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日本の映画がダメな理由

こんなことしか語れない映画監督を〝偉才〟なんて褒めてるレベルだから。……結論としてはそれで終わりなんですが。もうちょっと具体的な数字を挙げて、こういう愚論に対する疑義と、備忘録としておきますかね。あまりにもこの手の映画人の問題点が、凝縮されている記事ですから。

「コロナ禍の前から日本の映画界は危機的状況」 偉才・深田晃司監督が本気で語る映画のこれから】デイリースポーツ

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した「淵に立つ」(2016年)、ロカルノ国際映画祭コンペティション部門正式招待作「よこがお」(2019年)などで、海外でも高い評価を受けている深田晃司監督は、新型コロナウイルスの感染拡大によって苦境に立たされた小規模館の運営継続を支援すべく、4月、「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」の濱口竜介監督らと「ミニシアター・エイド基金」を設立。クラウドファンディング(CF)で3億3千万円あまりを集め、全国の118劇場・103団体に配分した。最新作「本気のしるし《劇場版》」の公開に合わせて神戸を訪れた深田監督に、コロナ禍でのこうした取り組みや、今の日本映画界が抱える課題などについて話を聞いた。

まず、是々非々の是として、深田監督がクラウドファンディングで基金を設立した点は、評価したいです。自分も、微力ながらこのクラウドファンディングに金は出しましたが、まぁ半分は寄付みたいな物です。映画館もない(昔はあったが20年以上前に廃業)ド田舎出身の人間からしたら、ミニシアター自体が大都会の贅沢品という側面は、ありますけれどね。それでも、多様性大事。では、以下本論です。

■バラモン左翼のタカリ体質■

まず、以下の引用部分。戦う相手が観客ではなくて国って時点で、アウトでしょ。なんですか、観客ゼロでも国が援助して俺らに映画を撮らせろ、とでも言い出しますか? もちろんこれは極論ですが、突き詰めれば偉才監督、その発想ですよね? 誰があなたに映画文化を守ってくれって頼んだんですかね。こういう自慰的な責任感や夜郎自大と、公金にタカる体質は、他業種を見下し放言連発の平田オリザ氏にも、濃厚でしたが。

「(略)しかし、映画文化を守ろうという意識が強く、手厚い助成の仕組みがあるフランスや韓国も、映画人たちが闘ってそれらを勝ち取ってきたのです。僕らのモチベーションもそれと同じものだと思います」

闘う相手が違うでしょうに。そして、いちおう形の上では大ヒット快進撃の『鬼滅の刃』を表面上は褒めつつ、こういうこと↓を言うわけです。本音じゃアニメを馬鹿にする映画人は多いですし、雑誌『映画芸術』のように、年間ランキングからアニメを外す映画雑誌さえもあります。この偉才監督様も、要はアニメのヒットは大動員力と、アメリカなら違法な手段で達成され、自分たちがその分ワリわりを喰ってると、そう言いたい訳です。さもしいですねぇ〜。

「ただ一方で考えなくはいけないのは、あれだけの規模で公開できるのは、TOHOシネマズを持つ東宝の配給だからです。日本だと違和感ないかもしれませんが、事実としてアメリカであれば大手映画会社が映画館チェーンを持つことは禁止されていたりします。独禁法に抵触するからです。強固なネットワークと大きな資本力を駆使した日本映画従来の方法論が、自由で公正な競争であると言えるのかは疑問です。日本でこれまで当たり前だった“商慣習”に『映画文化の多様性を守る』という視点が十分に含まれているかは議論の必要があると感じています」

『鬼滅の刃』の上映館数403館を批判するなら、あんな内容で全国143館公開の『新聞記者』も、偉才監督はたっぷり批判したのでしょうか? 『鬼滅の刃』の超ヒットの影に隠れていますが、153館の公開で健闘している『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と比較しても、『新聞記者』は公開館数で大きく劣ってはいないでしょうに。なお、ヴァイオレットは公開5日で興収5.59億円突破、執筆時点で100万人動員突破・興行収入15億円突破です(追記:公開4ヶ月突破のロングラン上映時点で145万人・21億円に。追追記:2021年3月でl6ヶ月のロングラン突破です)。

■優遇されているのはどっち?■

同作はテレビでも高い評価を得ており、昨年公開の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』は公開館数83館で、しかも当初は3週間の限定公開(後に人気を受け延長)という状況でも、興行収入8.31億円という実績もあります。放火殺人事件という悲劇を乗り越えての、過去作で実績充分の作品と比較しても、『新聞記者』の143館は充分に優遇されたスタートじゃないのですか? 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -

“自動手記人形”と呼ばれる代筆屋の少女が主人公のファンタジー。暁佳奈のライトノベルを原作に、「けいおん」シリーズや『聲の形』、『リズと青い鳥』を手掛けた京都アニメーションが制作。TVシリーズで監督・石原太一と共に作品づくりの根幹に関わった藤田春香が監督を務める。声の出演は「進撃の巨人」の石川由依など。

松坂桃李や本田翼ら有名俳優を多数起用しつつ、主演はなぜか韓国人女優というチグハグさに加え、内閣調査室の仕事内容も把握していない雑なシナリオ。でも河村光庸プロデューサー曰く「東京新聞の協力もあり、かなり大々的に広告も打てた」上に、左派系マスコミは広告費をもらってもいないのに連日取り上げ、それでも『新聞記者』はようやっと興行収入4億円。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の4分の1以下。ところで制作費はいくらでしたか? 調べても出てきませんが。

ちなみに『新聞記者』は同時期に上映され、日本だけでも興行収入121.6億円に達した、制作費1億8300万ドルの超大作『アラジン』に比較しても、Twitterなどでの言及が3分の2に達していたというデータがあります。それが真の口コミか、ネットデモで使われる水増し疑惑のある一部アカウントによる大量リピートによる物なのか、解りません。が、勝手連による後押しも充分以上にあったのは事実。でも状況的には惨敗と言って良いでしょう。

■強力な援軍多数の『新聞記者』■

もちろん作品は興行成績が全てではないですし、名作でも転けることはあるのですから、内容の是非は置いておきます。なにしろ宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』だって、あんなに素晴らしい出来であっても、高畑勲監督の『太陽の王子ホルスの大冒険』に次ぐ不入りで、宮崎駿監督は数年間、アニメ業界から仕事を干されたほどですから。あの名作『未来少年コナン』も、視聴率はさほどでもなかったのですから。

ただ上映館数でいえば、細田守監督の『時をかける少女』は、当初はわずか21館での上映でしたが、口コミで評判が評判を呼んで上映館数が増え、最終的に興行収入2.6億円に。良い作品なら評価するという、日本の映画ファンの地力はまだあります。それは、前述のミニシアター向けのクラウドファンディングでも証明されています。そういう作品群に比較して『新聞記者』は、これでもかこれでもかという、受賞ラッシュで観客動員が後押しされました。それが以下の受賞歴。

『新聞記者』受賞一覧表
・第11回TAMA映画賞
 特別賞(藤井道人監督、及びスタッフ・キャスト一同)
 最優秀新進女優賞(シム・ウンギョン)
・2019年度新藤兼人賞
 プロデューサー賞(河村光庸)
・第32回日刊スポーツ映画大賞
 作品賞
・第43回日本アカデミー賞
 最優秀作品賞
 最優秀主演男優賞(松坂桃李)
 最優秀主演女優賞(シム・ウンギョン)
 優秀監督賞(藤井道人)
 優秀脚本賞(詩森ろば、高石明彦、藤井道人)
 優秀編集賞(古川達馬)
・2020年 エランドール賞
 特別賞(製作チーム)
・第74回毎日映画コンクール
 日本映画優秀賞
 女優主演賞(シム・ウンギョン)
・第12回東京新聞映画賞
・第2回映画のまち調布賞
 撮影賞(今村圭佑)
・日本映画ペンクラブ賞
 日本映画部門第1位

上記はWikipediaからの転載ですが、まぁよくこんなに評価できるなぁ……と呆れます。東京新聞は自社の記者の作品に、広告費に加えて東京新聞映画賞までお手盛りです。日本アカデミー賞に至っては、作品賞と監督賞を含む、6冠です。ここまでして、さらに凱旋上映で上映館数が合計で190館と鬼滅の刃の半分近い数にまで増え、ようやっと興行収入が6億円に到達とのこと。バッカバカしいですねぇ〜。ちゃんとこっちの上映館数について批判してよ偉才監督さんよ、と思います。

■否定すべきはオリザ的思いあがり■

アニメはエンターテインメントの中でキッチリ結果を残し、全国の映画館に利益をもたらしてるのに。「俺たちは文化を守ってるんだからカネを寄こせ」じゃ、おまえら何様のつもりだと反発されるだけでしょうに。日本学術会議問題でも、政府批判する県知事や教授たちが、言わずもがなの見下しや驕り高ぶりを披露し、自分たちを知性溢れる啓蒙者として思い上がってる様が、ダダ漏れになってるんですが。偉才監督様もまったく同じです。

同じ穴の狢、まさに平田オリザ氏が演劇界を賞賛するため、次から次へと他業種を見下す放言を繰り返し、各方面から批判された問題と同じ……と思ったら、記事の後半でこの偉才監督、こんなこと↓を口走っていました。一見ソフトな語り口だが、どうにも平田オリザ氏的な選民思想がチラチラ見えるなぁ───と思ったら、直弟子でした。師匠から弟子へ脈々と受け継がれる、思い上がりの伝統。

「それでも自分は作品も評価され、映画監督としてはまだ恵まれている方です。だからこそ、後進がより自由に映画を撮れる環境を整えるため、業界の構造を変えていくにはどうすればよいかを考えなければなりません。僕が20代で入った劇団『青年団』の平田オリザがいつも言っていたことですが、これはある程度のキャリアを積んだ人間が義務として引き受けるべき仕事なのだと思います」

そんな義務、誰が引き受けろと言ってるのやら。自意識過剰。業界の構造を変えるなら、先ずは大ヒットはしなくても、ちゃんと客が映画館に来て、口コミで評判が上がり、黒字が出て次の映画の制作費が出るような体制を、整える努力をすることでしょうに。自分たちは1ミリも変わらず、国がカネを出す体制にするため戦うとか、もう増上慢も甚だしいかと。ついでに、平田オリザ氏の他業界を見下した放言連発も、この偉才監督はたしなめたんですかねぇ?

そういう自浄作用がないなら、日本映画の衰退は必然です。我こそは文化の守護者、多様性の砦と思い上がる前に、客を呼べる作品の手法を、虚心坦懐にアニメに学ぶべきではないでしょうかね。電気紙芝居と見下されながらも、日本のアニメは世界に通用するところまで、牙を研いだのですから。そもそも、エンターテインメント性と芸術性は、共存できないわけでもありますまいに。こんな記事を嬉々として載せるマスコミも、同じ穴の狢。共犯者。闘うべきは国じゃなく観客です。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

■追記①■

宅八郎氏の訃報に絡めて、偉才監督様や野間易通尊師が、サブカルに零落した元メインカルチャーという考察を書きました。平田オリザ氏を含め、彼らが本質的に宅八郎氏に似ている、特に元ギタリストのロックンローラーで音楽雑誌副編集長で釘バットの野間易通尊師が、ハチロックのヴォーカルでライターでマジックハンドの宅八郎氏と、類似しているという結論に。そりゃあ、若い世代には野間易通尊師がイキリヲタに見えるよなぁ……と、我ながら驚愕の結論に。

こちらの考察と、併せてお読みください。

■追記②■

このnoteでも取り上げた河村光庸プロデューサーが、深田〝偉才〟晃司監督と似たような言葉──映画の多様性──を口にして、同じように『鬼滅の刃』などのアニメ作品を攻撃して、大顰蹙を買っています。呆れたので、noteで批判しておきました。類は友を呼ぶ、同じ穴の狢、ということでしょうね。

あなたたちが、日本の映画を殺すんですよ?

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