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ニッチを狙う・王道を狙う・虻蜂取らず

Twitterで話題になっていた意見ですが。いろんな分野の核心を突いた、重要な意見です。ちょっと面白いので、有料記事で3000文字ほど書いてみました。ほぼ半が無料で読めます興味がない人にはどうでもいい記事です(ちょっと書き足しました)。

@marei_de_ponさんのツイート:https://twitter.com/marei_de_pon/status/1100704192665022464?s=09

そして、解説意見として良かったのがコレ。
@Fuduki_Aoiさんのツイート:https://twitter.com/Fuduki_Aoi/status/1100794719569735681?s=09

では以下考察。

■千葉ロッテマリーンズと福岡ダイエーホークスの失敗■

このTweetを読んで思いだしたのが、千葉ロッテマリーンズの失敗。川崎球場から千葉マリンスタジアムに移転するのを期に、ロッテオリオンズから改名して、ユニフォームも変えました。不人気球団だったオリオンズから脱却するため、外部のアドバイザーの声を取り入れ、女性ファンを増やそうとしました。

男性ファンばかりのプロ野球に、女性がくれば観客動員数は2倍! そんなアドバイスに従って、ピンク色のユニフォームにしました。女性が好きな色は調査によればピンクだから。でも、女性ファンは増えませんでした。当たり前です。後に、バレンタイン監督が就任すると、戦う男のユニフォームではないと、黒基調のモノに変えます。

ホークスも、球団買収によって大阪から福岡に移転するにあたって、新ユニフォームのデザインを、世界的なデザイナーの三宅一生に依頼します。出来上がったストライプ模様のデザインは凡庸で、鷹の目玉がついたヘルメットに至っては、ガッチャマンかよと物笑いの種。子供に親しみやすいデザインを目指したのでしょう。

後に、本職のデザイナーではない球団のスタッフが意見を出し合って、これまた黒基調のモノに変えられますが、こちらはかっこいいと大人気。世界的なデザイナーでも、野球ファンがかっこいいと思うデザインができていなかった訳です。漫画も同じで、数の多い大衆に向けても、大衆にもマニアにも届かないことになりがち。

■マーケティングとアンケートの限界■


靴を履かない民族を見た靴のセールスマンが、これでは靴が売れないと嘆くのがネガティブな思考で、靴を売りつけられる人間がこんなにいるというのがポジティブ思考、なんて例え話がマーケットリサーチを力説する連中の間では好まれますが。そういうニッチは、狙って見つけられるものなのか、自分には疑問です。

Appleの創業者スティーブ・ジョブスが、「ベルが電話を発明したとき、マーケットリサーチしたか?」とよく例え話にしていました。それがどんな需要になるかなんて、事前にわかるはずもありません。アインシュタインも、相対性理論がカーナビに使えるなんて思ってもいなかったでしょう。ところがマーケッターはアンケートの重要性を力説します。

出版業界で言えば、Hanakoという雑誌が登場したとき、多くの女性が「こんな雑誌を待ってた!」と喝采を送りました。でも、Hanakoが世に出る前に、女性に何万人アンケートを取っても、Hanakoのような雑誌は生まれないでしょう。それで出るなら、マガジンハウス以外からとっくに世に出ていたでしょう。

大衆というのは、「あなたが欲しかったのは、これですよね?」と、具体的な形で現物を差し出されないと、心の奥にあるモヤモヤとした欲求を、自覚することはできません。そこをいち早く気づき、形にするのが作家や編集者の才覚です。マーケットリサーチやアンケートは、あくまでも参考意見(自分も軽視はしていませんので)。

■あれば便利はなくても良い■

アンケートといえば逆に、10年以上前に「ケータイにほしい機能は?」とアンケートを取ると、必ずトップに音楽再生機能でした。ところが、SONYがウォークマンの機能をつけた携帯電話を発売しても、さして売れませんでした。いくら再生機能があっても、バッテリーの駆動時間や、楽曲の管理機能、操作性の良さがないと、売れる製品にはならないのです。

例えば、消しゴム付き鉛筆。あれば便利ですよね? でも、鉛筆としての機能はともかく、消しゴムが消しにくいため、けっきょくは普通の鉛筆と消しゴムが、無難になる。緊急的にはあればうれしいですが、日常には使いづらい。Appleは、iPodの機能と操作性の延長線上に、iPhoneを打ち出したから成功したわけです。

このエピソードは、アンケートが必ずしも正しいわけではない、よい実例です。大衆はしょせん大衆。これは大衆をバカにしてるのではなく、ただの現実。なにか新機能がほしいかと聞かれたら、既にある機能の中から「音楽再生機能!」と答えますが、実際に買うかといえば、そんなこともなく。マーケットリサーチが〜とかほざく人間を、自分が嫌う理由です。

だからこそ、作品作りというのは自分が何が好きか、何を描きたいかをベースに置くべき。そこに大衆はいても需要はないことが多いので。その上で、その作品と需要のマッチングはあるのか、あるとしてどれぐらいの需要で、それは道楽でやるのか商売としてやるのか、考えるのはありですが。

■ホリエモンの耐えられない軽さ■

かつてホリエモンが、寿司の修行に10年かけるのはバカバカしい、専門学校なら数カ月で教えてくれると語って、物議を醸しました。自分は、ホリエモンのこういう部分が嫌いです。一年で身につけた技術なんて、一年で追いつかれます。追いつかれず引き離すには、並外れた才能か努力、どっちかが必要。なら、修行場所は関係ないですが。それは議論の前提が別。

ホリエモンはたぶん、とっとと技術を収めたら、海外の高級住宅街とかで出店する独立心とか、リサーチ能力とか、マーケティングが大事と思っていそう。そこは否定しませんが、日本人所寿司職人がいなくて、健康に関心のある富裕層が多く、そんな好条件の立地を、素人がすぐ見つけられますか?

大規模寿司チェーン店がとっくにリサーチしてると考えられませんか? ホリエモンが言ってるのは、寿司の天才なら可能かもしれないって特殊な話を、一般化しちゃってるだけ。逆にですよ、自分なら回転寿司のチェーン店ができてそこそこ以上に繁盛している地域に、銀座の名店で10年以上修行した人間が店を出したほうが、確実に客を奪えるなと思いますが……。

靴を履かない民族に靴を売るのと比較して、靴を履いてる民族に、お値段は高くても履き心地が最高の靴や、高機能の靴、耐久性が高い靴を売るほうが、堅実ではありませんか? いいかげん、こういう薄っぺらいマーケティングに、ノーを言うべき時期です(ちゃんとしたマーケティング戦略を否定はしませんけどね)。

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