竹中平蔵氏は弱者切り捨て論者か？
◉右も左も気楽に叩いても良い人物として、この竹中平蔵氏は筆頭なのかもしれません。小泉構造改革で日本をボロボロにした戦犯呼ばわりされ、自身の関連する企業に利益を誘導する政商扱いです。自分には、経済はわかりません。算盤は４級で実家は商売していましたが、本質的にディープな文系ですしね。ただ、歴史は平均的な日本人よりは好きですし、多少なりとも知識があるので、そこから照らしたことを書いてみたいと思います。不人気で、評価はもらえないnoteになるでしょうけれど……。
【竹中平蔵｢私が弱者切り捨て論者というのは誤解｣ ベーシックインカムは究極のセーフティーネット】東洋経済オンライン
日本の格差、貧困を議論するうえで、よく名前が挙がるのが竹中平蔵氏だ。小泉政権下で構造改革を推し進め、2004年の製造業への派遣解禁など、非正規労働者を拡大した政策の旗振り役とされている。
貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」4日目の第1回は、竹中氏自身が若者の貧困をどう捉えているのか、本人を直撃した（1～3日目の記事はこちらからご覧ください）。
【4日目のそのほかの記事】
第2回：日本人が知らない｢脱成長でも豊かになれる｣根拠
第3回：コロナで生活苦しい人に｢使ってほしい制度｣8つ
ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーから、明太子ご飯です。
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■経済通が嫌われる国・ニッポン■
日本の歴史では、経済に強く国際的な視野を持ってる人間は、基本的に嫌われますね。実行部隊の番方と裏方の役方の対立は、基本的に役方が狡猾な悪者扱い。下の一覧表を見れば一目瞭然ですが、暗殺と失脚のオンパレードです。この中で、特に重要なのは荻原重秀・田沼意次・高橋是清の三人。荻原重秀は国定信用貨幣論を200年余りも先取りした天才経済官僚と言ってよいでしょう。田沼意次は重商主義者、高橋是清は元祖リフレ派と呼ばれるほど、経済通として知られます。
・蘇我馬子（聖徳太子の外交は馬子の業績説あり）
・聖徳太子（対隋対等外交）→暗殺説 子孫滅亡
・蘇我入鹿（三韓から使者来日の儀式）→暗殺
・平 清盛（日宋貿易）→熱病で急死
・細川政元（日明貿易）→暗殺
・足利義満（日明貿易）→暗殺説あり
・足利義教（勘合貿易を再開）→暗殺
・織田信長（楽市楽座）→暗殺
・石田三成（太閤検地の中心人物）→打ち首獄門
・荻原重秀（経済官僚）→失脚、抗議の餓死説
・田沼意次（重商主義政策）→息子が暗殺、失脚
・大久保利通（官僚制度の父）→暗殺
・高橋是清（元祖リフレ派）→暗殺
・岸信介（国家社会主義者）→総理退任後に襲撃
・安倍晋三（アベノミクス・クアッド）→暗殺
先進的すぎる経済政策は、同時代の学者にすら、理解できません。一般の学者はだいたい、思考のパラダイムにどっぷりハマっていて、画期的な学説は画期的ゆえ、理解できませんから。で、荻原重秀も田沼意次も現実に対処する政治家であって、自分の経済理論を本に残していないんですよね。逆に、二人を批判した新井白石と松平定信は、多くの著書を残しています。結果的に、彼らが何故そんな政策を採ったか、明治維新以降に近代経済学が導入され、ようやくわかったわけで。松平定信は、儒教的商業蔑視で「商は詐なり」の人ですからね。
■公的資金注入を提言できたか？■
これは中華の北宋王朝の王安石の新法を、批判だけして対案が出せなかった、大学者の司馬光もそう。資治通鑑を編纂した司馬光は、当代随一の大学者で、人格者でもありました。ですが、今の野党といっしょ。新しいことをするな・昔は良かった方式の、ガチガチの守旧派なんですよね。日本もリベラルが保守的という、奇妙なねじれはありますが。けっきょく、成果を上げていた新法まで廃止した結果、北宋滅亡の遠因にもなったわけで。
経済はわからなくても、こうやって歴史に学ぶことは出来ます。さて、この観点で言えば、バブル崩壊後の後始末で、銀行への公的資金注入を主張したのは、あの時代においては竹中平蔵氏だけであった、というのは事実として受け止めないといけません。好き勝手やった銀行に、なぜ銀行に公的資金を注入せにゃならんのだと、マスコミも学者も大衆も、こぞって批判。自分もそうでした。結果、公的資金注入は遅れ、日本はバブルのダメージを回復するのが遅れました。
でも、マスコミや野党、大衆は相変わらずの竹中平蔵氏批判です。普通はもうちょっと、自身の発言や思考や知識に、疑問が出るでしょうに。マスコミの皆さん、自信満々ですねぇ。繰り返しますが、自分には経済はわかりません。ですが、マスコミも経済がわかっていないな、立派な肩書の大学教授や経済学者も経済がわかっていないな、ということは解ります。ちなみに、経済的には破綻していたカール・マルクスも、経済がわかっていなかったと思います。
■消費税廃止の対案があるのか？■
自分の観察した範囲ですが、竹中平蔵氏批判の人の多くと、消費税廃止論者が重なります。でも消費税がそんなに悪法なら、欧米先進国で採用され、多くが日本の消費税より高い理由を、説明してほしいです。リベラルの方々が絶賛する北欧の高福祉国家は、軒並み20％から25％の効率です。除外項目が～って言う人は、日本もその除外項目や例外を導入すれば良いのであって、廃止論は飛躍し過ぎでは？ 福島瑞穂社民党党首とか、昔の累進課税に戻せば消費税は不要と、以前に語っていましたが。
実際には、日本はアメリカなどと違って、富裕層はそう分厚くないです。昔のように70％の重税をかければ、富裕層は国外脱出。企業も資本を外国に充填投資。それはなくても、そういう稼げる層に重税をかけるより、もっと積極的に投資やら是に設けさせたほうが、結果的にパイが大きくなるってのが、どうやら真実のようで。消費税の逆進性を言う人は、税金を払わない世界一の大金持ち堤義明氏でも反社会的勢力でも、高級外車を変えば消費税を払うということに、思いが至らないようですが。
そもそも、年功序列の終身雇用というのが、高度成長時代の右肩上がりの時代の、徒花だと自分は思います。この制度がそんなに素晴らしいなら、世界でもっと採用していたでしょうね。日本の景気が良かったときは、それが成功の秘密のように喧伝されましたが。そういえばヤオハンの成功の秘密を書いた本が、ヤオハンが破綻した理由だった、なんてこともありましたね。現実には、日本の歴史の中でも、こういう終身雇用自体が、非常に珍しいのです。戦国時代とか、主人を何回も変えるのは普通でしたしね。
■江戸幕府に似ている令和の日本■
実は、これまた歴史上は、終身雇用に似た制度がありました。江戸時代の武士です。特に江戸幕府の旗本・御家人は、先祖が関ヶ原の戦いや大阪の陣で手柄を立てた、その功績で200年以上食ってきていたわけです。もちろん、幕末には貧乏をしていて、勝海舟の父親の勝小吉とか、生涯無役でした。しかしそれでも、江戸幕府の財政は破綻し、二進も三進も行かなくなり、黒船の来航もあって、崩壊を迎えるのですが。興味深いのは、貧乏御家人はともかく、それなりの地位だった旗本。
幕府が長州征伐を行うとなったら、隠居願いを出す人間が続出したとか。まだ20代30代で隠居願いを出し、５歳とか８歳の息子に家督を譲るという。先祖代々幕府の禄を食みながら、イザというときは命を投げ出す覚悟もなく、戦力にならない幼児に家督を譲る。こんな当事者意識が欠如した組織、薩長の西南雄藩が崛起しなくても、自滅していたでしょう。で、竹中氏のやろうとしていたことは、こういうダメ旗本の整理と同じことに思えるのですが。
高校や大学、あるいは大学院を卒業した時点で、30年から40年もの長期契約を結ぶプロスポーツチームがありますか？ そう考えれば、日本はもう長期契約に耐えられなくなっている、ごいうこと。朝日新聞は給与の一律165万円引き下げで労働副委員長が自殺。でも、無い袖は振れません。毎日新聞も、早期退職を募集していましたね。「正規雇用が～非正規が～」と煽るマスコミだって、青息吐息です。無い袖は振れない。それだけの話しです。
■正規社員が非正規社員を搾取？■
ただ、自分は竹中氏が主張するようなベーシック・インカムには賛成しません。個人的にはベーシック・インカムには、期待する部分はあるのですが。しかし未知数の実験は、失敗したときのリスクを思えば、出来ません。でも、外資系企業のようないきなりドライな馘首も、難しいでしょう。であるならば、例えば３年から５年分の年俸を払えば、馘首できるような制度を導入し、思ったより伸び代がなかった無能は、クビにするしか無いです。
「正規社員が非正規社員を搾取している」という竹中氏の指摘は、首肯できます。クビになっても年収の３年分から５年分あれば、資格を取ったり留学したり、対策は取れます。企業も30年や40年の賃金より、ずっと払いやすい。陰湿な、辞めさせ部屋送りも不要でしょう。もちろん、年功序列や終身雇用を維持するのもまた、企業の戦略としてはありです。そりゃあ、無能でもクビにしづらい現在の制度のほうが、ある種の人間には便利でしょうけれど。もう無理でしょう。
日本型の経営云々言うなら、年功序列の終身雇用がもう限界だと認め、新しい社会制度を構築するしか無いでしょう。もちろん、試行錯誤には失敗がつきもの。その失敗を糧に改善するには、昔は良かった・何も変えるなの守旧派は、有害なだけ。対案を出せない野党とか、有害なだけ。そんな野党を弁護して、対案を出さないことを養護するマスコミもまた、有害なだけ。知恵を出し合い、是々非々で議論し、コンセンサスを形成するしか似でしょうね。万機公論に決すべし。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ﾉ
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