目的を見失ったディズニー
◉ディズニー社のボブ・アイガーCEOが、ニューヨークで開催されたイベント『DealBook Summit 2023』で、同社の作品やキャラクターが近年、メッセージ性に偏り過ぎていたと認める発言をしたとのこと。まぁ、散々言われてきたことなので、今さら感はあるんですけどね。人魚姫を黒人にしたり、そんなことが政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)でしょうか? 自分は、原典への冒涜だと思いますよ?
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、シンデレラ城ですね。
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■ポリコレより問題は…■
ディズニー最新作の『ウィッシュ』は、北米で大苦戦していますし、主人公の人魚姫アリエルを黒人が演じた『リトル・マーメイド』は、正式な数字の発表はまだのようですが、制作費を回収できないレベルの、かなり厳しい興行成績になったのが、推測されます。その前の『ピーターパン&ウェンディ』も、重要な脇役であるティンカーベルが黒人になっており、ポリコレ迎合と批判されましたね。
ただここで重要なのは、ポリコレ要素も確かに問題なのですが、過去のヒット作の安易なリメイクとか、続編的な作品が多いことですね。そう、これってマイケル・アイズナー社長時代のディズニーと、同じ問題なんですよね。手堅いヒットを要求したアイズナー社長時代は、ヒット作の続編やリメイク的な作品が幅をきかし、ディズニー社から活力が失われていた時代でした。
ポリコレー的なものの蔓延が、ディズニー社の活力を失わせた部分は否定してしませんが。黒人を主人公にした オリジナルの新作で、新たな物語をつなごうとせず。そのような配慮をすれば、手放しで作品も褒めてくれる評論家たちに媚びて、安易な作品作りに走っていないか? 自分はそんなことを考えたりもします。日本の映画界が、とんでも映画『新聞記者』にアカデミー賞6冠を与えてしまうのと、似たような問題ですね。
■アイズナー体制の失敗■
そういうアイズナー体制の停滞状況で、ピクサーでフルCGアニメでヒット作を連発していたジョン・ラセターを幹部に迎え入れ、制作の現場を立て直したんですよね。その結果、ビデオスルーだった『ティンカー・ベル』もクオリティが上がり、人気シリーズになりました。作品作りというのは 多数決ではなく、たった一人の目利きによって大きく変わってしまうものなんですよね。
ただ そのラセター監督も、セクシャル・ハラスメントでディズニー社から追放され。別の会社に再就職したところ、ディズニーの被害者から反省してないなどと批判されましたが。再就職先まで、なぜ批判されないといけないのか? 一度は謝罪した呉座勇一先生を、さらにオープンレターで追い込もうとした人たちと、同じ匂いを感じてしまい、驚きました。
ジョン・ラセター監督が去ってから、ディズニー社はじりじりと、作品のクオリティが落ちていったような気がします。あくまでも素人の感想でしかないですが。でも、作家の才能が相互承認制であるように。作品の企画から決定まで、総合的な判断ができる人間がいなくなれば、クオリティが落ちるのは当然。週刊少年ジャンプも鳥島和彦編集長時代はヒット作がどんどん出てきましたが。以降の打率は……。
■次世代のラセター待望■
ディズニーのテレビ事業部門も、アメリカとインドでの苦戦が響き、2023年度決算で10億ドル(約1490億円)の減益と、完全にお荷物になりつつあります。ケーブルテレビの存在自体が、Netflixなどが躍進する時代には、やや時代遅れになっている面は、あるのかもしれません。身売り話なども出ているようですが。こればかりは仕方がないですね。
AmazonやNetflixなどへのソフト提供で、生き残りの可能性はあるように思うんですが。過去コンテンツに関しては、まだまだ商売になる優れた作品が、多数ありますからね。でも、このままではジリ貧。今のディズニー社に本当に必要なのは、ジョン・ラセターを呼び戻すことができないのであれば、彼に替わる才能の目利きを、スカウトするしかないですよね。
でも、卓抜した目利きの才能がある人物は、そんなにはいないでしょう。ジョン・ラセターは、早い段階から 若手の監督を抜擢したり、集団製作体制を模索したり、スタジオ・ジブリの後継者を育てきれなかった問題を見抜いて、手は打ってきたはずなんですが。一つのピースが欠けることによって、組織は短期間でボロボロになってしまうんですね。スティーブ・ジョブズ亡き後のAppleはその意味では、頑張っていますね。
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