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#06:時代の変わり目。私が見たい世界…私が知りたい世界

TVよりYoutubeを観るようになって思うこと

地上派放送は録画以外を観なくなってしばらく経つ。
YouTubeは自分が好んで視聴する番組に合ったものが「おすすめ」として表示される仕組みになっているので、いちど番組見ると「次はコレはいかが?」と私の視聴傾向を分析した上で集めたおすすめ番組が表示されるので、それをポチって観てしまう。

私の興味関心があるものを「ぜひご覧ください」とおすすめに出ることは有難い反面、ズルズルッと見続けていくうちに頭の中は自分の見たいものの世界でいっぱいになっていく。
気がつくと時間はどんどん過ぎている。楽しんではいるが、自分が欲する限られた世界に時間を使ってしまい、ハッと我に返ることがある。
自分が見たい世界に浸るのって心地いいけれど、周りを見回すと世の中はどんどん変化していることを忘れてしまうのだ…。

パーソナライズリコメンドはとても便利なようで、冷静に考えると「超コワ」だと思うのは私だけだろうか。
視聴者が見たいと思うものしか見ないということは、いつの間にか自分が欲するものしか受け入れられない脳に偏るのではないか…という心配だ。

見たい世界だけ見て生きていきたい…けれど…

人間ってもともと自分が見たい世界しか見ない生き物だと思っている。自分に都合よく解釈したいし、不都合なことはないことにしたいし、イヤなことがあれば事実だって自己都合にカスタマイズして見るに耐えられる状態に変化させることができる魔法使いだ。

この魔法を使って心地よく生きたいが、この世はそうはうまくいかない。なぜなら、この魔法は自分自身にしかかけられないから…。

先日のこと。
待ち合わせしていた場所に一足先に着いた私は、すぐ近くにあったカフェでひと休みすることにした。
コーヒーにミルクを入れてから、本を読もうと鞄に手をかけると、
「あなたの歳のころ、私はね、、、」
チラリと声のするほうを見ると、私の隣には明らかに同世代の女性が座っていて、彼女とテーブルをはさんだ席に20代後半?くらいの女性が(うん、うん)と頷いている様子が目に入ってきた。
(ん?これは仕事の上司と部下?)
一方の女性が饒舌なあまり、独り言をいっているように聞こえる。それが気になって、私はついつい聞き耳頭巾を被ってしまった(本読めよ!笑…)

どうやら上司と部下ではなくて、立場的には職場の同僚らしい。
職場の制度についてお母さん(年代的に)が、娘(年代的に)に、「アレはないよね」とあれこれと文句を言っている?愚痴っている?
若い女性は、それをただただ頷いて聞いている。ときどき、無難な意見を挟みますが、それがあまりにも無難すぎて、私から見たらあれは「聞いているフリ」アクションに見えた。
ま、こんなシチュエーションはどこにでもありがちだ。

ただ、よーく聞いていると、私と同世代の女性の話は、自分が(あなたと同じくらいの歳のころ…)というていで話をしている。でも、時代は『今』である。昔の話を、しかも、今の時代の人に話しても…。目の前に座る若い彼女にとっては『要らん話』だ。
生まれた時代も経験している世の中も違うのに、何十年も前の話を持ち出されても、そりゃ…頷くしかないな…。

一方、同世代の私にとっては頷けることは多々ある。なんなら退屈そうに聞いている若い子に向かってではなく
「どうせなら、私がお聞きますよ」
と言いたくもなってきた(笑。
昔を懐かしみ、旬だったころの自分を見たい…気持ちもよーく分かるから…。
人は見たいものしか見ようとしない…は、時間の流れすら取り除くことができるようだ。

せっかく持参した本を開きながらもちゃんと目を通すことがないまま、待ち合わせ時間がやってきて、私はお隣の会話に後ろ髪を引かれながら店を後にした。

「たまには自分の目の前に高解像度の鏡を置いて、見たくないものに向き合わないとな…」
本当は見たくない…老け込んだ顔、開いてたるんだ毛穴、生え際の白髪、だらしないBODY、、、周りに文句つけて自分を慰めたい甘え、、、
見たくない。目を閉じちゃう。・・・あー!!なかったことにしよっ!にして魔法にかかりっぱなしで生きていくのは、目の前の鏡に映る自分を見るのと同じくらい怖い。
でも、見たい世界しか見ていないと、やがて本当に見えなくなりそうで…。白雪姫の継母のようにすべてを自分の都合のいいようにしか解釈できなくなると、きっと周りのすべてが不都合になっていくでしょ?それが怖い。
「ふはぁ・・・・」
店の出口で大きな伸びをした。

「おつかれさまでーす!」
待ち合わせ場所に手を振りながら向かってきたのは、新卒入社から3年目の若い担当者さん。
現場に向かう道すがら、私は「最近どう?」と話を聞いてみる。
いやー。違う、ホントに。生活はもちろん思考も文化も…昭和の私にとってはぜーんぶ新鮮だ。
世代の違う人たちの話を聞くのはとても面白い。
なんてったって、本当に違う世界を視ているんだから。
どんなのが好き?何が流行っているの?その言葉、どういう意味?今の人たちはそういうときどうするの?…知りたいことがたくさんあって、あれこれ質問すると、
「いやぁ~今は『昭和』がだんぜんエモいっすよ~」
新しい時代の人たちは、新しい視点で私たちを見ているのだろう。
私は自分の過去よりも、彼らが見る今に興味があるんだとその時思った。自分にはもう見えなくなっちゃった世界だから…。

貴方の見たい世界は、どんな世界ですか?

▼▼▼最上川えつこのエッセイ第2弾『アラフィフ歌会始』▼▼▼
読んでみてね~♪



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