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ジャンプはなぜヒット連発できるのか?

◉少年ジャンプはなぜヒットを連発できるのか? そりゃあ、先輩たちが築いてきた、ブランド力でしょうね。こう言ってしまうと、身も蓋もないですが。でも、元出版社勤務の編集者として10年2ヶ月、フリーランスとして20年近く働いてきた身としては、そういう思いを強くします。編集者ができることは小さく、作家の才能がなければなにもできません。そうやって集まってくる才能が、90%です。実際、大手出版社の有名編集部の名物編集者で、フリーになったり原作者になって、同じようにヒット連発とは行かないでしょ?

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■才能は母数が決め手■

現実問題、昔はジャンプは月に150本の投稿があり、夏休み明けなどは250本来ていたわけで。そのころ、自分がいた某社の月刊少年誌とか、月に10本も投稿があれば、今月は多かったなという感じ。こっちが1年で集める投稿作を、半月で集めることもあるわけで。もちろん、150本250本の投稿作の90%は、箸にも棒にもかからない作品です。でも10%は、自分は高校生でもジャンプでデビューできるという自信と、それに見合った才能がある投稿者です。はっきり言えば、天才の部類。それが15本とか25本集まって、最終選考に進むのです。年間1800本ほど来る投稿作の中で、デビューできるのは10人とか15人ぐらい。月に一人いるかいないかのレベル。

ところが、大手出版社や編集部の外に出ると、そんなよりどりみどりの才能は、集まってこないんですよね。MANZEMI講座は多少なりとも高いデビュー率を保っていますが、それはジャンプやマガジンやサンデーに投稿して、でも一次予選で落ちちゃうような人間が、仕方なく投稿してきた雑誌で、それでも大手が見逃したような才能を拾う努力を、欠点のある才能を育てる努力を、自分はしなければならなかったから、です。これは、ジャンプから出た堀江信彦編集長も、指摘されていました。編集者は狩猟民になってはいけない、農耕民たれ、と。

■編集者は農耕民たれ■

ジャンプなどでよりどりみどりの才能が来る状態だと、その才能に背乗りしてれば、少なくとも編集者である間は安泰です。なにしろ、才能の集まってくる量が違うんですから。その才能をピックアップし、連載のコンペにかけ、手なりで売れるのを待っていれば、そこそこヒットは出せますからね。でもそうではなく、農耕民のように才能と向き合い、肥料をやり、害虫を取り、枝を剪定ないと、良い果実はできないわけで。秋元康商法のような、素材勝負ですじゃダメなんですよね。秋元氏はAKB商法を高校野球に例えていましたが。自分たちの商売はプロ野球みたいなものですから。

堀江信彦編集長も、原哲夫先生を最初は好きなバイク漫画『鉄のドンキホーテ』で勝負しましたが、10週打ち切り。もっとも、連載の後半は人気が上がってきたそうですが、ここで引っ張るよりはと打ち切りを決めたと、講演会で語っていましたね。で、フレッシュジャンプの読み切り枠で、バイクのツーリング仲間が暴走族に殺され、復習するバトルアクションを描き。その後、バイク要素を抜いた『北斗の拳』の読み切りで人気を得て、本誌に移動。230万部で頭打ちだったジャンプの部数を、450万部まで押し上げる大ヒットに。でも、その後の『サイバーブルー』ではコケて。その後、時代劇マンガにシフトさせ、『花の慶次』で2本目のヒット。

■名人芸には頼らない■

そうやって育てるにしても、やっぱり作家の才能の差は、残酷ですからね。作家も、自分は天才なんて思ってる人は、実は少数で。不安から、強がりで言ってるだけですからね。実際ジャンプでデビューしても、デビュー作で消えていく人が多いのは、手塚賞や赤塚賞の歴代受賞者を見れば、明らかです。鳥嶋和彦編集長時代に、次々と後のジャンプを20年支えるような才能が出たように、編集者も才能の世界で、大手出版社の編集者の「自分たちは困難に頑張ってる!」は、話半分に聞いていたほうがいいでしょうね。だって、フリーランスになって、素材に恵まれない状況で、実力を証明していないんですから。

では、編集の大事な部分はなにかと言えば、そういう名人芸的な目利き力や、育成力に頼るのではなく。実はシステムを作ることだと、自分は思っています。ジャンプは、編集長の好き嫌いや温情で決まっていた連載の続行や打ち切りを、アンケート主義にシフトし、10週打ち切りという明確な基準を決めたことですね。実績のあるベテランは30週打ち切りですが。10週打ち切りに批判的な人もいますが、出版業界を渡り歩いた自分としては、編集長の目利き違いなんて、腐るほど見てきました。「こいつは絶対に才能ある!」と抜擢して、コケた連載のほうが、応えた連載より圧倒的に多いんです。

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