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ショートショート

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シロクマ文芸部に参加して書いたショートショートや、単発で書いたショートショートです。 ※ すべてフィクション ※ ジャンルはごちゃまぜ ※ 一話完結です。ショートショート同士の繋…
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2024年1月の記事一覧

【目次】 ショートショート 【マガジン】

ショートショートのマガジンを作りました。 ここは目次のようなものです。随時更新していきます。 ◎ すべてフィクションです。 ◎ ジャンルはごちゃまぜです。 ◎ 1話完結です。ショートショート同士の繋がりはありません。 ◎ 年齢指定になるような極端な描写はありません。 順番通りに読むも良し、気になるタイトル、お題から読むもよし、ランダムにえいやっと読むも良し。 好きなように楽しんでもらえたらいいなと思います。 ▶ シロクマ文芸部 企画参加ショートショート▶ 2023年

冷たい指先 #シロクマ文芸部

 布団からはみ出している指先が視界に入った。  薬指にはめられた指輪が、窓から入る朝日を受けて光っている。  シンクに寄りかかったままで喉へ流し込んだコーヒーがやけに苦々しい。  指先から手元のコーヒーへと視線を移して、ぼんやりと思う。  昨日までと同じはずだ。こんな味だっただろうか。昨夜、妻と喧嘩してしまったせいだろうか。  昨夜の喧嘩を思い出すと、口内にさらに苦みが広がったような気がする。  それ以上飲む気がなくなり、一口飲んだだけのそれをシンクの中へ置いた。  そう

雪化粧の時代 #シロクマ文芸部

 雪化粧とは、降り積もった雪が野山や街を覆い、化粧をした白く美しい様子――、  それが僕の常識だった。  ところが、だ。  常識というのは時代とともに移り変わるものでもあるのだ。  すれ違う女子高生を見てぎょっとした。  人の顔を見た反応としては失礼極まりないが、相手は気づいていないようでホッとする。友人らしき人物に大きな口を開けて笑っている。  僕は呆気にとられたまま会社にたどり着き、同僚に見たことを話した。  すると、彼も同じ経験をすでにしているらしい。思わず二度

最高傑作を求めて #シロクマ文芸部

 本を書くと決めた男がいた。  大学を出て就職し、結婚し子どもも授かったが、どこか満たされない思いを抱えていた。平凡であるということはそれだけでもありがたいことであるが、そんな人生に嫌気がさしたのだった。  必ず最高傑作を生み出すと決めた。  しかし、問題はどんな本を書くかを決めていなかったことだ。すでに世界には多種多様な本が存在している。  何がおもしろいのか。何を書きたいのか。  どんな本が最高傑作なのか。どうすれば最高傑作になるのか。    とにかく男はアイデアを

新規一転 #シロクマ文芸部

 新しい場所。  新しい服。  新しい靴。  新しいおうち。  新しい自分。  全部、ぜーんぶ、新しい。  新しいって嬉しい。  もちろん、古いものだって嬉しいことはあるけれど。  ううん、そういうことじゃあなくってね。  新しい、スタート。  ここからまた、始まるんだ。  ここがどんなところかはよくわからないけれど。  知らないことも、楽しいと思えるから不思議。  だって、私、死んじゃったから。 #シロクマ文芸部 企画に参加しました。 久しぶりにシロクマ