現実的非現実
ある昼下がり
大通りに面したオープンカフェでは
憂いを含むジャズが静かに流れ
コーヒーを飲み干し
気だるそうにあくびを噛む男と
その隣に
手鏡を見ながら口を開け
口紅を塗り直す女が座る
少し離れた席では
ラブラドールが
新聞を読み耽る老紳士の足元に
顎を付け穏やかに伏せ寝している
通りに目をやると
ボーダーのカットソーを着た青年が
古い二眼レフカメラの
ファインダーを覗いており
商売には無関心そうな花屋の女性が
行き交う人々を眺めている
皆
不満そうには見えないが
満足そうにも見えない
概ね良しと思うことにして
日がなやり過ごしているのかもしれない
雲の隙間から時折陽が射し
少し冷えてきた風が落ち葉を掃いていく
何かを欠いても
変わらず世界は回るが
変わらないものなど無い
すべてのものは
存在する意味などありはしないが
存在しないと完成しない
そういう世界は
わたしの頭の中に
至極リアリティをもって現れ
いともたやすく消える
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