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Webライタースクールって…

にゅ…入会金38万円? そんなに取るんだ。授業料とか、別途取るのかな? いちおう自分も10年と2カ月勤務した出版社の編集者から、フリーランスになった人間。漫画の仕事以外にも、パソコン誌やムック本などでライター仕事もやってたので、売文業の端くれ。記事もコラムも、多少は書いています。DTP(デスクトップパブリシング=パソコンを使った版下製作)作業は、大学や専門学校でも10年ほど教えていましたしね。相場は解りませんが。

ライターとか物書き、エッセイストみたいな、肩書きに憧れてる人も多いですね。現在の日常とは別のキラキラした世界や、知的な世界に見えるのかも知れませんが。現実にはそんな世界ではなく、発注元に原稿を納入(入稿)して対価を得る労働である点では、他業種といっしょ。肉体労働や小売業者と、本質はなぁ〜んにも変わりません。漠然と憧れてる人へ、自分が知る範囲での情報をば提供です。

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■ライターのお仕事とは?■

例えば、パソコン誌で製品レビューを書くライター仕事の場合。AirPods Maxであれば、他社のヘッドフォンとの機能の違いはもちろん、音質の違いや操作性や耐久性などの違いを書くことになるでしょう。どういう切り口で記事を書くかは、概論としては教えられても、具体的には個々人の経験や見識が問われるので、教えようはないですよね。これは陶磁器や自動車の記事だろうが同じです。

例えば、雑誌で記事を書く仕事の場合。不妊治療の現状のレポートとかなら、基本的な医療の知識に加え、現場の医師や看護師のインタビューや治療中のカップルの取材、統計的なデータの収集、場合によっては学術論文の読み込みや、専門家の解説を聞いたり。そこから編集部の要望とすり合わせ、どんな内容にするのかの煮詰め。専門知識が必要なジャンルは、一定の知識や経験の蓄積が必要。だから出版社の編集者からの、フリーランス転身が多いです。

例えば、コラムの仕事。コラムとエッセイの違いが解らない人は、先ずそこから、勉強が必要ですが。作家が本業の余技としてやる場合も多く、こちらは漫画原作者の篁千夏先生らの、未発表の歴史コラムです。レイアウトやタイトルロゴ作り、各種デザインなどのDTP作業を済ませた、完パケと呼ばれるデジタルデータの見本です。編集部には版下制作作業が必要ないため、けっこう喜ばれます。

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■表現技術は最重要ではない■

元noteにあるSEO記事とは、Search Engine Optimizationの略。Googleなど検索エンジンに引っ掛かりやすいよう、最適化された記事のことですが。こういう専門用語には、注を付けた方が良いって、そういうポイントはWebライタースクールでは教えてくれなかったのかな? 講座には仕事を回すことも含まれてるので、悪くなさそうな印象ですが……検索に引っ掛かりやすい文章を量産するので、書き手としての面白みは少ないでしょうね。

単価はかなり安いですが、2000文字以上なら、自分はあんまり苦にならない分量ですし、泥縄的に対象を調べるのも、上位の検索ワードを織り込んで文章を作成するのも、そう難しくはないです。検索上位ワード10個を全部入れた記事とか、やったこともありますし。ただ、これは自分が出版社に10年と2カ月勤務して、先輩やら校閲部にアレコレ現場で叩かれて自然に身に付いたことなので。憧れでライター目指してる人には、苦痛でしかないでしょう。

普通のサラリーマンが短期間で別途身に付けようと思ったら、これら商用文章の執筆は難しく思えるかも。でもそれは、ある程度の文章執筆の経験を積めば、自然にできるレベル。上手い人は最初から上手いですし。んじゃあ、ライター仕事の基本で何を学ぶべきかと言えば、作文技術ではなく、日本語表記ルールと校正の基本、そして過去のトラブルの実例や裁判での判例などでしょうね。自分が教えるとなると。単純に表現技術なら、この本がオススメです。

■日本語表記ルールを学ぶ■

日本語表記ルールというのは、例えば常用漢字表の範囲内で漢字を使うのか、それ以外の字を使うなら、どういう字は許容でどういう字はダメとかの、ルールがあったりします。ただ、これは出版社ごとに、かなりの揺らぎがあります。なので、基本的な一般的なルールとカスタマイズされた特殊なルールと、確認する必要があったりします。用字用語も出版社ごとに、けっこうバラバラですから。

例えば失踪の踪の字は常用漢字外なので使えないので、失跡と書き換えたりしますが。そのまま失踪と書く出版社もあります。「ひとり」という言葉を「1人」と書くのか「一人」と書くのか、算用数字と漢数字の使用や統一など、あんがい面倒臭いルールがあります。ダメな出版社はコレがバラバラ。一人称も、おれとオレと俺が混在する、くまクマ熊ベアー状態。こういうのは、校閲やデスクから毎回しつこく指摘されて、自然に身に付くものですが。

手塚治虫先生の塚の字は、本当は点がある異字体の「塚」だったりするんですが(ブラウザによっては表記されないでしょう)。ここら辺は、校閲部がしっかりしてる出版社なら、朱筆(あか)と呼ばれるチェックが入るのですが、ウェブ系媒体ではあまり期待できないでしょうね。そういう媒体は原稿料も必然的に安く、学びの機会も少ないでしょう。そういうことの重要性も認識してないかも。興味がある人はこういう本で勉強しましょう。

■校正の技術を学ぶべし■

出版業界的には校閲部が優れているとされるのは、広辞苑などの辞書も出している岩波書店、時代小説の日付から当日の天気を調べて間違いにチェックを入れてくる新潮社、誤字の訂正の紙片を挟むなら全部刷り直せのPHP研究所などでしょうか。岩波書店は縁がないですが、PHP研究所は何本か仕事しましたし、新潮社は校閲部に知人がいますが、さすがの知識量でとても適わないなと思います。

こういう、優れた校閲マンがいる出版社だと、朱筆が入って戻ってくると、スゴく勉強になるのは事実です。また、本を自分で書くときは著者校正といって、著者自身がチェックしますから、文字校正は身に付けて損はない知識と技術だったりします。校閲の記号も幾つかありますが、これはたいした量でもないですし、活版印刷時代の文字の転倒など、今は使わない記号も多いです。トル・ツメ・ヒラク・トジル・改行・入れ替えなど、すぐ覚えられます。

ただ、こういうルール自体は、日本エディタースクールの『日本語表記ルールブック』を読めば充分です。常用漢字表や索引なども含めても、わずか80ページの薄い本ですから、ちゃんと覚えるのは苦ではないです。自分も内容の全部を覚えてるわけではないですからね。内容の半分ぐらいを知ってれば、取りあえずは大丈夫です。お値段も550円と安価ですし、買っておいて損はない1冊です。

■差別と生命に関わる医療■

こういう枝葉の技術より大事なのは、実は表記で問題になる誤用や差別の事例と知識だったりします。例えば、自閉症という言葉。字面から、分で心をざした状、心の病やコミュニケーション障害みたいな誤解があります。そもそも自分が子供の頃は、原因がよくわかっていなかったため、親の教育の問題とか、テレビを幼少時に観させたためだとか、デタラメな言説がまかり通ていました。

現在は、自閉症は脳の発達障害というのが、わかっていますから。なので現在では、そういう間違った意味で使ったら、ちゃんとした校閲部なら弾きます。抗議がきたら、お詫びと訂正が必要な案件ですから。医療関係の表現は、出版社はかなり慎重です。もっとも医療関係に関しては、子宮頸癌ワクチンについてデタラメな言説がまかり通り、マスコミの事なかれ主義が、非科学的な反ワクチン派の主張に迎合した部分もあります。

医療関係は、容易に差別や命の問題に関わります。なので、子宮頸癌ワクチンでこんな被害があったと声高に抗議されると、医学者ならざる編集者は「よくわからんけど、取りあえずは辞めておくか」になりますしね。反ワクチンのデタラメを指摘し孤立無援だった村中璃子さんに声をかけたのは、新潮社の新潮45だったそうです。その新潮45も、杉田水脈議員の寄稿に対する抗議で、今はなく……。老舗で校閲が強い出版社でも、対応は誤る事例はあります。

村中璃子さんに浴びせられた罵声を思うと、ライター仕事というのは、そんな憧れの職業か、疑問に思います。「トレンディドラマで描かれた、上澄みのような世界に勝手に憧れを持っていませんか?」と、言いたくはなりますね。浮き草稼業で、大御所と呼ばれるような書き手でも、出版社・テレビ・ラジオに迎合して、食い扶持を確保してるように見える人も、増えました。でも自分だって、明日は我が身ですから。

※以下は有料です。5000文字チョイありますが、大した内容ではないので、興味がある人だけどうぞm(_ _)m

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