着物に抱く感情のカロリー

着物まわりのエッセイ漫画「召しませ着物」スタジオクゥ ひよさ&うにさ著、という本は、着物好きの方に勧められて読んだが大変面白く、情報量が多い本であった。

この本。
https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%AC%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%AD%E3%83%A2%E3%83%8E-%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%82%A5-%E3%81%B2%E3%82%88%E3%81%95-%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%95/dp/4781607896
 
終盤に
”日本人が着物に対して抱く感情のカロリーは存外大きいのかもしれません”
とあり、激しく同意。
 
着れないことへのいいわけや何らかのコンプレックス、着ているときの好意的な反応、否定的な反応、けっこう激しい。
みな思うところあるんだろうな、と。
 
<好意的な例>
・知らない紳士に呼び止められ「亡き母を思い出しました…素敵なものを見せてくださってありがとう」
・知らないおばあさまに呼び止められ「きれいにきていらっしゃるわね。若い方がどんどん着てくださるとうれしいわ」
(着物きていると若造扱いなのもまた特有。)
・着ていただきたいから、と突然着物をいただく
・電車でとなり合った知らないおばさまと着物談義etc.
 
<否定的な例>
・お金持ちなんですね
・暇なんですね
・そんな恰好で来てやる気あるの?
・単なるコスプレじゃん?
 
私は徹底的に普段着派なので、今日はどこも行かなくていいので着るか!っていうくらいだ。

コンプレックスがゼロというわけでもなくて、某けっこうちゃんとした席に母が「これを着ていけ」と自分の訪問着を貸してくれて、当時は自分では着られなかったし、母も脳梗塞後で手がきかなくなっていたので、美容室を予約して着せてもらったことがあった。

後で、京都府出身の方から「着物を新調してこないなんて、貧乏なおうちなのかしらね?」と言われていたということを知り、はあ、新調するもんなんですか、知りませんでしたよ。この人には他に枚挙にいとまがないほど、恐ろしいことを言われ、人間はこんなにも邪悪になれるのだ、ということを学習させていただいた。

そのあと、京都と京都弁と着物を克服するまでにかなりかかったのだが、まあ克服したので良しとしましょう。
京都のおばはんは知らんが、着物には一つも罪はない。

昨日は国立博物館の「きもの展」を見に行くにあたり、前日から何着ようか悩んでいて、結局直前まで仕事していた。
とにかく服を着ていれば上等だというテンパリ具合で、かろうじてワンピースを頭からかぶり(ひどい)、駅まで自転車でかっとんで行った。

展示はものすごい着物ばかりだったので、目の保養どころか改めて人間ってすげえな、と思ったのだが、会場のみなさまの着物率も高し。
皆様の着こなしをみるのもまた楽しかった。

季節的に、小千谷ちぢみ多め。
袖なし単衣の羽織を着ていらっしゃるご婦人に、それどこで何てオーダーして作ったんですか、私も欲しいんですけど、と詰め寄りたかったが詰め寄らなかった。
5月6月、羽織では暑そうだけど、ストールでは心もとないときがあるのですよ。
あとでこっそり、普段お世話になっているきもの屋さんに聞こう(ヘタレ)。

さて、「きもの展」では、当然外せない尾形光琳の意匠が紹介されていて、あの「チドリ」のデフォルメは、光琳の仕業だったのか。
光琳以前にも千鳥が刺繍されている着物もあったが、リアルに寄せた細長いトリが縫われていた。

天璋院の使用したお道具や、天璋院が和宮に贈った着物なども展示されていて、おお!これが!と思ったが、どうしても天璋院がよしながふみ描く、きれいなおっさんでしか脳内再生されないのだった。
天璋院さん、雀柄が好きだったそうです。かわいかった。

久保田一竹は、辻が花の人、と思っていたので、素通りしていた。
もういままで何も知らなくてごめんなさい、河口湖の美術館行きますので、と思った。

辻が花は、すごく印象が悪い。
とにかく売りつけたいきもの屋さんは、辻が花をすすめてくる。
多くの人が着物に抱くイメージの中間値なのかもしれない。
それでも買いそうなそぶりを見せないと、喪服をすすめてきたりする。
辻が花の職人さんは別に何も悪くない。
 
某きものやまとの展示会で、おそらくアトピーで、すごく顔色がよくない方に、辻が花のそこそこ高い反物をぐるぐる巻いて(顔うつりが最悪だった)誉めそやしていた店員さんたちを横目にみていたことがあるので、余計。
合う?帯などもどんどん当てられていた。
あの女の子、ローン組んで買ってしまったんだろうなあ。

いい店もある。悪い店もある。

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