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小説の再応募の是非と今後の出版界

コチラ↓のTogetterでの議論に対する雑感をば。本業は漫画の編集者ですが、これでも日本文学科で近代文学専攻、普通の人よりは小説も読んでいる部類ですし。自分自身が作話をする人間ですしね。小説と漫画とアニメは、構造的に近いところもありますから、他分野ながら気になります。

『小説の新人賞の再応募は不利という事情』

追記:noteのマガジン機能が便利そうな気がするので、加筆修正して、MANZEMIのマガジンとして加えてみたいと思います。このnoteを書いたのは、2018年07月10日でしたが、その後に京都アニメーション放火殺人事件が起き、講談社の小説賞で箸にも棒にもかからなかったのを逆恨みして脅迫し逮捕されるという、狂った40代前半の犯罪が続きましたので。投稿者の耳に痛い内容に、改定します。

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■再投稿は是。だが…■

自分の作品が編集部から正当に評価されているのか、不信感を持ち再投稿する小説家志望者が一定数いるのは、とても理解できます。漫画の場合でも、不当な評価を受けることはままあり、講座の受講生でも某誌の漫画賞の一次審査で落ちた作品が、他社に持ち込んだらアッサリ高い評価を得た……なんて事は、よくある話です。なので、持ち込みは最低3カ所行くよにう、アドバイスしています。

尾田栄一郎先生の師である徳弘正也先生も、週刊少年サンデーでは一次落ち。当時のサンデーは確か投稿作を返却していたので、それをジャンプに再投稿したら、デビュー決定。その後の活躍は言わずもがな。しかもデビュー担当であった茨木政彦氏の話では、ジャンプでは複数の編集が担当につきたいと手を上げたとか。たぶんサンデーでは、下読みの段階で絵が下手だと弾かれたのでしょう。

小説の場合も、似たような事例はあるのだろうな……とは思いますが、ただソレは割合的にはそんなに高くはないだろうな、とも思います。絵の巧拙で才能を見誤りやすい漫画よりも、文章だけで勝負の小説は才能があからさまに出ますから。自分が審査員に不当な評価を受けたと感じた人は再投稿するより、小説投稿サイト『小説家になろう』なりpixivなりに、発表するほうが良いと思います。

■自分と向き合う勇気を■

ダイレクトに読者の評価が返ってくる、インターネット時代です。その点では、デビューへのルートは多様になっています。編集者の壁を突破するのに人生の貴重な時間を浪費するぐらいなら、直接読者に是非を問うのが良いでしょう。た・だ・し、現実は残酷です。ダイレクトに評価が返ってくるのは、ダイレクトに批判──罵詈雑言誹謗中傷──が返ってきます。悪口よりも冷静な評価に、さらに心が折れます。

これがお笑いの方だと、事情が違うようで。吉本興業の新人育成NSC(New Star Creation=吉本総合芸能学院)とかだと、自分達の作ったネタに自信満々の漫才コンビも、実際に客の前で演じる授業の段階になると、ネタが全く受けない・焦る・滑る・ドツボにはまるで、厳しい現実を見せつけられるとか。そこから現実を受け止め、方向転換するコンビは多いそうです。負けて覚える相撲かな、ですね。

もっとも現実を受け止められずに、学校を辞めてしまう人間も、一定数いるそうです。しかし、小説や漫画は、そういうライブの芸能とは違うため、自分の才能のなさを見せつけられることが少ないです。そのためか、いつまでも夢を追う自分に酔ってしまい、ズルズルと結論を出さない人も……。なろうやpixivに投稿しないあなた、ひょっとしてそのタイプではありませんか?

■一発芸ではなく継続が大事■

コント赤信号のリーダー渡辺正行氏が主催しているラ・ママ新人コント大会では、何度ダメ出しされても同じネタをやり続けるダメ芸人もいるそうで。爆笑問題が実際に見た芸人志望者だと、堕胎される赤ん坊視点の一人コントの一匹竜とか、ひたすら瓦割りをするヤツとか、かつてはいたそうです。そういう人は、何かのはずみに受けたり、少人数なら爆笑することがあるかもしれないのですが……。

彼らの芸は、多くの観客の前でコンスタントに受け、飯が食える芸ではなかったのでしょう。小説の再投稿問題も、下読みの人間からすれば「またコイツかよ……」と思う投稿者が、少なからずいるのでしょう。編集者時代、投稿ページ担当が長かった自分にも、経験があります。投稿作で連載を始めちゃう人、けっこういます。自分がいた編集部は、大手ほど大量に投稿作が来たわけではないのですが。

これが芸人なら、何かのはずみに一生モノの一発ギャグという金鉱脈にぶち当たることが、あるかもしれないです。しかし小説家だと、一発ギャグでは食えない。アイデアは山ほどあって、代わりに誰か書いて欲しいというタイプでないと、職業的なプロになるのは難しいでしょう。どんなジャンルでもプロとして適性があるのは、結果が出なければ再投稿するタイプより、新作を書くタイプです。

ということで、無料部分はここまでです。以下、有料です。とは言え無料部分だけでも充分でしょうから、興味がある人だけどうぞm(_ _)m

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