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ユニバーサル日本語

◉オススメ記事で偶然読んだ、安田峰俊氏の記事が面白かったので。自分もいちおう、物を書いて飯を食ってる身だけれど、適当な文章ばかり書いてるます。お硬い文章読本を読むほどではないが、文章力を上げたい人には、オススメの内容です。

■片手間で教える文章講座1 「ユニバーサル日本語」の書き方|安田峰俊 #note https://note.com/meirojin/n/n3faba5fc665e

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■悪文を推敲してみる■

①逆説表現の整理

そこで挙げられていた悪文例のひとつが、こちら。接続助詞の「が」を多用した文章は、確かに読みづらいですね。そこで、逆説の意味以外は使わないという指摘。これはけっこう重要です。

私は札幌のホテルにチェックインしたが、駅前に位置していて、観光地へのアクセスがいいが、1泊4000円の安宿だったので部屋にミネラルウォーターも置いていないが、快適な夜を過すことができた。

これを、逆接の「が」のみを残しての修正した例が、こちら。

私は札幌のホテルにチェックインした。駅前に位置していて、観光地へのアクセスがいい。1泊4000円の安宿だったので部屋にミネラルウォーターも置いていないが、快適な夜を過ごすことができた。

②〝が〟を整える

せっかくなので、自分の文章の整え方を使って整理してみましょうかね。逆説のみを文章に残すのなら、「過ごすことが」のがも、置き換えたほうが良さげですね。いじってみましょう。まずはこういう、テニヲハの修正から入ると、あまり身構えず楽ですしね。

→私は札幌のホテルにチェックインした。駅前に位置していて、観光地へのアクセスはいい。1泊4000円の安宿だったので部屋にミネラルウォーターも置いていないが、快適な夜を過ごすこともできた。

③文章を短くする

文章は短い方が良いなら、もっと削れます。日本語の特徴として、主語は省略していい部分がありますから。「快適な夜を過ごすこともできた。」も文章として長いです。せっかく修正した部分だけど、思い切って削ってしまおう。あんがい、修正した部分を残したい人が多いですが、損切りするのも大事です。句読点込みで93文字の文章が、82文字に縮まって、少しキレが良くなった(ような気がします)。

→札幌のホテルにチェックインした。駅前に位置していて、観光地へのアクセスはいい。1泊4000円の安宿で部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、快適な夜を過ごせた。

④て抜き修正する

さらに細かく微修正をば。「が」を重ねるのと同様に、「していて」はが重なって稚拙な感じもするし、テンポも悪くなります。「〜して、」という文章は「〜し、」という形にしたほうが、大人っぽくなります。自分はこれを『て抜き推敲』と呼んでいますが。

〝て〟が重なると幼稚に見える理由は、子供が「ボクは〜して、〜して、それで~して……」と繰り返し、なかなか終わりが見えないため。会話だけでなく文章のでも、イライラしますね。大阪のオバちゃんなら「ほんで、オチは?」と詰問するレベル。

文法的には動詞「する」の連用形「し」に、接続助詞「て」が付いて「〜して」となるのですが、自分の場合は接続助詞を外してしまう、ということです。改変例が以下に。

→札幌のホテルにチェックインした。駅前に位置し、観光地へのアクセスはいい。1泊4000円の安宿で、部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、快適な夜を過ごせた。

⑤文章構造の推敲

ここからは、文章構造の推敲。この文章では「快適な夜を過ごせた」が一番言いたいことです。例えば「ブスだが性格は良い」とか「見た目はグロいが味はいい」とかと同じで、最初のマイナスの印象が、プラスにひっくり返った構造の文章です。

これを強調するためには、ホテルのマイナス・ポイントを前半にまとめたほうが、読者も読みやすいです。元の文章を分析すると、プラス評価の描写とマイナス評価の描写が、不規則に並んでる感じがして、バラバラな感じがします。以下に書き出しますね。

・札幌のホテルにチェックインした。→中立
・駅前に位置し、→プラス
・観光地へのアクセスはいい。→プラス
・1泊4000円の安宿で、→マイナス
・部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、→マイナス
・快適な夜を過ごせた。→プラス

⑥ブロックの整理

なので、マイナス評価を中立の状況描写の直後にまとめて、文章のブロックを整理してみみます。こんな感じに。

→札幌のホテルにチェックインした。1泊4000円の安宿で、部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、駅前に位置し、観光地へのアクセスはいい。快適な夜を過ごせた。

⑦句点を整理する

構造的にはだいぶまとまったのですが、ブロックを入れ替えただけなので、文章の区切りの長短がバラバラで、読点も多くウザい感じがします。読点を整理してみましょう。

→札幌のホテルにチェックインした。1泊4000円の安宿で部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、駅前に位置し観光地へのアクセスはいい。快適な夜を過ごせた。

⑧接続詞を工夫し

ここで「安宿で」を「安宿なので」に、「駅前に位置し」を「駅前ゆえに」と変更してみます。なので・だから・ゆえになどの接続詞で、前後の文章をつないであげたほうが、因果関係が明確になり、読者はわかりやすいですから。

ただし、同じ言葉を連発すると稚拙に見えやすいので、別の言葉に置き換えたほうが無難ではあります。

→札幌のホテルにチェックインした。1泊4000円の安宿なので部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが、駅前ゆえに観光地へのアクセスはいい。快適な夜を過ごせた。

⑨さらに圧縮する

これで79文字になりました。元が93文字なので14文字、約15%の圧縮に成功しました。ここで妥協せずに、さらに圧縮を試みます。「部屋にミネラルウォーターも置いてなかったが」を「ミネラルウォーターも部屋になかったが」に修正。これで76文字、19%の圧縮です。「部屋に」の位置を「なかった」に近づけることで、文章の主語と述語がスッキリし、理解しやすいです。

→札幌のホテルにチェックインした。1泊4000円の安宿なのでミネラルウォーターも部屋になかったが、駅前ゆえに観光地へのアクセスはいい。快適な夜を過ごせた。

⑩流線型に整える

この修正文を句読点ごとに切り分けると、こんな文字数になります。後半に行くほど、文章が短くなり、流線型になります。

・札幌のホテルにチェックインした。→16文字
・1泊4000円の安宿なのでミネラルウォーターも部屋になかったが、→32文字
・駅前ゆえに観光地へのアクセスはいい。→18文字
・快適な夜を過ごせた。→10文字

⑪スピード感重視

数えてみたら、ほぼ2対4対2対1の文のブロックの長さになっています。もしルビ付きの文章が可能なら、ミネラルウォーターをMWとかにし、ルビを振ってさらに短くしたいところです。
もし自分の文章として自由に書くなら、スピード感重視でこんな感じになるかな?

札幌のホテルに到着。1泊4000円の安宿なんで部屋にはMWミネラルウォーターなしだが、駅前ゆえに観光地へのアクセス良好。快適な夜だった。

これで59文字、63%に圧縮できました。それでも情報量としては、最初の文章からほとんど損なっていないはずです。Amazonのレビューで文章が下手と書かれた自分だが、それでも文章の推敲にはこの程度の手間はかけているんですよ~(ただし原稿料が発生するもの限定)。たぶん、あのレビューを書かれたのは、筒井康隆先生か清水義範先生クラスの文章力をお持ちの人物なのだろうなぁ~。光栄だなぁ〜( ´ ▽ ` )ノ

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小説講座用に、文章技法をもう一度学び直し、整理してる最中なので、こういうのはありがたいです。ユニバーサル日本語、もっと自分なりに整理し、体系化してみますかね。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

参考note:
「ラノベ作家の文章なんか中学生でも書ける」は正確な分析か?

「ぼくはきみがすきだ」だけで説明する作文攻略法

■追記■

安田峰俊氏の『みんなのユニバーサル文章術 今すぐ役に立つ「最強」の日本語ライティングの世界』が発売されましたね。

良い本なので、ぜひご購入をm(_ _)m

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ