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出版市場の販売金額が過去最高

◉ずっと右肩下がりだった出版業界は一昨年、1995年以来の売り上げ記録更新を達成したと、驚いていたのですが。さらに10.3%増加の6759億円を達成したようです。景気がいい話ですね、作家の側はあまり実感していませんが。多分これは、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』や『進撃の巨人』というビッグタイトルを思っている出版社限定の、話ではないかと思います。漫画コンテンツを持っていない会社は、きついと思いますよ?

【出版市場の4割、コミックに 販売金額が過去最高】東京新聞

 紙の本と電子書籍を合わせたコミックの昨年の推定販売金額が、前年比10・3%増の6759億円と2年連続で過去最高を更新したことが25日、出版科学研究所の調べで分かった。国内の出版市場全体に占めるコミックのシェアは40・4%と初めて4割を超えた。
 「呪術廻戦」や「東京卍リベンジャーズ」といった人気作がけん引したほか、スマートフォンで縦方向にスクロールして読む、デジタルの縦読み漫画が、新規読者を掘り起こした。

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、本のイラストです。

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■作家側の実感■

漫画が、雑誌も単行本もある意味で全盛期であった1995年前後、出版社の編集であった自分のを実感として、数字的にはこれほど大きなプラスがあったにも関わらず、作家の側にはほとんど還元されてないなというのが、正直なところでしょう。まぁ、儲かっている人は、儲かっていると声高に言いふらしたりはしませんけれど。しかしこの2年連続の売上増は間違いなく、電子書籍が生み出したもの。

現在の出版社の経営者はともかく、サラリーマンからちょっと広げて役員になったクラスの人たちは、紙の本が好きすぎて電子書籍を軽視していた。それどころか敵視していた人が多かったのは事実です。自分も、図書館や本屋は大好きで、それが高じて編集者になった人間ですからね。その気持ちは百も承知です。時々、ツイッターでもいかに紙の本が素晴らしいか自分に説教してくる、釈迦に説法マンが現れますが。

■再販制度と取次■

もっと言ってしまえば、出版社・取次会社・書店の、三位一体のエコシステムは強力で、日本の出版業界ではこれが既に構築されてしまっていますから。これは大手の出版社にとっては、かなり有利なシステム。下手に電子書籍なんて新興のよくわからないものに手を出すよりも、昔ながらの方法をやってた方が安心だと言う保守的な考えが、蔓延していたわけです。ライオンだってお腹いっぱいだったら、それ以上シマウマを狩ったりはしません。

講談社の場合は、社主である野間一族の若旦那が、渋る役員らを説き伏せて(叩き潰して?)、電子書籍に力を入れてきたわけで。パソコン誌の取材で子会社のボイジャーなどを、電子書籍初期の頃から取材していましたが。その力の入れ具合や先見の明の部分など、とても興味深かったです。残念ながら日本は、プラットフォームの面でAmazonに主導権を握られてしまいましたが。ここら辺もまだまだ流動的でしょう。

■電子書籍とスマホ■

講談社の子会社の星海社なども、電子書籍よりも印刷書籍の発売を優先するなど、印刷書籍へのこだわりという名の電子書籍への蔑視が顕著でした。残念ながら、これから町の書店はどんどん潰れていくでしょう。きつい言い方をすれば、大きな書店グループ以外の小さな書店は、再販制度におまかせで本を売る努力を、ほとんどしてきませんでしたからね。いやそんなことはないと、言うでしょうけれど。手書きポップなんてどこでもやってることです。

電子書籍に関して言えば、この10年間でのスマートフォンの異常な普及が、大きいでしょうね。ある意味でも、テレビを越えたインフラになってしまっている。2011年には8.5%だったスマホの所有率は、2021年には86.9%と10倍以上。ここから電子書籍の普及を押し上げたのは、間違いないでしょうね。もうテレビどころではないですよ率。40歳以下の普及率に限って言えば、とんでもないレベルでしょうね。

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■縦スクロールの未来■

個人的にはこの記事、共同通信の配信のようですが。色々と悪意を感じますね。漫画に対する無意識の見下し、そのくせ縦スクロールは好意的に言及するとか、ちょっとおかしいですね。TwitterやFacebookを見ると、縦スクロールマンガを制作するWeb系の出版社から、とんでもないブラックな条件を提示されたとか。著作権法を無視した著作人格権の譲渡契約書に盛り込まれたとか、そんな話が日々流れてきてるんですけどね。

縦スクロールが、さもこれから世界を制するかのような物言いをする人にも、技術をよく分からず受け入れで物を言ってるなとしか思いませんけどね。日本のガラケーが全盛期だった頃、それがガラケーだなんて誰も自覚していませんでした。i-mode の時代は永久に続くぐらいに思っていたでしょうに。個人的には、縦スクロールは時代の徒花になる可能性が高いと思っています。

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以下は、有料です。と言っても、たいした内容ではないので、興味がある人だけどうぞ。今月は有料記事を書いてなかったので、無理矢理に。

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