作家を目指す人へ:才能を確認する方法
◉昨年、京アニ放火事件に絡めた書いた、こちら↓のnoteですが。一度はnote機能の不具合でデータが90%以上飛んでしまったのですが……note事務局のおかげで、サルベージに成功しました。しかし、2万2000文字を超える長大な内容なので、内容も雑多。なので、これから小説家や漫画家やライターを目指す人のために、有用だと思う部分を抜き出して、加筆修正したモノを、別noteとして分離独立させておきますね。
作家になりたい──で、いきなり会社や学校を辞めちゃう人間がいますが。自分はそういう背水の陣を敷くのは、一種の逃げだと思っています。もしもあなたが〝自分には何の才能もないという現実を見たくない症候群〟でないなら、以下のことを試してみる価値はあるでしょう。その上での選択は、さらに多様にありますから。ちと辛口ですが、底に流れる愛を感じていただければ、幸いですm(_ _)m
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①まず試し酒をしよう
自分の好きな落語の演目に『試し酒』があります。大酒呑みの久蔵、五升の酒が呑めるかと賭けを煽られ、ちょっと考えがあると席を外し、戻ってきてから見事に五升を可杯で呑み干すという内容。なぜ席を外したのかと問われた久蔵、「五升なんて呑めるかわからなかったので、表の酒屋で試しに呑んでみた」というオチ。合計で十升、つまり一斗も呑んでいたんですね。
どれだけ大酒呑みなんだという笑い話。自分は桂文字助師匠の高座が大好きでした。下に古今亭志ん朝師匠のYouTubeのリンクを貼っておきますね。本気で小説家になりたいのであれば、腕試しで応募できる小説の賞は、意外とあります。そう言えば、今は熊本の実家に帰った自分の漫画原作の相方の深町麗市なども、ちょっとした小説の賞で数十万の賞金をもらっていましたっけ。
そういう公募の賞とは相性が悪い、特殊なジャンルの作品を書きたいのであれば、今ならば『小説家になろう』や『カクヨム』に『アルファポリス』など、個人で作品を発表できる小説家用のサイトは、いくつかあります。そのようなサイトで、なぜ試し酒をしないのか? なぜ京都アニメーションのようなメジャーなところ=投稿作もレベルが高く評価をもらいづらい賞に、いきなり応募するのか? そう思います。もちろん若者はそういうチャレンジ精神が必要ですが、ある程度の年齢なら、慎重さも同じぐらい必要でしょう。
個人的には、桂文字助師匠の試し酒も、絶品でした。
②SNSに作品をアップしてみる
まずは、SNSに作品を投稿してみて、自分の評価を受け止めましょう。漫画の場合は、4コマ漫画や1ページ漫画、あるいは4ページ以内のショート漫画なら、Twitterと相性がいいです。教え子のカメントツ先生は、4ページ漫画推しです。さらに近年は30ページぐらいの読み切り作品を、連投機能を利用してアップする漫画家も多いですから。ある程度の長さのストーリー作品でも、Twitterは相性が良いです。個人的には4の倍数のページ数、つまり4・8・12・16・20・24・28ページなどがオススメです。連投するなら、最初のツイートはキャッチーな扉ページだけを載せるのが、集客のコツです。
それよりも長めの作品や連作ならば、pixivやnote、あるいはFacebookが、より適しているでしょう。拡散力はFacebookやpixiv、使い勝手はnoteでしょうか。特にnoteやpixivの場合は、じっくりと読んでもらいたいエッセイや小説などにも、向いています。有料での課金や投げ銭やサポート制度もあり、一部は無料公開して後半は有料とか、柔軟に設定できますから。他のSNSへの宣伝もやりやすい、よくできたシステムだと思いますよと、褒めておきます。
プロが商業目的で使うにも、noteは良いシステムだと思います。去年11月下旬からnoteに本腰入れだしたら、一ヶ月で1万円ほどの売上がありました。少額ですが数年も続けていけば、ちょっとした副業になりそうです。noteはときどき、データが飛ぶという大問題もありますが、復活させる方法もないこともないですから。なにしろこのnoteの元ネタも、一度は90%以上の文章が飛びましたが、こうやって復活できました。宣伝と集客はTwitter・販売と集金はnoteと、組み合わせるのがヨサゲです。
③物書きでもTwitterで試し酒
小説の投稿には、あまり向かないTwitterですが、それも使い方次第です。140文字の短文で読者を獲得できない人間が、長編小説なら才能を発揮──なんてことは、ほぼありません。基礎本題ができず応用問題が得意な人は、いないのと同じで。140文字でも万単位の人間に訴求する、面白いつぶやきは書けますし。Twitter なら複数のツイートを連続させる機能もありますから、ショート・ショートぐらいの文字量は十分にアップできます。
ただ個人的にはTwitter小説──100文字小説──には、やや懐疑的です。小説には最低でも200文字から500文字は必要と思うので。高い力量があれば100文字小説はかけますが、100文字小説を書いて実力が上がるかといえば、因果関係が逆でしょう。エッセイやコラムを書いてみたいライター志望の人、小説を書いてみたい人、どちらにしても文章力は必須ですから。SNSで文章修行はありだと思いますよ? もちろん変なことを書けば、批判や炎上もありますが……。炎上して逃亡しても良いように、最初は仮のアカウントのつもりで、ハンドルネームをつけましょうか。
小説はだいたい、単行本1冊で10万文字前後あります。毎週2000文字を年間52週アップできれば、1冊の単行本になるぐらいの分量になります。それぐらいなら、サラリーマンや自営業続けながらでも、できる分量ですよね? だいたい1日300文字程度ですから。2ツイート280文字ちょっとの積み重ねが、一年で1冊の本になるということです。会社や学校を辞める覚悟をするよりも、まずはそういう地道な努力ができるかどうか、チャレンジチャレンジ!( ´ ▽ ` )ノ
④慌てる乞食は貰いが少ない
すぐに結果を求める人がいますが、これが一番ダメ。最初は1リツイート1イイネでも、ありがたいと思わないと。反応があったのですから、無視より前進です。例えばトキワ荘プロジェクト出身で、MANZEMI講座の教え子のカメントツ先生。彼は漫画onWeb のネーム大賞で2位を獲得しましたが、どこの出版社も声をかけてくれませんでした。自分や鍋島雅治先生、佐藤秀峰先生がその才能を認めても、です。
ただ、彼にはレポート漫画にも才能を感じたので、ちょうどトキワ荘プロジェクトにレポート漫画のコンペがありまして。参加を勧めたところ、採用にはなりませんでしたが、とても面白い内容でした。ほどなく、オモコロで突撃取材レポート系の仕事を得て、それが後に小学館ゲッサンの連載に繋がりました。ゲッサンでの連載は、残念ながらサクッと打ち切られました。打ち切りの事情は知りません。でも、大きな経験値になったのは間違いないでしょう。
なにしろ、あの高橋留美子先生に、早い段階で内容は褒められましたから。才能は疑いないです。才能は相互承認制だと、自分が力説する理由でもあります。しかし『こぐまのケーキ屋さん』でブレイクするまで、実に3年を要しています。そもそも彼はデビューする前の時点でも、10000RTを超える文章ネタを、いくつもTwitterに投稿しているアルファツイッタラー。栴檀は双葉より芳し、ですね。でも、売れるかどうかはまったく別の話です。短期的な結果を求めると、自分が疲弊して辛いです。
⑤石の上にも三年
逆説的になりますが、Twitterで100万インプレッションのバズったネタを一発書くよりも、商業プロになることはハードルが高い、ということです。いわんや売れっ子のプロになるなんて、もっとハードルが高いです。意識的に創作のためにTwitterを3年やって、フォロワー引くフォローの数値が500人を超えないのであれば、魅力がある文章や作品がまだ書けていないという、ひとつの指標です。フォローしまくってフォロワー増やすのは無意味な上げ底ですから、自然増加が前提ですが。現実を認め、現実を受け入れましょう。
また作品をアップしてバズっても、それが数1000RTの単発評価で終わってしまっては、意味がありません。それよりは50や100のRTやイイネをもらえる、地道な評価を受けるツイートを、長期にわたって継続することが大事。継続は力なり、です。人間って勢いで何かをババッとやれても、地道にコツコツ積み上げ継続するのは難しいですから。でも商業プロに求められるのは、そういう地道な継続力です。マンガ家の総数は、CLIP STUDIOのセルシス社の推計で、3000人から6000人です。一方、医師免許を持つ人は全国に約34万人です。一発当てたいなら、宝くじを買ったほうがいいでしょう。
一発当ててさっさと引退して、後は税金の安いシンガポールに移住しますとか、そんなことができると思う人は、こんなnote読む必要はないですから。ホリエモンやひろゆき氏の本を読む方が、得る物が大きいでしょう。がんばってください、応援しています。講談師の神田松之丞改め伯山氏が言うところの、〝キングコング西野氏と同じジャンルの人〟でしょうから。彼らのような才能がないなら、継続力が唯一にして最大の武器です。でも、それだけでは不足です。
⑥継続の次に大事なこと
それは、投稿時間を一定させること。短文を毎日、複数個投稿するならともかく、ある程度内容のある作品(漫画でも小説でも)は他に仕事をしながらでは、週一回が限度だという人も多いでしょう。そういう時に大事なのは、決まった曜日のだいたい決まった時間にアップするという、定期性です。なんだぁ……と思うかもしれませんが、人間はいつアップされるか分からない投稿を、ちょくちょく確認するほど、ヒマでも勤勉ではありませんから。
しかし、例えば毎週日曜日の15時に、必ず作品がアップされていると習慣づければ、読者はそれほど不満を持たないものです。アップ時間がわからないゲリラ的な週3回アップよりも、定期的な週1回アップです。それを1年間続けてみましょう。いかに商業プロが大変か、実感も得られるでしょう。というか、それができないのに、何年も仕事を続ける商業プロに、なれると思いますか? これはどんな商売にも通じますが。締切に間に合わせるのが大事。
追記として、GoogleのChromeブラウザを使用すると、ツイートの予約投稿が可能です。自分も最近まで知らなくて、友人に教えられて知ったのですが。これなら、事前に書きためて定期的にアップが可能でしょう。また、noteは有料版のプレミアム会員だと、予約投稿が可能です。月500円ですから、自分は申し込みました。かなり重宝していますが、年間6000円が高いか安いかは、各人で判断をしてください。そんな費用ぐらいは投げ銭で回収してやるという、気概も大事かと。金を払ってもらえる、というありがたさを知ることもできます。
⑦アンチは出現すると割り切る
SNSで発信すれば、必ずアンチが出現します。罵声や冷笑を浴びせかけられ、それで心が折れる人もいるでしょう。でも、そんな心が折れそうな人は、YouTubeの人気動画を見てください。例えばピコ太郎氏の手洗いを推奨するPPAPの第二弾動画とか、ネタの第1弾とは異なり社会貢献する内容で、1318万回も再生され23万のサムアップ👍を得ていますが、同時に1.4万ものサムダウン👎をもらっています。
比率的にはファンの5.45%のアンチがわいた計算になります。SNSも同じで、最低でも5%ぐらいのアンチはわくものと、割り切りが必要です。場合によっては、20%のアンチに増えるかもしれませんが。ただし数が少なくても、京都アニメーション放火殺人事件のような例もあるので、個人情報が漏れるような不用意な投稿は、できるだけ避けるべきです。これは処世術としてのアドバイスですが。
Twitterなど複数アカウントも、目的を分ければルール上問題なし。自宅周辺の写真は絶対にあげない、自宅周辺の出来事は言及しない。それだけでも、かなぁ〜り違います。Twitterとか見てると、そこら辺の情報管理が甘すぎる人が多くて、ちょっと驚きますけれど。これは自分も気を付けないと。これは本名推奨のFacebookであっても、本名ではなくペンネーム推奨しますね、自分は。ストーカーは執念を燃やしますので。
⑧捨てる神あれば拾う神あり
がも…ゲフンゲフン、大場つぐみ原作・小畑健作画のヒット作『バクマン。』の中でも、読者の2割に支持されればヒット作になると書かれていましたが。プロであっても、万人に受ける必要はありません。愛の反義語は憎しみではなく無関心──これはマザー・テレサの言葉。彼女自身も生前はもちろん、没後も毀誉褒貶はある人ですが、そこは置いておいて。この言葉の意味するところは大きいです。憎しみは愛の別の形。
「アンチ巨人も巨人ファン」という言葉が、昭和の時代にはありました。これも真理。本当に好きな球団があれば、他球団にはライバル関係以上の関心は持たないモノ。それよりも辛いのは、無関心です。8割に嫌われてもいい、ぐらいの意識は必要でしょう。自分もTwitterの連投を、幾つかを抜いてTogetterにまとめられて、炎上した(正確にはさせられた。抜いたツイートは炎上後にコッソリ入れ直し)ことがありましたっけ。そのことを問い詰めたら、あれこれ言い訳をしていましたが。
ところがその後、講座は受講生もグンと増え1.5倍に、フォロワーも増え、よくぞ言ってくれたと褒めてくれる同業者、著書の執筆で協力をしてくださるベテラン作家との縁も広がりました。まさに、捨てる神あれば拾う神あり、です。セコいマネをする人は、無意識にアンチを増やしていたんだと、実感もしました。嫌いな相手の悪口を言うのは、宣伝と同じなんですね。嫌いなら話題にもしないのが、もっとも効果的。もちろんだからといって、奇をてらったり炎上商法は論外ですけどね。賛否は分かれて80%に嫌われても、2割に支持される濃い内容があってこその、炎上です。
⑨数より質を重視すべき
最近よく「作家として売れたかったらTwitterのフォロワー数〇人は必要」云々の言説を見かけます。自分はコレには基本的に賛同しません。数を増やすことが自己目的化しますし、それでは本末転倒。SNSを利用することと、フォロワーを増やすことは同義ではありません。だいたい、作家はアイドルじゃありませんので。テレビなどで顔を売ってる人には数万のフォロワーがすぐにつきますが、それはライトなフォロワーであって、ファンと呼べる濃さはありません。
例えば漫画家だと、ゆうきまさみ先生や藤島康介先生クラスで10数万フォロワー。貞本義行先生でも9万人台、二ノ宮知子先生でも8万人台です。多くの中堅どころの作家はだいたい、3000人から3万人の間に収まっており、そもそもフォロワーが売上と必ずしも一致しません。InstagramやYouTubeの漫画動画の、気軽にフォローし交流もライトなユーザーとも、Twitterのユーザーは質が違います。永久保貴一先生は、1万にも届かないフォロワーですが、オーディオブックの再発売のクラウドファンディングでは、700万円を集めています。これが、ファンの濃さです。
それはテレビの視聴者とラジオのリスナーとの差に似ています。テレビの視聴者は多いけれど薄い、ラジオのリスナーは少ないけれど濃いと、伊集院光さんもよく語っておられますが。その意味では、noteのユーザーも200人いないのに、お金を払うユーザーが多いので、自分も驚いています。本格的に力を入れだしたのは2020年11月20日の『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の感想からなのですが。課金する人が思った以上に多く、驚きました。個人的な感触ですが、Twitterのフォロワーの5倍から10敗の価値があると思いますよ?
⑩フォロワー増加を自己目的化しない・させない
そもそも、TwitterもFacebookも相互フォローと書いてる人をフォローしまくれば、自然にフォロワー数は増えますから。フォロワー数マイナスフォロー数が、その人の本当の訴求力です。別noteで疑義を呈した、フォロワー数が自慢だった某人物のように、フォロワー数を増やすために工作をしていた疑いもあります。某政党の指示を受けてたかは知りませんが(イーロン・マスクCEOによる閲覧数表示で、何万人もフォロワーがいながら、閲覧数が数千で、金で買ったフォロワー疑惑の人物が続出していますね)。
逆に言えば、フォロー数は10人なのにフォロワー数が200人とか、両者に大きく差がある人の方が、フォロワー1万4200だけどフォロー1万の人物よりも、深かったり鋭かったりする意見を、書いていたりします。例えばMANZEMI講座のある教え子は、Twitterでのフォロワー数がまだ数百人の段階で、弓月光先生や山本貴嗣先生といったベテランの漫画家さんに、アップしていた作品がリツイートされました。
はたして数ヶ月後にはフォロワー数は8000人を超え、自分が10年間かけて積み重ねたフォロワー数をさっさと抜いていきました。才能の差ですね。トホホ(←これも昭和的表現だなぁ)。才能というのは相互承認制だと、自分は思っています。全国にたった3000人から6000人しかいないプロの漫画家100人に認められるのは、相互フォロー歓迎の1万人のフォロワーより、ずっとずっと価値があります。ただし、それがヒット作とか収入につながるかといえば、それは違います。そこは、覚悟しておく必要はあるでしょう。
■まとめと追記として■
これだけでも当note、7000文字オーバー8000文字弱ですが、ある種の人には多少は有効でしょう。念を押しますが、これは商業プロになるための方法論ではなく、自分の適性を測定する手法です。その結果、自分に才能と継続力という適性があれば商業プロになればいいでしょう。同時に、才能と継続力があっても、商業プロにならないという選択もありです。趣味で続けるのも、ひとつの選択肢ですあら。
才能あってプロになったけれど、ヒット作が出て行き詰まって廃業して、行方不明や音信不通の作家なんて、なんぼもいます。アマチュアとして死ぬまで楽しむ選択肢がダメだとか、そんなことないです。自分と同世代の鷺沢萠先生のように、すごい才能で学生デビューし、でも自分が10年と2カ月のサラリーマン生活を経て、ようやっとデビューした年に、自殺された例もあります。華やかに見えても、作家はある部分は修羅の道です。
下手の横好きで一生楽しむのもまた、豊かな人生ではないでしょうか? 尾張藩の中級武士だった朝日文左衛門重章は、自分の楽しみとして、誰にも見せるわけでもない膨大な日記を書き綴りました。結果、その日記『鸚鵡老中記』は元禄時代前後の生々しい本音の記録として、たいへん貴重な資料になっています。そういう価値だって、書く行為には生まれるのです。肩の力を抜き、楽しみましょう。まずは、おもしろい落語でも聞いて。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ