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映画感想:映画 えんとつ町のプペル

◉マルチな才能で活躍の、お笑いコンビキングコングの西野亮廣氏が手がけた絵本を、映画化したアニメーション作品。制作のSTUDIO4℃の作画能力は高く、映像美も動きも良いです。第44回日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞にノミネートされた話題作なんですが……ががががが。信者と呼ばれるファン以外には、かなりボロクソ。西野氏と仲の良い岡田斗司夫さんとかにも「感性が鈍るので見ない」とまで言われる始末。

映画 えんとつ町のプペル

お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が手がけた絵本を映画化したアニメーション。煙突だらけで空全体を黒い煙に覆われた“えんとつ町”を舞台に、煙の向こうには“星”があると信じる少年ルビッチと、ゴミから生まれたゴミ人間のプペルが起こす奇跡の物語を紡ぐ。『鉄コン筋クリート』や『海獣の子供』などのSTUDIO4℃がアニメーション制作を担当し、原作者である西野自身が製作総指揮と脚本を務める。

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大規模な宣伝手法だけでなく、西野氏のサロンの囲い込み手法も含めて、映画の評価から離れた部分での批判も多いですね。「オリエンタルラジオ中田氏と同じカテゴリーの人」とか「捕まっていないだけの詐欺師」とか、実に的か…批判もまま見受けられます。なので自分はあくまでも漫画原作者や、他人に作話を教える立場として、純粋に作品の評価を。そのために、幾つかの思想的な部分は、補助線として入れますが。

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■致命的問題■

絵も動きも素晴らしいですが。まず、シナリオ的にダメなのが、この世界の全体主義とか監視社会とか、そういった社会の怖さとかが、伝わってこないんですよね。だから、プペルの存在が当局にバレてしまったら……という切迫感が、ほとんどない。なので、緊張感が不足して、主人公が追い込まれた感じがしないんですよね。コレが絵本なら、絵とわずかな文章で、読者は想像力を刺激され説得されちゃうんですが。

こういう、本人達は全体主義とか監視社会とかにものすご〜く切迫感を表明してるのに、コッチにはそれが伝わってこない、上滑り感。これって映画版の『図書館戦争』とかにも感じましたが。ファンの方、すいませんねm(_ _)m 個人の感想です。でも、こういう戦前への過剰な恐怖心煽りってのは、全学連や全共闘世代の老人達の感覚であって、70年代以降生まれの人間に実感が在るはずもなく。

・秘密保護法→飲み屋で政治家の話しただけで逮捕!
・安保法案→戦争法案! 徴兵制復活!
・テロ等準備罪→共謀罪! 現代の治安維持法!
・国旗毀損罪→お子様ランチの旗を捨てたら逮捕!

けっきょく、コレと同じでしょ? フィクションとしてのそういう全体主義とか監視社会とか、素材にするのは構いませんが、自分の実感がないものを、素材にしても上滑りするだけ。これが深作欣二監督や石ノ森章太郎先生とか、戦前戦中に教育を受けた世代なら、実感があるわけで。藤子不二雄Ⓐ先生が『少年時代』を描けたのも、富山出身の昭和一桁ゆえ。それを、実感がない世代が形だけマネしても厳しいでしょう。

■まずキャラを立てる意味■

本作、STUDIO4℃の製作だから、動きは抜群に良いです。でも、そのためにムダにダンスシーンを長く取って、これ見よがしに印象づけたり。そんなシーンに割くより、もっと大事な部分があるでしょうに。それは、トロッコでの疾走シーンも同じです。そもそもこういうシーンは、キャラクターに思い入れができない時点でいくら見せてもビジュアル的な驚き──びっくり箱──にしかならないんですよ。

例えば、クレヨンしんちゃんの『オトナ帝国の逆襲』だと、キャラクターに思い入れができていれば、しんちゃんがただ走るだけのシーンに手に汗握り、全力で応援しちゃうでしょ? ロッキーがただ走る、それだけでも自分たちは感動できる。下手すればボクシングシーンより。『ちはやふる』の、広瀬すず演じる主人公の疾走シーン……は、カメラワークがイマイチでしたが。いずれにしろ、コレは作話の基本の基本です。

で、そんなのはSTUDIO4℃ほどの制作会社ならば百も承知、二百も合点なんですよ。たぶんに、西野氏の思惑とか口出しとかで、原作の絵本を活かしたアニメ作りになったから、そういうアラを埋められなかった可能性を、自分は感じます。知らんけど。信者って、アニメの完成度より原作の忠実度を重視する、近視眼ですから。ファンの方、すいませんねm(_ _)m あくまでも一般論ですから。

■毒がないと感動もない■

個人的には、もしプペルの住む街が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や中華人民共和国、あるいはキューバのメタファーで、国民から情報を遮断して全体主義とか監視社会とかがキツい国のメタファーだったら、それはそれで同時代性が有って、面白いかもしれませんけどね。北朝鮮の怪獣映画である『プルガサリ』が、娯楽作品に見せかけて実は北朝鮮や金日成を批判していたように。でも、本作はそうじゃない。

自然保護とか環境破壊とか格差社会とか全体主義とか監視社会とか、キングコング西野氏に、それらを身近に感じ切迫感があるかと言えば、そんなこともないでしょう。過去の童話や小説や絵本や漫画やアニメや映画……で描かれてきた〝ヨサゲな価値観〟を寄せ集めてツギハギし、適度に配置した感じになってしまってる。結果的に、作家性が滲むかと言えば、そんなこともなく。

ここら辺は、同じく日本アカデミー賞にノミネートされた『鬼滅の刃 無限列車篇』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『ジョゼと虎と魚たち』と比較しても稀薄。比較的商売っ気が強い『スタンド・バイ・ミードラえもん2』と比較しても、弱かったです。受けそうな要素・売れそうな要素を上手く足し算した結果、良くできた作品になってるのですが。ジャンプの新人漫画賞なら「達者ですが、小さくまとまっています」の評価を受けるタイプです。スケール感がない。

まぁ、マイナーなnoteですので、「オマエなんか西野さんの100分の1も売れてねぇのに批判するなwww」とか、頭も悪ゥ〜いコメントが押し寄せませんように。ファンの方、すいませんねm(_ _)m
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