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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第50話

五月四日(祝)



五月五日(祝)



五月六日(祝)



五月七日(火)

 あんだけ肩書きのあった人間が、こんなよくわからない漢字の羅列一列にまとめられてしまうと思うと、空しい。
 あいつはファンタジーの最後に、殺しもありのサスペンスといったが、あいつは自分を自分で殺した。
 それが、ぬるま湯を止める、あいつなりの方法だった。
 いつも奇妙奇天烈で奇想天外で、新しい発想をし、良かれと思ってすぐさま行動に移すが、詰めが甘い。
 ようやくあいつが完璧にできたと言える出来事が、これっていうのは、あまりにも悲しすぎる。

 ジンベエザメは顔が真っ赤になる程、酒を飲み
 ビーバーは泣き
 シロクマは来なかった
 モグラの親族はどこかほっとしているようにも見えた。

「俺は結婚できない。みんなが集まる次のライフイベントは葬式だ。お経代わりに今までの余興の動画を流してほしい。」
 と、余興終わりにいつも言っていたので、そうした。
 動画は二十本、それぞれテイストを変えたブルーレイのジャケットが作られており、収録内容は本編とNG集とメイキングがある。
 どんなお経よりも長い。
 その映像を見てモグラゆかりの話をしだした参列者は、いつしか別の思い出話で笑っていた。

 華添えて笑顔あふれる晴れの日に

 ただ、こんな簡単なおしまいはあってはならない。ぬるま湯は今も出続けている。


第一部「釜場」

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