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#02:原作問題から見えてくる長いものが巻けなくなった社会

どうした?! いちいち驚いていたら身が持たない

更新をサボっていたたった2か月余りの間に、世の中は1年分以上の驚きのニュースがてんこ盛りだった。
2024年に入ってから、“自分の時間の使い方は自分で選ぶ”ことを決めた私は、地上波テレビ局の番組は録画したドラマ以外は全く観なくなった。
情報過多の時代、入手より厳選…いや、排除するほうが一苦労だ。

2024年は元旦から衝撃のニュースが立て続き飛び込んできて、新年を迎えた喜びは16時9分で消えた。
少し落ち着いてきたかな…と思っていた矢先、ショックな出来事が。
2023年10月期の連ドラ『セクシー田中さん』の原作者である芦原妃名子さんの悲しいニュース…。
たまたま…私はこのドラマを観ていて、芦原さんのX(旧ツイッター)のポストも読んでいたのだが、その内容に彼女の精神面の変化に心配し、なんで?なんなんだ?とこの問題について考えていた。人気漫画家さんがドラマの脚本にまで参加するとなると相当忙しくなるだろう、そこまでしなくてはならないなんて何が起きたのか?!…。芦原さんがストレスで体調を壊さないか心配していたところで、彼女の最後のポストを読んで、なんともいえない複雑な気持ちになっていたところに衝撃の結末が飛び込んで…。
あまりに悲しく残念な展開に、面白かったドラマの内容が全部吹っ飛んだ。
あれから少し時間が経ち、私自身がなぜこの件に深く関心を持ったのかが見えてきたので、ここに書いてみようと思う。

強いものに従わないと食っていけない社会

大したもんではないが、ライター・編集者として20年余りの間『ものを生み出す』仕事に携わっている私が、
仕事自体は好きなのに、恐ろしいほどにモチベーションを下げる残念な社会常識
には多々遭遇してきた。この社会常識と、今回の原作問題が重なって見えたのだ。

私の場合は商業ライター、編集者だ。出版社をはじめとしたクライアントから依頼を受け、書籍や広告宣伝物を制作している。
作品を手掛ける際、目的やターゲットをしっかり設定して、著者と細かく確認を取りながら作品を作っていく。(私が手掛ける本は実用書なので、基本的には著者が書くというより、私が書いたものを著者が確認をして承認していくというプロセスが大半である)
で、著者と私の間でコンセンサスが取れて、しっかり内容が固まった…ところで完成、といけばいいのだが、最後の最後で出版社の担当さんにバッサバサに赤字を入れられ不本意の改変をされ…という経験が何度かある。
それが、読者にとって良いほうであればいいが、そうではない。単に、担当者の思い付き、思い込みの強制だった。
あまりに不条理だと思ったことはなんどか意見を交わしたが、著者の方々からすると「●●出版社から本が出せるから…」という弱み?みたいなものがあるのかないのか、、、けっこう簡単に折れてしまうケースがほとんど。そうなると間に立つ担当編集者の私は、「先生がいいなら…いいっす…」ということになるわけだ。

ここで見えてくる。
長いものは巻くんです、グルグルッと巻いてくるんです。私たち弱者を…。

ウチじゃないと本・・・世の中に出せないでしょ。
ウチが出せば知名度・・・上がるでしょ。
ウチが推せば・・・ヒットするよね。

世の中に広く出すチャネルとパワーを持っている強者が、日々コツコツと積み上げてきた弱者の大切な作品に、平気で違う色のペンキをバッサリとかけてくるのだ。
誰のものだか分からないどーでもいいものなら、「ハイハイ、そうしましょ。どうぞお好きに」と言える。でも、大なり小なり作品を生み出すために骨身を削ってきた者は作品への愛情や思いがしっかりあるはずだ。誠意をもって仕事をしていればしているほど…。

ここに、アナタが大切に思いを込めながら描いた花の点描画があるとしよう。
「この花の色じゃ、インパクトが弱いなぁ…もっと派手な色に塗り替えて!」と、ビビットカラーのペンキで塗り足されたどう思う?
「ここに蝶が足りない。そこのアナタ、ちょっと描き足してくれない?」
アナタの作品の思いを共有できない別の人によって、了解もなく別の絵を描き足されたらどう?
…これが出来ちゃうのだ。強者であることが当然になっていて、我こそがルールだと思い込んでしまう者が、どの業界にだっているだろう。

新しい世の中の兆し

今回の件は、X(旧ツイッター)がなければ闇に葬られていただろう。そういう意味では、「長いものが好き放題に巻き放題」の世の中が変わってきたことを表しているように思う。
強者のふるまいに泣き寝入りしてきた人たちが多かった世の中は加速しながら変わろうとしている。
ほんの10年前であれば、私たちが知らないままなかったことにされていたようなことや、強者に都合の悪い事実が、片鱗とはいえ表に出るチャンスがある…と思いたい。
一方で玉石混同、虚実混交であることが増えた。だからこそ、私たちはより意識して勉強しながら情報を取捨選択しなければならない。
IT化で便利になったようで、実は難易度が上がったような気がするのは私だけだろうか。

▼▼▼最上川えつこのエッセイ『アラフィフ歌会始』▼▼▼
読んでみてね~♪


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