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新聞は15年後に消滅する?

◉新聞なんかいらない、肝心なことが載ってない──だから消滅してしまえ! ……とは思いませんが。歴史的な役割を終えつつあるのは間違いないでしょうね。

【1年で200万部減「新聞離れ」は止まらず 「一般紙」は15年後に消える勢い】Yahoo!ニュース

日本新聞協会がこのほど公表した最新データで、一般紙の総発行部数が3000万部を大きく割り込み、2800万部台まで落ち込んだことが明らかになった。この5年間で失われた部数は1000万部。平均すると、毎年200万部ずつ減っている計算だ。もし今後もこのペースが続けば、15年後に紙の新聞は日本から消えてしまう勢いだ。

日本新聞協会は2022年12月後半、同年10月時点の新聞の発行部数を公表した。それによると、スポーツ紙を除く一般紙の総発行部数は、前年に比べて約196万部(6.4%)減少の2869万4915部だった。10年前の2012年は約4372万部だったが、年々減少が続き、当時の3分の2以下の規模まで落ち込んだ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kamematsutaro/20230101-00330946
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ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■新聞の限界と可能性■

朝日新聞労働組合の副組合長が自殺するほどの、大幅減給を実施しても、部数減が収まらず。ついに交渉部数400万部を割り。押し紙が30%はあるとされるので、実際は280万部ぐらい、300万部を割ってるでしょうけれど。あくまでも噂話ですが、東京新聞はこの押し紙が50%で、実際の部数は半分だという指摘もあったりします。この押し紙に関して言えば、産経新聞などは割と早めに対処しましたが。朝日や毎日は、致命傷になりそうな。

でも、希望がないわけではないと思いますけどね。そもそも、大きく落ち込んでるのは全国紙と言われる新聞で、地域紙はそうでもないんですよね。つまり最大公約数に向けた新聞作り、限界に達しているということです。その地域に根ざした情報をいち早く、深く掘れる地方紙にはまだまだ可能性はあるということです。地方在住者にとっては冠婚葬祭などの情報はもちろん、自分の半径5 km 以内の情報が広く、しかも丁寧にないと。

そもそも日本はアメリカと比較して、新聞の種類が少なすぎるんですよね。読売・朝日・毎日・産経・日経という全国紙が巨大な部数を抱え、アメリカだと地方の日刊紙や週刊紙や、月刊紙などが大量にありますからね。部数自体を少なくとも、地域情報に密着した形式であればまだまだ生き残れるでしょうし。逆に言えば全国紙と呼ばれるような朝刊は、読売新聞以外は滅びてしまう可能性はあるでしょうね。朝日も毎日もブロック紙になるでしょう。

■成功体験が邪魔をする■

新聞は、生き残るとしたら販売店の切り捨てでしょうね。そもそも日本の宅配制度という特殊なシステムが、新聞の部数をここまで巨大にし、延命させてきたわけですから。逆に言えばそれで大成功したからこそ、日本の新聞協会は宅配制度というシステムを捨てられずに、ジリ貧に陥ってるという面があります。これは自分がいる出版業界もそうで。出版社・取次会社・書店という強固なシステムによって、独占的=排他的ポジションを築いたわけで。

新聞を刷っても、宅配システムに乗れなければ、読者の元には届きませんからね。アメリカにも、宅配システム自体はあります。映画などを見ていても新聞を配る少年の姿は出ていきますしね。かのDisney兄弟も、カンザスの新聞社で新聞配達のアルバイトをやって、大変な思いをしたことを、よく口にしていましたし。新聞配達システムはかなり大規模かつ広範なもので、それで新聞奨学生などというシステムができるほどには、浸透しています。

山田五郎さんが指摘されていましたが、日本はEDWINやビッグジョンやBOBSONなどの、ジーンズメーカーが大きく成長し、ある時期は世界的なブランドに育ちましたが。現在衰退してしまっているのは何も、ユニクロなどの安いジーンズが原因ではなく。ジーンズ専門店という流通経路によって成功を収めたため、このシステムから脱却できずに、時代の変化に対応できなかったというのが大きいそうです。大艦巨砲主義から空母機動隊への、戦術の転換を思わせる話ですね。

■アーカイブ型へのシフト■

インターネットによって個人が情報を発信し、それが宅配制度に支えられた新聞よりも、はるかに広範囲に拡散できる時代ですから。スピードにおいても、新聞は速報性でインターネットに負けていますから。新聞が生き残るためには、電子ペーパーの大型タブレットを購読者に無料で配り、電子中心に切り替えるしかないでしょうけれど。過去の成功体験にとらわれた経営陣などは、その転換は難しいでしょうね。

出版業界も、印刷書籍にこだわって電子書籍を毛嫌いする層が、一定数いますから。報道の形式自体も変えていく形で、例えば TwitterやFacebookなどのSNSで、最初に情報を出し、より深い情報や加筆修正した情報などを、自社の公式サイトで有料で見るようにする。どういう形で情報の発信とアーカイブを大幅に変えて行かないと駄目でしょうけれど。昔ながらの新聞の形式にこだわる人達には、そんな大改革はまず無理でしょう。

でも、YouTubeがこれほどまでに影響力を持つようになったかといえば。何時でも好きな時に自分のペースで、情報を得られる巨大なビデオライブラリーと化したからですからね。新聞の情報もそれと同じで、速報部隊と熟読部隊を分けて、運営する必要がある。春風亭柳昇師匠がおっしゃっていた、呼び屋と聞かせ屋の役割分担が、コレからは必要でしょう。そして過去の情報はデータベースとして、一部無料で本文は有料で販売して行く形に、商売の形式を変えていく。

■金を払う価値ある記事■

漫画の場合もそうですが。週刊少年誌形式の、話を引っ張って引っ張って形式の、ストーリードラマは確かに、爆発力があって短期的に大きく売れます。しかし長期的に見ると、『ブラックジャック』や『美味しんぼ』の一話完結のレギュラードラマの方が長く愛され、またいろんな形での再利用(再編集本やアンソロジー本など)で、長く利益を生み出します。新聞記事も同じで、警察発表を引き写しただけの横並び記事では、情報としての価値がありません。

独自の情報源、独自の取材をして、独自の記事を作る。そうなって初めて、お金を払う価値のある情報になり得るわけですから。逆に言えば配信記事のようなものに人員をかけるのではなく。取材チームをちゃんと組んで、長期的に取材して、レベルの高い記事を書く。『プロメテウスの罠』のような、功名心に駆られたような記事ではなく。もっとも現在の新聞にそのような記事づくりのノウハウや、金銭的な余裕があるかどうかはわかりませんが。

残念ながら、めったに通らない住民監査請求が通り、不正はないと衆議院会館で大弁護団が記者会見をしていた一般社団法人の疑惑が、濃度を増したのに一切報じない新聞には、未来はないと個人的には思っていますけれどね。怪しげなハッシュタグ祭りは報じるくせに。明日、暇空茜氏の住民監査請求の報告が、東京都から一般にも公開されますが。その後で大手マスコミがどのような態度を示すかによって、この国のマスコミが滅びるべくして滅びるのか、生き延びるべくして生き延びるのか、はっきりするでしょう。

■建設的な提案も少し■

雑誌の世界ではかつて、格闘技ゲームに乗って『格闘技通信』と『ゴング格闘技』という二つの月刊雑誌が登場し。ブームになって両雑誌とも月2回刊行になりました。しかしブームの陰りから、ゴング格闘技は月刊誌に戻ることを余儀なくされました。その時、編集部は速報生では格闘技通信に負けるため、インタビュー記事などで長いページをとる、特集主義にシフトしました。格闘技通信は2010年に休刊となり。ゴング格闘技は休刊と復活を繰り返しつつも、隔月刊誌として生き残っています。

実はこの話、別のところでも話をしていまして。ずいぶん昔、Mac系パソコン誌のMac People誌とMacFan誌の両方を批判したことがあります。Mac People誌は、関係者らしき人物が悪口を言うなと批判してきて。Mac Fan誌は編集長が、ぜひ詳しく話を聞きたいと、連絡してきました。なので、この格闘雑誌の戦略の話をしました。それから十年以上たち、MacFan誌は特集主義に切り替え、今も生き残っていますが、MacPeople誌は……。

新聞社もこのような特集主義に切り替えられれば、販売方法を大きく切り替えられれば。この苦言を悪口と捉えるか、それは自分の預かり知らぬところ。アドバイスをしてもそれを受け入れられない人はいますからね。自分が編集者を辞めたのも、提案を聞き入れてくれる上司に、あまり恵まれなかったというのが大きいです。自分の言ってることが正しいかどうかは、自分で証明するしかありませんからね。なのでこの場末のnoteの提言が、新聞社に届くなんてこれっぽっちも思っていません。

ただ、十年後に読んだとき、答え合わせになるかどうかの、備忘録として残しておきます。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ