- 運営しているクリエイター
2016年9月の記事一覧
もう人形は踊らない 2
団長が彼女のことをどこで知ったのかはわからない。
私は拾われ子で、気づいた時にはこの劇団で働いていた。団長の言うことは絶対で、ほかの団員達は最年少の私を可愛がってくれていた。でも私には演者としての才がなかった。多少の芸はこなせるものの、人を引き付けるようなものがどうしてか足りないのだ。そうそうに見切りをつけられた。裏方に回るように言われ、それに徹した。
ここでは、いらない人間は簡単に切り
もう人形は踊らない 1
パントマイムは黙劇とも呼ばれている。
言葉ではなく、動きだけで人を魅了するそのさまは、少しの違和感と子気味悪さを兼ね備えている。喜劇を演じるのが最近の主流だけれど、彼女の踊りはどちらかというと悲劇に近いのかもしれない。はっきりと言い切れないのは、「操り人形」という演目の内容のせいではない。彼女のまとう雰囲気がそうさせるのだ。
舞台に立つ彼女はいつだって人の心をとらえ、そして逃しはしない。