると現代では「意外な雑学の中でもまだ知られていない話」を探しつつ、商品・サービスに落とし込みつつ、差別表現やジェンダー的な話などにも配慮しつつ好感度を上げないといけないわけである。
うわー、ハードル高い。

「意外」というのも自分基準だと判断が難しい。こりゃ知ってるだろと思ったものが知られてなくて、これは知らないだろと思ったら知られてたりすることもある。考える人自体はヘタにいろんな知識があるとややこしくなりそうだ。もちろんリサーチをかけて「〇〇が知られていない」ことを担保してからやるんだと思うけど。しかし結構知られてて「何当たり前のこと言ってんだ」と思われるのが一番恥ずかしいような気もするなー。

ただ何となくのカンだが、「打合せで偶然聞いた話に驚きがあったので使用した」パターンと、「意外な事実で驚きを狙おうとデータを集める」パターンがあるとすると、後者はあんまりうまくいかないのではなかろうか。作為的なのが透けて見えるので。

このへん、お笑いのトークが上手い人と天然ボケで爆笑を取る人との関係性にも似ている。そんな話も次回書きます。

サポートいただけた場合、新しい刺激を得るため、様々なインプットに使用させていただきます。その後アウトプットに活かします、たぶん。