バンコクマダム連載コラム『タイ生活』より  第9話・・・「パーマ屋さん」

タイで暮らし始めた1990年代のこと。衝動的にパーマをかけてみたくなりローカルパーマ屋さんに飛び込んだ。
これは、貴重な衝撃的体験になった。

まずは、シャンプー。
日本のようにイスが自動的に背もたれをゆっくり倒して寝た状態にしてくれるのではなく、もともとベッドみたいなシャンプー台に自分で横たわる。
日本だと顔にタオルをのてくれるがタオルなし。
目を開けたら、シャンプーしてくれるお姉さんとバッチリ目が合ったりするので困っちゃう。
しっかり目を閉じシャンプー開始を待つ。

と!思わずシャンプー台から寝たままジャンプしそうになる。
何の前触れもなく、いきなりジャーっとジェット水流のような冷水を頭にかけられたのだ。
そうか、暑い国では冷たい水でシャンプーか・・・、と一人で納得しされるがままになっていると、今度はいきなり爪で頭皮を突き刺されているのでは・・・、と思える超刺激的な容赦のないゴシゴシ開始。
「い、痛いねんけど・・・・」
気の弱い私は何も言えずにただ耐えている。
その後、再びジェット水流で洗い流してくれるが、爪でひっかき回された頭には爽快を超えて沁みる・・・

そして、今度こそショックで反射的に上半身が起き上がってしまいそうになった。
それを、シャンプーのお姉さんが、グッと手に力を込めて押さえる。
「もうっ、この人大人なのにシャンプーの間じっとしてることもできないの?!」と、その顔は言っている。

でも、でも、仕方ないでしょ!
ジェット水流で耳を洗われたのだ。
日本だと、耳に水が掛からないように細心の注意を払ってくれるのに、わざわざジェット水流を耳に向けて洗ってくれちゃうなんて思いもよらない。

ようやくシャンプーが終わる。
ヘトヘトだ。
日本だと、「お疲れ様でしたっ」の輪唱で締めくくられ、「別に疲れてませんけど・・・・」と思うのだけど、今は言うててほしい。
本当に疲れた。

その時の私の髪型は、ごく普通のショートカットだった。
パーマをかけてほしいと言ったけど詳細は尋ねられないし成り行きに任せた。
髪を巻かれ、パーマ液をかけられ、しばらく待ち、パーマ液を洗い流し・・

ジャジャーン!

鏡に映った自分の新しい髪形を見て大ショック。
これって・・・奈良の大仏さんみたいやん・・・。

また偉大な方と同じ髪型になってしまったものだ。
有難い髪型かもしれないけれど、一般市民にはちょっと不似合いだ。
仕上がった髪型を「気に入りません。」と言う勇気もなく、数日後別のパーマ屋さんでスポーツ刈りみたいに短くカットしてもらった。
物心ついて以来、人生で髪が一番短くなった。
真っ黒に日焼けしていてスポーツ刈りなので時々男の人に間違われたけど、奈良の大仏さんと間違えられるよりいいとしよう。



(2013年12月号)

❁お読みいただきありがとうございます。❁
これは、タイのフリーペーパー『バンコクマダム』に2013年から連載させてもらっているコラムをちょこっと編集し、まとめておきたくて書き留めています。

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