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京アニ放火殺人事件:他責の怪物

◉京都アニメーション放火殺人事件の犯人が短刀弁護士に「小説投稿サイトで5人でも読み手がいたら、こんなことにならなかった」と語ったそうですが……ふざけるな、ですね。どうやら犯人は、京アニ大賞に落選した後、応募した2作品とほぼ同じ内容の小説を、小説投稿サイトで公開したのですが、閲覧数(PV)がゼロで退会したとのこと。自分の作品がその程度のものであったと認めることができず、36人が死亡し32人が重軽傷を追う大事件を起こしたとしたら、本当に不愉快です。

【青葉被告「投稿小説、5人でも読み手いたら事件は…」 きょう責任能力の中間論告・弁論】産経新聞

 令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判は、起訴前後に精神鑑定を行った2人の医師への証人尋問が終わった。6日午前10時半から京都地裁で開かれる第16回公判では、被告の刑事責任能力に関して検察、弁護側がそれぞれ意見を述べる中間論告・弁論を行う。被告の他責的なパーソナリティーが事件を起こしたと主張する検察側に対し、弁護側は精神障害の影響を訴えるとみられる。
(中略)
 次にある裁判員が問うた。人生の「つっかえ棒」(被告)だった小説について、「青葉さんが小説を書き続けていたら、事件を起こすことはなかったですか」と。これに対し和田氏は被告との面会時の会話を引用し「『小説投稿サイトで5人でも読み手がいたら、こんなことにならなかった』と話していたのが印象的だった。小説を書き続けられたかが大きな事情だ」。岡田氏も「もし書き続けていたら事件を起きにくくする方向に傾いたと思う」と述べた。

https://www.sankei.com/article/20231106-I6VAS53GIZJZXPXQTY7UGLYVJ4/

ヘッダーはWikipediaのフォトギャラリーより、京都アニメーションの本社です。

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■責任転嫁モンスター■

難易度が高い京アニ大賞に無謀にもチャレンジして人生の一発逆転を狙ったら、一次審査落ちで逆恨み。盗作云々は、その逆恨みを正当化するための、後付けですね。『小説家になろう』が登録者は220万人以上、『カクヨム』でも90万人、何十万人もいる投稿サイトですら、片手の数も読み手がつかない程度の才能が、36人もの才能も未来もあった人間を殺したのが現実。どの小説投稿サイトにアップしたかわかりませんが、こちらでも読者のせいにしています。とことん他責、あくまで責任転嫁。

京都アニメーションは俺様の才能を認めてくなかったが、大衆は認めてくれるはず、と犯人は思ったのでしょう。でも、ゼロって厳しい現実を見せつけられた。ある意味で、自分の価値の無さを否定するために、あんなだいそれた事件を起こしたわけで。津山三十人殺しの犯人である都井睦雄は、事件前に親しい友人に「阿部定事件の上を行くすごいことをやっちゃる」と語っていたとか。彼の放火殺人事件も、周囲に対するアピールであったのでしょう。

ただ、ガソリンの火力を解っていなかったので、ちょっと脅すつもりだったのかも知れませんが、思わぬ業火が発生し、自分自身も瀕死の大火傷を負う羽目に。実の母親が、父親譲りの他責性を裁判でも証言していましたが、けっきょく以上な犯罪を起こす人間は、だいたい親子兄弟肉親との関係が、険悪だったり壊れています。津山三十人殺しの都井睦雄然り、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚、神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖人、附属池田小事件の宅間守死刑囚、秋葉原通り魔事件の加藤智大死刑囚、みんなそうです。

■現実を認める勇気を■

しかし、どれぐらいの期間、小説投稿サイトに作品を晒していたかはわかりませんが、PVゼロってのは、よほどでしょう。タイトルだけで面白く無さが分かる内容だったのか? 京都アニメーション放火殺人事件の犯人も、小説投稿サイトを退会せずに、そのまま作品を残しておいてくれたら、内容が今でも読めて、たぶんパクリだらけの平凡な作品で、ボロくそ言われているでしょうね。かの直木賞・芥川賞・乱歩賞のトリプル受賞候補の大作家・新橋九段氏も、カクヨムの小説を投稿していますが、ユーザーのフォロワーは2人もいるのに。

ほぼ、下記noteで予想した通りの人間でした。他責性の怪物になり、歴史に汚名を残したくない投稿者は、読んで損はないはずかと。京アニ大賞とか、プロでも難しい大穴を狙うより、それこそX(旧Twitter)やFacebook、pixiv、Instagramなど、SNSはいくらでもあるのですから、そこで試し酒をして、まずは自分の力量や評価を、冷静に見るべきでしょうね。それこそ、キュレーションチームが解体された現在のX(旧Twitter)で、3年とか5年も書き込んでいて2桁や3桁のフォロワーってのは、内容に魅力がない可能性が高いです。

「嚢中之錐」という言葉があります。史記の平原君伝に見える言葉で、趙国の公子で政治家の平原君の、食客だった毛遂が、その才能を世に認められたときの故事によります。才能や才覚というものは、無名の時代にも何らかの輝きを見せるものですし、世の中に見つからものです。自分もフォロワー3桁台のときに、6桁フォロワーの超有名アカウントがフォローしてきましたし、逆にこの人は面白いと思えば、フォロワー1桁でもフォローしますが、そういう人は数年で4桁のフォロワーに成長しましたから。

嚢中之錐の解説 - 三省堂 新明解四字熟語辞典
すぐれた才能をもつ人は、凡人の中に混じっていても、自然とその才能が目立ってくるということ。▽「嚢中」は袋の中。袋の中に錐きりを入れておくと、自然に袋を突き抜けて、とがった刃先が見えてくる。それと同じように、すぐれた人は自然と凡人の中から突き抜けて、その才能を現すということ。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%9A%A2%E4%B8%AD%E4%B9%8B%E9%8C%90/

SNSや小説投稿サイトは誰でも簡単に、嚢中に入ることができるのです。ただ、あなたが錐であるか否かを、残酷に示します。

■一発逆転思考の源流■

しかし、なんですかね、こういう人たちの、一発逆転を目指す思考は……。共産主義思想の、間接的影響でしょうか? 自分は今は惨めな弱者だが、最後の審判で異教徒は皆殺しにされ、信者だけが至福千年の神の王国に入れるという、千年王国思想。最後の審判が革命で、千年王国が共産党一党独裁。キリスト教に改宗したユダヤ人の家計という宗教コンプレックスを持つカール・マルクスは、自分自身をイエス・キリストの立場に無意識に置いて、『資本論』を書いたのです。両者の類似性は、バートランド・ラッセルも指摘していることですが。

でも現実は、劇的に変わることは滅多になくて。オブラートを1枚ずつ重ねて、やがて富士山の高さにするようなものの部分があります。現実には、富士山どころか郷土富士にもなれませんし、高さ約8メートル・直径約30メートルの江古田の富士塚、通称江古田富士の高さにさえ、ほとんどの人は至れません。でも、他人の積み上がった山を見て、それを羨ましいと思うだけでは終わらず、嫉妬からルサンチマンから、その山が不正な手段で積み上げられたと誹謗中傷したり、山を奪おうとする人間が出ます。

共産主義と社会主義って、違いがよくわかりませんが。小難しい部分は切り捨てると、漸進的変化を認めるか、劇的な変化を求めるかに帰せられるのではないかと、自分は思っています。そして、劇的に変わることが自己目的化する怖さが、革命への希求にはあるわけです。善人でも異教徒は皆殺しにされ、悪人でも信者だけは助かる。根本に非常に恐ろしいものを、一神教は抱えています。ただ、長い時間をかけて、世俗と妥協することで、角が取れて社会のシステムの一部に組み込まれているのですが。時々、この狂気が原理主義という形で吹き出すのですが。

■他責性が攻撃に転換■

ただ、この犯人の場合は、単純に言えない部分もあります。例えば下記のTogetterでによれば、『小説家になろう』の全作品のデータを作者単位で集計すると、1万文字分を投稿できる作者は、半分に満たないそうです。小説一冊が、だいたい8~10万文字と言われます。1万文字なんて、ほぼ1章分、10~12.5%にすぎません。つまり、半分以上の人間が1割の文字量さえ書けず。 1冊分書き上げるのは20%しかおらず、だいたい3冊分が10%、18~23冊分が1%ということに。

画像も資料敵価値がとても高いので、転載しますね。

ちなみに『小説家になろう』の、作品を投稿している作者数は、だいたい30万人ぐらいで、2019年8月8日時点で、計1092人の書籍化作者が存在するとのことです。つまり有象無象の中から書籍化されるのは、だいたい0.364%という計算になります。芸事は0.1%の世界と言われますが、それはプロ野球や以後や将棋のプロ棋士などの世界で。漫画や小説は、比較的広き門でしょう。プロ野球の支配下登録選手が1球団70人の840人に対して、漫画家はセルシス社の推計で3000人から6000人ですから。0.3~0.5%の世界と言えそうですね。

そう、京都アニメーション放火殺人事件の犯人は、DV夫になるヒモとは、ちょっと違うんですよね。7年もかかったとはいえ、2冊を書き上げたんですから、投稿者の上位10~15%に入るぐらいの努力はしているんですよね。将来は武道館でコンサートが夢とか言いながら、なんの努力もしないDVヒモ彼氏になるタイプとは、ちょっと……いやかなり、違うんですよね。逆に、それが安々だいそれた事件を引き起こしてしまった、という逆説が成り立ちます。

■平均以上・天才以下■

京都アニメーション放火殺人事件の犯人も、彼なりに頑張った。これは事実です。でも才能がないものはない。これも現実です。この現実に打ちのめされるわけです。暇空茜氏も動画で指摘していましたが、超一流大学卒業の学歴とか弁護士資格とか、「それさえ手に入れれば、自分の人生は劇的に変わる」と思っていたのに、現実は何も変わらない。それどころか、自分の人生はなんの意味もない、無価値なものだったのかと気づく。気づくけれど認められないので、他責性が攻撃性に向かう人が、一定数いるわけです。

先に挙げた都井睦雄・宮崎勤死刑囚・酒鬼薔薇聖人・宅間守死刑囚・加藤智大死刑囚、みんな実は平均よりはかなり高い学力を有しているんですよね。宮崎勤死刑囚も、高校で成績が急激に落ちる前は、明治大学の推薦入学を狙っていたし、酒鬼薔薇聖人に至っては、少年院の教官が、その芸術的才能に驚いたわけで。ある意味で、中途半端に能力(才能ではない)も行動力があったから、だいそれた事件を起こしてしまう。光市母子殺害事件の犯人の友人に宛てた手紙も、彼の学歴を考えると、かなり文才があるタイプだと思います。物書きの端くれとして、正直な評価です。

思えば、和製サブカルも早稲田大学や明治大学など、旧帝大レベルではないけれど、学歴的には充分に高い人間で、でもクリエイターになれないタイプの人間が、多いんですよね。そういう人間は、編集者や評論家になりがちですが。ルサンチマンを抱えた人間は、そうやって活動に走ります。名画にペンキをぶちまけたりして、環境保護を訴える連中、あれは京都アニメーション放火殺人事件の犯人の、眷属なです。自分は名画なんか描けないのに、棄損する行為で名画と対等の立場に立とうとする。この類似性に気づくと、見え方が変わりませんか?

1回で5000文字近い内容になりました。なろう作家の半数、15万人が1万文字に到達し得ないことを思うと、資料を調べながら2時間弱で5000文字を書いてしまうのが三流でもプロ。上でリンクしたnote『ユダヤ・キリスト教の千年王国思想と共産主義思想』は、1回で1万文字ありますしね。ののnoteも有料にしても良かったんですが、重要な内容なので無料にしました。もし気に入った方は、サポートで投げ銭をお願いします。あるいは、拙著をお買い上げくださいませ。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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