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ショートショート13 聞いた話

  聞いた話
「美樹、なんか誰かのブログに美樹の悪口書いてあるらしいよ」
と沙紀が言ってきた。
「えっ! ほんと?」
「あたしも聞いた話なんだけど、中二のバド部にムカツク女がいる。強いからっていい気になってるみたいなことが書いてあるらしいよ」
 美樹はバド部で一番実力があり、試合の成績も良かった。少しそれを自慢するところがあり、敵も多くつくる。美樹はその話を聞いたときに、普段からそりの合わないバド部の静香が頭に浮かんだ。
「誰なの? ハンドルネームでわかんないかなぁ。つきとめてやる」
 次の日から美樹の犯人探しが始まった。まず初めに静香と同じクラスでバド部ではない千沙子に、
「ねぇ、静香には内緒ね。静香のブログのハンドルネーム知ってる人いないかなぁ」
「う~ん。なんで?」
「そこに、あたしの悪口を書き込んだやつがいるみたいなんだ。あたし絶対探してやるの」
「で、なんで静香なの?」
「だってぇ、あの人とあたし気が合わないからさ」
「ハンドルネームあたしは知らないけど、静香そんなことする子かなぁ」
と千沙子は答えた。静香に味方するような千沙子の言葉に美樹はカチンときた。(もしかしたら静香の友達が書き込んだ?)今度は別の人に、静香と仲のいい子のハンドルネームを聞き歩いた。
 
 美樹が自分のハンドルネームを聞き歩いているということが、静香の耳に入ってきた。
「はぁ? なんでぇ? 掲示板に悪口なんか書かないよ。いいがかりだよ。だいたいそのブログあたし知らないし! 美樹に言ってくる」
 
「ねぇ、美樹。あたしあんたの悪口なんか書いてないよ。そのブログ知らないし」
「ほんと? ハンドルネームがわからないからって、うそ言ってんじゃないの。あたしの悪口があるって、沙紀が教えてくれたもん」
「じゃぁ、ここに沙紀を呼んできてよ」
と静香は強気で向かってきた。
「ねぇ、沙紀。あたしが美樹の悪口書き込んだって、なんでわかんのよ。あたし書き込んでないからね!」
「えっ? あたし、静香が書いたなんて一言も言ってないよ。誰かのブログにあるらしいよって美樹に教えただけだよ」
「らしいって何それ! じゃぁ、誰から聞いたのよ!」
 静香はむっとしてつめよった。
「え~。久美だけど・・・。でも~」
「でも何?」
「久美も聞いた話なんだけどって言ってた」
「えっ! じゃぁ、ほんとに見た人いるの? 聞いた話、聞いた話って何よ。美樹は見たわけ?」
 
「う、ううん。見てない」
 美樹はどうしていいかわからなくなってきた。沙紀も自分の一言で、どんどん話が大きくなっていき、怖くなってきていた。

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