大河ドラマ平清盛2周目完走(雑感)

久々に筆を走らせようと思ったのは、Twitter(x?笑)の140字では足りないからです。()

タイトルにもあるように、2012年放送のNHK大河ドラマ「平清盛」。

私はリアタイ視聴勢でしたので、当時すでに全部見ておりました。

歳を重ねてTwitterを始めると、当時は周りに見ていた人があまりにも少なかったのに、ネット上にはたくさんいて、とても嬉しかったのを覚えています。

そんな大河清盛、円盤を手に入れたので半年ほどかけて2周目視聴を行っていたのですが、ついに昨日、見終わりました。

言いたいことはたくさんあるのですが、とりとめのない雑な感想をつらつらと書き連ねてみたいと思います。

雑感①:悪い人、そんなにいない

物語の舞台は平安時代末期。平安末期といえば、それまで貴族の天下だった時代から、武士が台頭してきて世の中が変わっていく時代です。

世の中が変わるということは、多くの人物が争い、そして死んでいくわけですけど、この作品の最大の魅力って、悪い人があまりいないところだと思います。

例えば、物語の序盤で、血のつながらない清盛を嫡子扱いする平氏棟梁・平忠盛にすこーし反目しがちな弟(清盛から見て叔父)・忠正。

主人公目線から見ると、厳しい叔父さんやなという印象で、清盛の出自コンプを抉ってくる現実主義な人なのですが、この裏に隠された彼なりの愛情が露わになるのが、よりにもよって彼の退場回(「叔父を斬る」回)という...

この回では、保元の乱で崇徳院側についた一門を後白河天皇についた側の一門で処断せよという、これまたエグいことをさせられるわけですが

この忠正、めっちゃ子煩悩で子供の面倒見が良すぎるんですよ。ただ単に正論と現実を言っていた一門の未来を案じる叔父ちゃんだったんですよね。それを斬らされる清盛よ...(号泣)

また、忠盛と比較されて愚昧な印象が拭えない源為義も、保元の乱では崇徳院側について源氏内で処断されますが、こちらは実父を斬ることになった源義朝。この為義-義朝親子ってそこまで仲が良い感じではないんですが(源氏だし...?)

為義もまた、源氏一門のために命を投げうつ武士であり、そして父としての顔を見せるんですよね、この期に及んで...そんなのってないよね...(鬼畜演出)

保元の乱関連で言えば、儚みMAX崇徳院は最初からかわいそうなのですが、割と苛烈な史実通りかと思えるような攻めた描き方をされた藤原頼長ですよ!!!(クソデカボイス)

武力として武士を使役し、時には襲って(???)(意味深)、過激な物言いと厳格な性格の頼長ですが、保元の乱では崇徳院側について敗死しますね。

...と、ここまでは「めんどくさい公家が乱に加担して死んだ」ぐらいかもしれないです。ところが、勝者側・後白河院のブレーンたる信西(藤原通憲)が、彼の日記(台記)を見つけてペラペラめくり始めるんですよ。

そこには朝廷のために働きずくめの頼長の記録と、最後に息子たちに「努めよや 努めよや」と叱咤激励する父としての姿、何かあってもその魂は朝廷にいて見守ってるからね〜...という、なんともえげつないワーカーホリック魂を見せつけるわけです。

日本一の大学生(だいがくしょう)と謳われた頼長は、恐ろしいほどの記録魔で、彼がいかに朝廷で政務に勤しんでいたのかは一目瞭然なのですよ。

最後は反逆者となってしまいましたが、苛烈で過激な性格なのも、本人自身がその厳しさを以て国に仕えていたことの表れ。その部分を、次に国政の中枢を担う信西に見せつけるというのは、とても粋な演出だな...と思います。

信西が平治の乱で死に、平家がこの世の春という時代を生きた信西信奉者()の西光も、後白河院の院近臣としては悪い顔をしていましたけど

結局彼も最後まで信西を信奉しているが故に清盛と反目した人として死んでいきますし

ただ単に悪役です!という人が少ないのが全体を通して良い作品です。

そもそも平家自体が驕り高ぶって滅びたとマイナスイメージで語られることが多いですし、そういう印象を払拭するような解釈が多かったのも頷けます。


雑感②:家族愛というひとつのテーマ

平家は常に一蓮托生!

平頼盛が、平家の都落ちに随行せず、源頼朝を頼った後で、彼に向かって言う台詞です。

この言葉通り、平家は一蓮托生...と言っても、もちろん家族内で色々あります。それでも、やっぱり無闇に家族内バトロワをして犠牲者を出している訳ではないのです。そこがひとつのテーマとして初めから描かれていると思います。

比べて源氏の仲の悪さは有名というか...言うまでもなく。王家は王家で感情ぐちゃぐちゃです。白河院が混ぜくった感じもしますけど、またこの後の鳥羽院も璋子への感情が拗れに拗れている上、璋子腹の天皇2人(崇徳・後白河)とはあまり上手くいってないし...得子との子(近衛天皇)を可愛がるし...

公家で言えば藤原摂関家。藤原忠実と長男忠通はもちろん仲が良くないですし、忠実側の息子である頼長も、お兄ちゃんの忠通とは娘の入内合戦をしていて政治的にも仲がよろしくない。

実際に政治的対立をしたり殺し合ったりした事例が多いなか、史実でも一族で殺し合うような形跡が見られない平家一門は、稀有な存在かもしれません。

最後までそれぞれが一門としての自覚を持ちながら各々の人生を「平家」として歩み、散ることの美しさ...滅びの美学、極まれりですよね...


雑感③:フラグ、人の心がない

例えば保元の乱、親子や血縁での戦いになりますが、描き方がなかなかすごい気がします。

王家はいいとして

摂関家:頼長(息子)を突き放したが、訃報を聞いて泣き叫ぶ忠実(父)→その後忠通(長男)優勢に(1番辛かったのもしかして忠通説あるんじゃないかな...)

平家:清盛、叔父(忠正)の郎党を自ら斬る→親族の犠牲が布石となって平家の栄華の道に一歩前進

源氏:義朝、父・為義を斬ることができず(家臣に斬らせる)→平家との昇進に差が出、最終的に平治の乱を起こして没落

三者三様の辛さがありますが、この作品のすごいところはロングスパンでのフラグ回収がめちゃくちゃ多いところだと思います。

特に、保元の乱で身内を斬れず、平治の乱で没落した源義朝含め源氏には続きがあるんですよ。

清盛が親友・義朝を投影して「武士の世を見せてやる」と言い放ち、命を助けた源頼朝もまた、武士の世を極める布石として、弟・義経を討つ訳でしてね...

叔父を斬って栄華への道を掴んだ清盛と、弟を滅ぼして武士の世を盤石なものに作り上げた頼朝。この美しいまでの対比がずっと隠されてただなんて...

最終話に至るまで、フラグ回収が止まらない作品なんですよ。

それぞれのキャラごとの対比構造やフラグについて語り出したらマジでキリがないので、最終話を見てすぐの新鮮なうちに所見を書かせてもらうとすれば...

武士の世=武士の都=福原遷都:厳島神社

武士の世=武士の都=鎌倉幕府:鶴岡八幡宮

最後の最後に頼朝のナレーションで「清盛なくして武士の世はなかった」と入りますが、清盛の武士の世構想を、都を作るという意味でも引き継いでいる頼朝が、なんというか平家とか源氏とかも超えて清盛の後継者のように、はたまた新たな世を作らんとする若き日の清盛のように描かれているんですよね...エモすぎません???

福原遷都がここまでキラキラとしたいい意味で描かれるような解釈って泣けてきますよね。海上交易に便利で、海の神厳島神社に守られた、まさに海の都・福原は、清盛の「武士の世」を体現したような都だった訳です。

福原遷都はわずかな期間で終わってしまいますが、その夢の続きは、平時子が壇ノ浦で入水時に言ったこの
「海の底にも都はございましょう」

に繋がるんだなと思いました。
彼女と一緒に海に沈んだ草薙剣を握った若き日の清盛が兎丸に呼ばれて振り向いた先には、在りし日の平家一門が清盛の帰りを一門総出で待っている...この海の底こそ平家の、武士の都ということでしょうか...(こんなのずるい...)

おわりに

盛者必衰の語り文句で描かれる平家物語のイメージから、どうしても「高位高官を独占せしめ、朝廷を牛耳った結果、源氏に反旗を翻されて滅んだ一族」という印象の強い平家と、平清盛。

少なくとも平清盛は良いイメージというよりは、晩年の強大な権力者というちょっと黒いイメージの付き纏う人物だったように思えます(私はね)。

しかし、この作品で描かれた清盛はそうではありませんでした。

武士の世を作るという、途方もなく、答えもない旅路をアグレッシブに突き進むフロンティアとしての清盛が、生き生きと描かれていました。

朝廷という動かぬ神輿に、武士らしく変化の矢をずっと射続けるその胆力が、神輿を揺り動かし、世の中の流れを変えていったわけです。

それは神輿を実際に射た清盛が「朕を神輿になぞらえて朕を射てみよ」と鳥羽院に言われて実際に射る振りをするシーンにも反映されていると思います。

鳥羽院という、絶対的な権力者である治天の君を、射る勢いの清盛。それまでの王家や公家の権力に屈さず、古い観念に捉われずに変えようとする力を、最後まで見せつける話になっているのではないかと思うんですよね...

それまでの、旧権力と化した清盛や平家一門を滅ぼした源頼朝という構図ではなく、それぞれが追い求める武士の世を作るために変化の矢を放ち続け、やがて頼朝がその立場を受け継いでいったという未来に向けての話だなと、そう感じます...

だから最終着地点は平家滅亡ではなく、滅びた先の夢の続きは鎌倉幕府という、前向きなメッセージが伝わってくるんですよ...

こんな感じで、2周目ですら、溢れんばかりの感想が出てくるスルメのような大河ドラマです。まだまだフラグは潜んでいそうですから、しばらくしたらまた3周目を見ていると思います。

その時はまた色々書きにきますね。笑笑

この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,436件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?