犬肉食禁止のエスノセントリズム
◉日本維新の会所属の参議院議員である串田誠一議員が、日本の犬肉食について、輸入禁止を訴えているのですが。日本では、東京と大阪に50軒ぐらいずつ、合計100店舗以上は犬肉が食べられるらしいです。そして輸入される食肉用の犬肉は、20トンほど。思ったよりは多いと思いますが、その多くは中華系や半島系、どのアジア各国のことが属していると推測できます。東アジアから東南アジアにかけて、犬肉食は昔からある文化です。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。
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■韓国の犬肉食の問題■
韓国では補身湯(ポシンタン)の名前で知られていますが。犬肉は、その名の通り体温が高まり、食べた後に汗が噴き出す人もいるようで。自分は、違法なものや疫病に関わるものでなければ、他国の食文化はできるだけ尊重されるべきだと思います。中華料理では猫やヘビなどを食材とした料理もありますが、自分がそれを好まないからと言って、他人が食べるのを制限するのには疑問です。
ただし韓国の場合は、他国に対する体面的な部分と、自国内での需要に対する部分と、曖昧に折衷しようとした結果。牛や豚などの食肉に対して適用される法律が、犬肉には適用されないという状況で。疫病であったり、人体に有害な成分を抱えた犬肉が、法の規制を受けずに流通してしまうという問題があるようです。日本の場合は、犬肉の輸入を禁止ておらず、その面で不安があるといえばあるのですが。串田議員の論点は、そうではないようです。
■食の差別は民族差別の入り口■
食の差別は容易に、民族や人種などの大きな差別の繋がる──歴史に学ぶなら、こういう部分は外せません。多くの宗教で食のタブー(禁忌)があり。甲殻類や鱗がない魚が食べられないユダヤ教徒や、豚を食さないイスラム教徒、牛肉を忌避するヒンドゥー教徒などなど、いろんなタブがあります。それ自体は信教の自由なのですが。日本では熊本や長野で多く食される馬肉も、アメリカ人など大変に嫌いますね。カウボーイ文化の国ですから。
しかしこのような食文化のタブーは、容易に他文化や多民族への差別や、排除に繋がります。エスノセントリズム、自文化優越主義ともことがありますが。そこには、無意識に自分達の文化が標準的あるいは優れたものであるとする、思い上がりがあります。それは日本国内でも、被差別部落の食文化に対して、行われていたわけで。このような、食文化に対する差別に関しては、上原善広氏の『被差別の食卓』が名著ですので、強くオススメします。
■これもアジアの食文化■
世界的に見ると、犬肉の消費量は中国が世界最大で、年間1000万頭ぐらいが消費されているとされます。これに次ぐのがベトナムで、こちらは年間500万頭ぐらい。犬肉食のイメージが強い韓国ですが、多い説では年間200万頭、最近は消費量が減ってて100万頭ぐらいだという説もあれば、もっと減って78万頭ぐらいだという説もあります。しかし韓国でも、犬肉食離れが進んでいるのは事実のようです。
中国の場合、愛玩犬のチャウチャウが元々は、食肉用として開発されたというのは有名な話ですが。中国の犬肉の生産量は、年間9万7000トンだそうですが、これは中国の食肉生産全体の生産量年間8000万トンに比較すると、0.12%に過ぎません。個人的には、牛や豚は良くて犬は駄目というのは、エスノセントリズム以外の何者でもないと思うのです。だって、ダメなものはダメという論理の飛躍しか、批判派からは出てきませんから。
■反捕鯨も根は同じ差別■
このような欧米のエスノセントリズムは、日本の捕鯨にも向けられてきました。しかし2018年(平成30年)12月26日に日本が国際捕鯨委員会(International Whaling Commission; IWC)を脱退して満4年、もう今年で5年目。反捕鯨は日本人が大騒ぎしたような、日本の孤立化など全く起こらず。当たり前ですね、アメリカ人もヨーロッパ人も、クジラを食す地域や民族は普通にありますし。国と国とのお付き合いでは、エスノセントリズムは忌避されがちですから。
日本の場合は、安倍晋三総理大臣の毅然とした決断によって、捕鯨問題の喧騒から、うまく離脱できましたが。西暦107年、倭国王帥升の後漢朝貢以来の日本の外交史で、安倍元総理ほどの実績と、国際政治に精通した宰相はいませんでした。けっきょく、捕鯨問題も犬肉食への差別と、似ています。鯨肉や馬肉はそれでも、欧米でも一部食されていますから。しかし犬肉食はアジアに集中した文化ですから、偏見に歯止めが効きづらい面もあります。
■犬肉好きだった日本人■
そもそも日本人だって、室町時代ぐらいまでは普通に犬肉を食していたのですが。鎌倉時代や室町時代の武家屋敷の発掘調査でも、結構な量の犬の骨が出ているようです。記録上は鯛を食べたとかは残っているのですが、表向きとは違って、普通に犬を食していたようです。どうも関西から、犬肉食の忌避が、どんどん広がっていったようで。生類憐れみの令で知られる五代将軍徳川綱吉も、母親の桂昌院が関西出身ですからね。その影響で、犬肉食を忌避した可能性が。
江戸時代を通して、犬肉食はだんだんと廃れていったようで。もっとも薩摩藩では、生類憐れみの令以降も犬肉食が盛んだったようですが。江戸の武家屋敷跡の発掘調査でも、薩摩藩からは豚の骨などが出土していますが、これも当時としては特殊な食文化。しかし、自分が子供の頃にはもう犬肉食の伝統も消えており、戦時中に食うに困って犬を食べた……ぐらいの話を、ちらほら聞く程度。犬肉食は名作『はだしのゲン』でも、その話題はありましたね。
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