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下水処理水でサツマイモ生産10倍に

◉近畿大学が、下水処理水をサツマイモ栽培の液体肥料にし、さらに栽培スペースの工夫で生産量を約10倍に増やすことに成功したとのこと。素晴らしいですね。養殖マグロやうなぎの完全養殖の研究など、水産学部の研究が目覚ましい近畿大学ですが。農業でも、興味深い研究を進めているのですね。

【下水処理水でサツマイモ、生産量10倍に 近畿大】日経新聞

下水処理水をサツマイモ栽培の液体肥料にしたり栽培スペースを工夫したりし、生産量を約10倍に増やすことに成功したと近畿大の鈴木高広教授らのチームが22日までに発表した。

処理水は大量に入手できて冬場も冷たくなりすぎず、越冬栽培にも向いている。サツマイモは微生物による発酵でメタンガスが発生することからバイオ燃料としても近年注目されている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2209J0S3A520C2000000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、

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■サツマイモの伝播ルート■

サツマイモ──地元の鹿児島県ではカライモ、つまり唐(昔の中国の王朝名ですがここでは外国全般の意味)から伝播した芋と呼びます。元々は中米南米原産の作物ですが、中国から琉球王国に伝播し、薩摩藩に伝わったとされますから。もっとも、コロンブスの新大陸到達 以前に、東南アジアに伝播していたという説もあります。何しろ、台湾のあたりから発祥したポリネシア人は、ハワイ諸島やニュージーランド、はてはイースター島まで到達した大海洋民族ですから。ペルーまでもう、あとちょっと。

中国では蕃藷(甘藷)と呼ばれ、南方から伝わった藷(イモ)としてフィリピンから伝播したとされます。蕃茘枝ばんれいしなどと同じく、蕃椒で唐辛子を、蕃茄でトマトを意味するように、蕃は生い茂るという意味と、外蕃や蕃夷などのように未開の種族や外国人の意味もありますから。そのフィリピンでは、カモテ(Camote)というスペイン語由来らしい名前で呼ばれます。ひょっとして甘藷という中国語は、スイートポテトとも栗より甘い十三里と呼ばれるサツマイモの甘みと、Camoteの音写の合成ですかね? 

痩せた土地でもよく育つ救荒作物として、青木昆陽が八代将軍吉宗に、優れた作物として栽培を上申し、江戸幕府が奨励し、江戸時代に全国に普及しました。昆陽は親しみも込めて甘藷先生と呼ばれて、竜泉寺の墓碑も甘藷先生之墓となっています。戦時中は日本人を飢えから救ったのですが、田舎者の意味で使われたりと、江戸っ子は恩知らずですね。「広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはは、いっぺんもないんで? 神戸のモンゆうたら猫一匹通さんけぇ、おどれらよう憶えとけや」ということで。

■バイオマスとして期待?■

個人的には、日本でのバイオマス生産には、国土面積の狭さや平野部の少なさ、日照量の少なさなどもあって、ちょっと疑問ではあるのですが。でも、過疎化が進む地方などで、AIやロボットをうまく利用してサツマイモを生産するならば、地産地消するエタノールを生産する原料にはなりますね。エタノール自体は人体に有害ですが、水素を運ぶ水素キャリアとして、とても有効です。あと、サツマイモもジャガイモも、バイオマス用だと食用ほど大きく成長させる必要がなく、成長率の良い初期段階で収穫してしまうと、生産効率はだいぶ良くなるそうです。そういう面からも興味深いです。

チームによると、下水には肥料に含まれる窒素やリンが過剰に含まれる一方、酸素が不足しており、そのままでは栽培が難しかった。酸素を溶かすと微生物が増加。微生物が窒素などを吸収して栽培に適切な濃度になる。

もともと、南方の作物であるサツマイモですから、東南アジアやアフリカ、インドなどでの生産に向いていますし、コレ自体が食料の面からは有効な研究なのも、間違いないですしね。また、バイオマスとしての精算ならば、それこそ食味は関係なく、澱粉の精算が多いタイプの品種改良も重要に。鹿児島だと、焼酎原料用サツマイモなんてものがあります。吟醸酒に使われる山田錦や五百万石といった、芯白が大きな米がありますが。サツマイモもコガネセンガンなど、あまり美味しくはないけれど澱粉を取るのに適した品種があります。今後は成長が早い品種など、バイオテクノロジーを駆使して研究されるでしょう。

江戸時代の琉球王国では、主食がサツマイモだったんですよね。沖縄にはサンゴ礁から形成されたため、河川がない島も多く、米の栽培にはあまり向かず。少ない天水でも育つサツマイモは、本当に貴重な作物でした。これは、鬼界カルデラや姶良カルデラの火山灰が積もったシラス台地が多く、水持ちが悪い鹿児島県でも同じ。救荒作物として、非常に優れた作物ですので。さらなる研究の進展を、期待します。ちなみに、鹿児島では煮たり蒸したりが主で、上京して初めて石焼き芋を食いましたが、甘さを引き出すには最高の調理方法ですね。

■下水処理の可能性と期待■

下水処理といえば、藻類の専門家でもある渡邉信筑波大学大学院教授が、下水処理場を使って藻を繁殖・濃縮し、原油化するという研究を、以前紹介しましたが。そういう意味では、全国の下水処理場が新たに、作物を作るだけでなく原油生産の場として、生かされるわけで。ここらへんは、下肥で作物を精算していた江戸時代に、回帰する感じですね。でも、そういう研究って、日本人は得意なんですよね。縄文時代の昔から、日本人は素材研究の化学、品種改良の生物学、絡繰り儀右衛門の昔からのロボット工学、鍼灸治療の昔から医学と、強い分野がありますから。

化学は、カーボンナノチューブの研究などが、次のノーベル賞候補ですし。触媒の研究とかも強いですし。三内丸山遺跡の栗の花粉研究から、実が大きな栗を選択的に植えていて、早くも原始農業が行われ、品種改良の萌芽があったわけで。バイオテクノロジーは畜産も林業も、やはり研究が進んでいますし。ロボット工学は工業用から、介護や農業などの人力の代替用途にも、期待されますしね。そして、日本の鍼灸は室町時代に中国からの影響を受けながらも、早い段階から読字のツボを発見し、江戸時代にはターヘルアナトミアを翻訳するなど、強いです。

もし、ノーベル賞を最初に受賞したのが北里柴三郎博士なら、日本のノーベル賞は医学生理学賞がもっと多かったでしょう。まぁ、結果的に湯川秀樹博士のおかげで、物理学を志す人間が増えて、未だに最多受賞は物理学賞ですが。農学も、ワトソンとクリックの遺伝子の発見から、バイオテクノロジーの発達と融合で、大きく発展しましたし。少子高齢化だ~日本は終わりだ~と、尾張守の人間がうるさいですが。2本は強い分野で頑張ればいいんです。50年後には日本の人口は8500万人に減るという予想もあるそうですが。それでもドイツより多いのに、何を言ってるんだと。出羽守と尾張守は、理論武装して惑わされないようにしましょう。

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