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連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」

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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全85話で完結。約55000字となりました。街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目…
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#条例

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ 戊辰鳥 後を濁さず ―つちのえたつとり あとをにごさず― 第一部「釜場」 三月十五日(金)  農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。  表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。  医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税として多額のキャッシュを用意しなければならない。そのため、ボロアパートを解体し、そ

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第44話

四月二十八日(日)  お前は何もしていない。  お前がフラフラ何もしていない間、みんな自分のなすべきことをなしているんだ。  一生懸命なぁ!  この人は、カピバラ市の農業のことを思い、このまま田んぼができなくなったらまずいと、休日なのに、自分で調べてここまで来てくれたんだ。  条例だか包茎だかしらねぇがそれはお役所さんが決めたことだ。  それなのに何もしていないお前は、この人のなすべきこととはちがうお役所の話ってやつで、この人を否定しようとしてるんだ。  筋がちげぇし

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第45話

四月二十九日(祝)  条例 法律 行政法 検索  今は便利な時代で、私はまだ「条例 ほうr」までしか打っていない。  サジェストのまま検索すれば、トップにサマリーも出るし、その根拠となるエビデンスも出るし、法律、条例、規則、施行令、違いはよくわからないがたくさんの決め事が出てくる。こんなに決め事がある世界に生きていたとは知らなかった。  とあるpdfデータを開く。  読み解くと「条例が法律の目的と効果をなんら阻害することがないのかどうか」が肝心らしい。  私にはそん

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第46話

四月三十日(火) 「社会通念上どうですか。という話です。  それに、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令の施行についてでは  なお、本通知は、地方自治法第 245 条の4第1項 の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。  と、いう一文が書いてあるとおり、これは助言であり、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認すると読み取れます。  そもそもラクダさん。あなたが初期対応を誤らなければ、こんな一大塩害は起こらなかった

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第57話

五月十日(金)   結果から言うと、畑が一反だけだった。  芝桜が咲かなかったのは、川の土手だったからである。  ヒツジ川の管理者である神奈川県にとっては一大塩害だが、周辺の耕作者にとっては、今年は甘雨というか柔らかく雨も降ったので、土中にはあまり影響を受けず、大した問題でもない。と、いった感じであった。  畑の所有者さんには一連の事態を謝り、誠心誠意、除塩作業を行うと約束し、理解をしていただけた。  理解をしてくれなかったのは神奈川県で、私は条例に基づく届出を出し