社内コミュニケーションの新提案 「同じ釜の飯」より「同じ釜のサウナ」

「同じ釜の飯を食う」

人と人との結びつきの強さを語るときによく使われる言葉ですが、実は僕は会社のメンバーと、飯はあまり食べませんがサウナにはよく入っています。

一緒に食事をすることに匹敵する、いやもしくはそれ以上の効果があるかもしれない、サウナでのコミュニケーションについて、そのメリットと思わぬ落とし穴について語ってみたいと思います。


「同じ釜の飯を食う」ことの意義

会社を英語で「Company」。

実はこの言葉、
com : 一緒に
pan : パン
y : 人々、仲間

という3つの要素に分解できます。つまりCompanyの語源は「ひとつのパンを分け合って食べる仲間」だと言われています(諸説あり)。

日本語でも「同じ釜の飯を食う」という言葉があり、一緒に食事をするとなんだか絆が強くなりそうなイメージがありますね。

実際、同じ空間で一緒に食事をすると、会議や業務連絡のメッセージのやり取りでは上がらない話題が出たり、少し個人的なことに踏み込んだ会話ができたりして、その人との距離が一気に強くなります。

特に今はオンライン化、リモートワークも広がり、本題とは関係のない話をする機会も減っています。


「同じ釜のサウナ」に入ってみて気づいたこと

さて、同じ釜つながりで出てきましたサウナです。

僕が経営に携わっている温泉道場グループはその名の通り、地方の温泉施設や銭湯などを再生し、「おふろcafé」というブランドで温浴施設を展開したり、アウトドアサウナを保有するグランピング施設やホテルの運営もしています。

ときたまひみつきちCOMORIVERの、エストニア製のイグルーサウナ

そういう仕事柄、一般的な会社と比べて、サウナやお風呂にメンバーで入る機会がとても多く、年間30回以上は一緒に入っているのではないかと思います。

サウナに入っていると、思わぬ相談をされることが、実はよくあります。特に、普段なかなか言いづらいようなディープな話も。

逆に、気軽にプライベートな雑談をすることも増えます。子育てだったり、実家のことだったり・・・

密室空間にいるからなのか、裸の付き合いができるからなのか、互いの距離が一気に近づく感覚が、間違いなくあります。

もともとそれを狙っていたわけではなかったのですが、「あ、これって同じサウナに入っているからこそできる会話なんだな」ということにあるとき気がつきました。

温泉道場グループでは、日常的な交流以外にも、サウナを活かした社内イベントもたくさん行っています。

例えば、2019年に行った「社長と一緒にアウトドアサウナで会社説明会」。

グループCEOの山﨑寿樹

埼玉県の施設での会社説明会のあと、グランピングサイトに移動し、参加者の皆さんとアウトドアサウナ&BBQを行いました。

就活生の皆さんは、代表の山崎と一緒にテントサウナに入っていたのですが、そこは、会社の選び方や人生の歩み方などが飛び交う、かなり濃い人生相談会になっていました。

サウナ説明会を通じて、温泉道場のカルチャーを感じて入社していただいた、新卒メンバーもいます。


フィンランドでは「サウナ外交」が主流

サウナで有名なフィンランドでは、「サウナ外交」という言葉があるほど、サウナを政治やビジネスのシーンにも取り入れています。

サウナという空間が、互いの心の壁を溶かし、真摯に話し合う場として重要視されており、フィンランドの外交官にとってサウナを使った交渉は何十年も受け継がれる「お家芸」なのだそうです。サウナに入ると友好の気持ちが生まれ、心のよろいが溶けるのでしょう。サウナの中では超大国も小国も上司も使用人もなく、人はすべて同等なので、問題が解決しやすいのです。そして裸でいるときに何かに同意したなら、人はその後もその約束を守り続けます。契約や調印よりも裸のつながりほど強いものはありません。

フィンランド式サウナ外交(2010年5月国際サウナ会議にて)

実際、日本にあるフィンランド大使館にもサウナが設置されています。

画像引用:日々湯治「日本で最もフィンランドなサウナ…フィンランド大使館にある!」

フィンランドには、「サウナの中では嘘をついてはいけない」「すべての人は生まれてから平等だ。しかし、サウナよりそれを体現できる場所はない」といった諺もあり、サウナという場が本音で相手と向き合うのにうってつけの場所であることを表しています。

お酒を好まない人も増え、飲みニケーションがやりづらくなった今、サウナを活用した交流を取り入れてみてはいかがでしょうか?


サウナコミュニケーションの落とし穴

とはいえ、サウナを使えば万事OKかといえば、もちろんそんなことはありません。気をつけなければいけないことはやっぱりあります。

まず、1つ目は「サウナハラスメント」です。飲み会と同じで、サウナに行きたくない人を無理やり連れて行くのは立派なハラスメントです。本人が嫌がっているのに無理やり入れてしまえば、コミュニケーションもなにもありません。

かくいう僕自身、今でこそサウナが日常になったので気になりませんが、学生時代であれば「皆でサウナ入ろうぜ~!!」と言われても、「ちょっとそういうノリは無理…」と思っていたはずです。

次に「性別の違い」。銭湯や温泉などのサウナは、当たり前ですが男女別が基本です。コミュニケーションツールとしてサウナを活用しようと考えたとき、同性同士に偏ってしまうのはあまり喜ばしいことではありません。

ときたまひみつきちCOMORIVER 貸切合宿プラン→https://comoriver.com/training-camp-plan

貸切やアウトドアサウナ、自前のテントサウナなどであれば男女混合で、Tシャツや水着などで一緒に楽しむこともできます。それでも肌の露出など抵抗を感じる人はいるはず。無理強いはしないように気をつけましょう。

最後に「社内サウナマナー」上司や先輩と一緒にサウナに入るときの振る舞い方が分からない、という声がメンバーから上がりました。サウナの中では皆平等とはいえ、やはり気は使いますし、使われます。僕自身も、知らず知らずのうちにプレッシャーをかけていることがあると思います。

サウナの本来の目的はリラックスすること。それぞれのペースに合わせて楽しめるよう、上司の立場にある人こそ、適切な言葉がけと行動を意識しないといけないと思います。

飲みニケーションに代わるかもしれない、サウナコミュニケーション。あなたの会社にも取り入れてみると、新たな発見があるかもしれません。

用法用量を守って、お楽しみください。

宮本昌樹@温泉道場グループCHRO

1986年生まれ、和歌山県出身。27才の時に地域活性を目指して株式会社温泉道場入社。支配人を2年間経験したあと、店舗リニューアル開発・コーポレートブランディング、フランチャイズ事業などを経て、HR部門に注力。2019年より、温泉道場グループ1人目の社長として、三重県の株式会社旅する温泉道場の社長を兼任している。

Twitter:https://twitter.com/masakimiy


(編集協力:伹馬 薫)


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