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アニメ産業の課題

◉株式会社日本総合研究所の調査部が、日本のアニメについて分析しています。結論はズバリ、供給面の課題。先日も書きましたが、北米の漫画アニメ市場は今後、大きな成長が期待され、特にアニメ市場は有望。だからこそ日本のアニメ業界自体が、構造改革する必要はあるんですよね。インボイス制度ハンターイ、なんて共産趣味の人に踊らされてるようじゃ、厳しいです。

アニメの海外需要が強いため、供給が追い付かない可能性があります。賃上げなどで労働環境を改善していくことが必要です。
#JRI安井洋輔

「アニメ産業における供給面の課題」
https://jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchreport/pdf/15146.pdf

https://x.com/jri_eco/status/1814159637887021363

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、パチンコ屋さんのとある科学の超電磁砲の絵、だそうです。

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■日本総研提言の概要■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。PDFの概要も、転載しておきますね。

【アニメ産業における供給面の課題】日本総研

要約
◆わが国のアニメ産業は、堅調な海外需要を背景に、次世代の成長産業としての期待が高まっている。もっとも、先行き、アニメの供給能力はそうした需要に十分に応えられないリスクが大きい。これは改善しづらい業界慣行による低賃金環境の下、アニメーターやプロデューサー等(以下、アニメーター等)の同産業からの離職が後を絶たないことがある。

◆もっとも、多くのアニメ制作会社(以下、スタジオ)はアニメーター等の賃上げ余力に乏しい。アニメ作品ごとに形成される製作委員会という出資者グループに対して交渉力に劣るため、主な収入である委託制作費が抑制されているほか、制作したアニメ作品の知的財産権(以下、IP)も放棄させられており、恒常的に資金力は弱い。

◆こうした状況を打破するには、政府は、製作委員会に対し、発注前における制作費の適正な見積もりと、制作費の負担がなくても創作への貢献を考慮して、スタジオに最低1割のIP付与を義務付けるといった措置のほか、スタジオにアニメの企画開発のための補助金を支給することなどを行うべきである。こうした政府介入が必要になるほど、業界慣行が強固に固定化されてし
まっている。共存共栄、業界発展のために、出資者・スタジオの関係見直しを図る必要があろう。

◆また、若年アニメーター等へのスキルアップ機会の充実も図る必要がある。アニメ制作スキルは汎用的なスキルであるため、公的な職業教育訓練を充実させるほか、検定制度の構築による「獲得スキルの見える化」などが求められよう。

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchreport/pdf/15146.pdf

まぁ、正論ですね。製作委員会に対する発注前における制作費の適正な見積もり・スタジオに最低1割のIP付与を義務付ける措置を求めたほうが、よほど健全でしょうに。それをせずに「インボイス制度ハンターイ!」みたいなおバカな行動をしていては、こいつらに補助金を渡しても、溶かされて活動家の資金に還流されるのではないか、と疑われるだけ。一度は断念したフリーランス新法を通したように、岸田政権はフリーランスにまともな行政をしてくれる政権なんですから。

そもそも、助成金とか入れると、必ず官僚の天下りシステムに組み込まれ、公金チューチューの温床に。あるいはその助成金の分配の権利を持つ人間が権力者となり、業界用歪ませますから。他産業見下しまくりの平田オリザ氏の、弟子の某偉才監督らが推進する日本版CNCも、そうなるのが目に見えていますから。重要なのは御上の力に頼らず、健全な利益を生み出し、常識的な分配が行われるシステム作り。むしろ、産業別労働組合の構築とか、そっちの方で政治にコミットした方が良いように思いますけどね。

■国策とシステム作り■

中国共産党の幹部は、アニメ『カンフーパンダ』を観て、その出来の良さに驚き、同時になぜ我が国でこれができないと嘆き。これからはコンテンツビジネスだと、国を挙げて力を入れているわけで。自分もかなりの数の中国人留学生を教えてきましたが、彼らは総じて熱心で、真面目です。物作りの二次産業の後は三次産業のサービス業、特にコンテンツビジネスは、内需を動かす力にもなりますから。この考えが浸透しているから、中国はラノベでもアニメでも、大きな飛躍を見せています。

それよりも重要なのは、官民あげてのシステム作りがうまくいくと、それこそ北京大学のアニメ研究会の学生たちが、裏方として参加しやすくなるわけです。アニメーターも、小説家や漫画家と同じく、才能の世界ですが。国内トップクラスの頭脳を持つ人間が、財務や法務、渉外などの実務を担当することによって、その産業は大きく発展します。京都アニメーションが、傑作を連発しながら、ホワイトな製作環境を構築できたのも、システム作りがうまくいったからですからね。

なお、こういうことを書くと必ず、表現の自由のない共産党一党独裁の中国でコンテンツビジネスは、やがて制限がかけられ限界がある……という人がいますが。限界があるということと、ビジネスとして成立しないということは、まったく別の話なんですけどね。歴史に残るような大傑作は生まれづらくても、産業を回すためのそこそこの作品は生まれるわけですから。だいたい、制限があるから傑作が生まれないという考え自体が、思い込みだと思いますよ? 

■規制と表現の綱引き■

これは、大林信彦監督が指摘されていたことですが。戦前に作られた映画『無法松の一生』は、御上の検閲が入り、カットされた表現もあり、必ずしも自由に作られた作品ではありませんでしたが、傑作の誉れが高く。ところが、そのような検閲が入らなくなった戦後のリメイク版、大林監督は感動できなかったそうです。制限がある中で作られた戦前版の方が、心に響いたと。そういう側面があるのは事実なんですよね。上に政策あれば下に対策あり。制限の中でも工夫するのが、本当の表現者。

同性愛に対する禁忌が現在より強かった時代に作られた『太陽がいっぱい』のほうが、リメイク版よりも観客の心に届いたり。自分は、表現規制には断固反対する立場ですが、同時に規制があるから良い作品ができないという甘えた考えは、否定します。北朝鮮の怪獣映画『プルガサリ』は、エンターテイメント映画の皮を被りつつ、金日成体制を批判するという、気づかれたら公開銃殺刑になるような、ロックな作品です。主義主張をエンターテイメントの皮でくるんだ作品の方が、ハイレベル。

現代日本でも、娯楽映画のふりをして、行き過ぎた ポリティカル・コレクトネス社会をチクリと批判した『翔んで埼玉』が大ヒットしたように。もっとも日本アカデミー賞のボンクラ な審査員たちは、何のひねりもないどころか、内調の仕事内容も理解していない『新聞記者』のような愚作に、作品賞を含む六冠を与える始末。規制がないから浅薄で稚拙な作品が横行するという逆説。なお、「だから規制が必要なんだ」なんて馬鹿なことは言っておりませんので。読解力の低い方のために、言わずもがらのことを、付け加えさせていただきます。

■脱共産趣味の重要性■

日本のアニメ会の問題は、経営のプロが少ない、という一点に尽きると思うんですよね。そして、アニメーター出身のトップが仕切る構造。これって実は、大相撲やプロ野球でも見られる、宿痾なんですよね。日本大相撲協会の理事長は、横綱経験者でないとほぼなれませんし、日本のプロ野球でも監督は現役時代にスーパースターでないとダメで、アメリカのようにメジャー経験がない名監督とか、野球黎明期を除いて、ほとんどいませんね。逆に、コーチなど指導者の実績がなくても、スーパースターならいきなり監督になれる、悪しき部分が。またそれで、落合博満監督や工藤公康監督が結果を残しちゃうので、一向に改まりませんね。

アニメ界も、絵が描ける人が絶対的に偉く、そのまま作画監督や総監督になっていく構造。もちろん、高畑勲監督のような例もあるのですが。こういう構造だと、経営のプロが育ちにくい・外部から入ってきづらいという構造が、できてしまいますね。結果、どんぶり勘定の経営がまかり通り、福利厚生や契約の面で、立ち遅れてしまう。スタジオ・ジブリも、けっきょくは高畑勲監督の暴走を抑えられず、『かぐや姫の物語』で一説には50億円とも言われる金を溶かしてしまう。結果、ジブリのアニメーターは正社員から解雇されるハメに。理想だけで実務能力がない人間が、業界の体質を悪化させるわけで。その意味では、庵野秀明監督の不動産運用とか、今後は多くのスタジオで採用されるでしょう。

■新人育成のシステム■

インボイス制度反対とか、共産趣味の東映動画労組からの流れなんでしょうが。本当に必要なのは助成金ではなく、経営のプロです。できれば、アニメ制作スタジオの内実や、アニメ作りに対する情熱とか、理解した上で、健全な経営ができるタイプ。アニメ業界の悪い癖として、やれ東映の因業社長が悪いの、手塚治虫が悪いの、インボイス制度が悪いのと、敵を作ってそこを攻撃して、安心立命する態度。たぶん、東映動画のレジェンドたちが鬼籍に入ったら、いろいろと暴露話が吹き出てくるでしょうけれども。そんなことよりも、もうちょっと建設的なことをやらないと、本当にアメリカに人材が流出しますよ?

他業種に学び、健全経営ができるプロがもっと増えること、はっきり言えば官僚的な能力の高い社員が増えることでしょうね。そういう社員が増えた先に、官僚的な黒字至上主義と作家主義の対立とか、問題は出てくるとは思いますが。まずは、有能な番頭や役方を増やさないと。創作は、工業製品のように一定のペースで生産できるわけではなく、研究開発部門みたいなもんですからね。だからこそ、お金をちゃんと回せる人間が必要。それができれば、スタッフの内製化とは別の形で、フリーランス主体でも人員を回せるかもしれません。そのためには、新人アニメーターの育成システム。

アニメーターも、けっきょくは才能がある人しか生き残らないため、アニメーター自体が教えることがドヘタで、ノウハウが蓄積されていないようで。漫画家を見ていても、みんな天才なんですよ。だから、凡才を育てられない。「専門学校の卒業生は即戦力にならない」と嘆きながら、では即戦力にするためのノウハウを、専門学校に提供できていないんですよね。ここのノウハウも、本当に教えるプロと徹底的に膝を突き合わせ、ノウハウをマニュアル化する必要があるでしょうね。才能もない人間に、高額な報酬を払う必要は、自分はないと思いますが。それとは別に、育てるシステムは必要かと。


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