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私なりの平和へのアクションー Nagasaki Peace-preneur Forum 2024への登壇に向けて


祖父から学んだ平和への思い

83歳で亡くなった祖父・船本弘毅は、キリスト教の伝道師として聖書の研究や講義活動をおこない、その生涯を終えました。

大学での講義、毎週の日曜礼拝、特別礼拝と日本中を駆け巡り、NHKラジオ「宗教の時間」では講師を勤めていました。講義は毎回時事性を取り入れてわかりやすい話をするために新聞の切り抜きを欠かさず、手が腱鞘炎になるほど何度も話す内容を推敲するなど、全力投球で原稿と向き合っている姿がとても印象的でした。厳格な祖父でしたが涙もろい一面があり、災害や戦争のニュースに胸を痛め、特に子どもが犠牲となる戦争の話では、テレビの報道番組を見ながら涙を流していたことを思い出します。

生前、定期的に届く祖父からのはがきの中に「平和を求める祈り」というメッセージがありました。今でも定期的に読み返すこのメッセージから、祖父の思想の根底には平和を実現するための伝道師として、亡くなる直前まで人前で講演していたことからも、最後まで平和の意味を伝える仕事をまっとうしていたのだと感じます。

そうした祖父の姿を見てきた身として、その想いを少しでも引継ぐ人間になりたいと私なりに思うようになりました。

「平和を求める祈り」というメッセージ

そうした祖父の影響もあり、学生時代にインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、中国、韓国の6ヵ国を巡り、各国の戦争記念館や平和モニュメントへ訪問する一人旅を行いました。

旅先で出会う方々と平和や戦争、日本に対する印象に関する話をする中で、国としての戦争や平和に対するとらえ方、個人としての考え方、平和に対するイメージが様々あることを知りました。

「戦争」は世界中である程度同じようなイメージがしやすい一方、「平和」というのは人によってイメージが異なるということ、だからこそ、「平和」というものについて国を超えて対話しながら考え続けなければいけません。

 こうした学生時代の経験から「コミュニケーションを通じた平和の実現」という私なりの思いが次第に浮かび上がりました。コミュニケーションの実践者になりたいと志し、英語を母国語としない対象者に対する英語教授法(TESOL)を学び、アメリカ・テキサス工科大学で応用言語学の修士を習得し、アジア難民を対象とした第3か国永住支援の一貫しての英語教育に携わったのが、私のファーストキャリアでした。

ハンセン病療養所に訪れて感じたこと

アメリカから帰国後に勤務した日本財団時代、様々なプロジェクトに携わりましたが、そのなかで一番記憶に残るものの一つに、笹川陽平会長がリードするハンセン病関わるプロジェクトがあります。

国立療養所「多磨全生園」を訪問し、ハンセン病に対する偏見や差別、日本の不適切な政策について学びました。直接、ハンセン病患者から講話もいただき、病気によって社会的差別が起こる事実、そしてそれは今も世界中で続いているということ、差別の撲滅には長い年月がかかるということを実感する体験となりました。

「平和」について明確なイメージを共有することが難しく、それゆえに平和についての議論が深められないからこそ、私自身の中で「平和」に関する定義が必要だと考えました。

そして、「平和とは一人ひとりが心身ともに健康で、ポジティブなエネルギーがあふれている状態」ではないかと考えるようになりました。心身ともに健康であることで、人々の思考や判断力を高めること、そうした状態が常にあることが平和であり、かつ持続的に平和について考えられる基盤になると思います。

そうした思いをもちながら、現在所属しているデジリハでは、障害児者のリハビリをアソビに変えていくことで、ポジティブなエネルギーを引き出していくようなサービスを国際的に展開しています。このようなサービスをグローバルに展開することで、障害児者とその家族への健康、社会的インパクトを通じて自分なりに平和に貢献できると考えています。

Nagasaki Peace-preneur Forumに登壇します

長年、平和について考えてきた私が、この度、ご縁あり5月10日から13日まで開催される「Nagasaki Peace-preneur Forum 2024」に、デジリハの国際展開室室長として登壇させていただくこととなりました。

「Nagasaki Peace-preneur Forum 2024」とは、被爆地・長崎でPeace-preneurを育むためのフォーラムです。Peace-preneurとは、PeaceとEntrepreneurを組み合わせた造語で、平和をテーマに世の中を変える事業や活動を立ち上げ、推進していく人たちのことをそう呼んでいます。国籍に関係なく地球の未来を考え行動するための4日間のフォーラムです。

▼Nagasaki Peace-preneur Forum 2024

私は、同フォーラム内のトークセッションデイで、Global Wellbeing というテーマの「Technology for Wellbeing」というセッションに登壇します。

国境を越えて、経済合理性だけでは解決できない問題に対して、すべての人と幸福を追求するためにどうすればよいか、そこにテクノロジーがどう寄与していくのか、というテーマでお話するセッションです。

データをもとに他者とコミュニケーションを行う

「Nagasaki Peace-preneur Forum 2024」というフォーラムにて、Global Wellbeing、Technology for Wellbeingというテーマでお話するにあたっては、私自身のこれまでの経験や考え、そして、現在デジリハで取り組んでいるサービスや事業を通じて、平和に向けたアクションについてお話できればと考えています。

デジリハは、デジタルを活用してリハビリを楽しくするためのツールとシステムを開発しています。日本ではすでに74ヶ所(2024年5月5日現在)で導入いただいています。導入先の60%は障害児が通う放課後ディサービスセンター、その他に病院や高齢者施設でもご利用いただいています。

統計によると、全世界で約24億人、0歳から100歳と幅広い世代がリハビリを必要としています。デジリハの設立は、障害児者の親やリハビリ経験のある理学療法士や作業療法士がチームとなって事業開発を行ってきた経緯があります。そのため、現在は主に障害児を対象としたサービスですが、将来的には高齢者など全世界すべてのリハビリを必要とする人を支援するツールへの展開を考えています。

前JICAインド担当の方とお話しした際、「障害児者へのサポートはどうしても優先順位が低くなる」とおっしゃっていた言葉が印象的でした。その方は、JICAで国際支援事業に関わるかたわら、個人でも障害者のビジネスをサポートしているそうです。それだけ、障害者に対するサポートや支援はまだまだ手厚いものではないと感じます。

もちろん、障害者への支援やサポートを手厚くすることも大切ですが、それだけでは持続性も、障害者自身の社会参画や自立、ひいては障害者自身の尊厳や平和の確立にはなりません。

そこで、デジリハではリハビリツールの提供だけでなくデジタルを基盤に個人のリハビリに関するデータを蓄積することで、障害者自身がデータを管理、利活用できるような環境をつくりたいと考えています。

障害児の身体の動きをセンサーが読み取り、アプリと連動し動く仕組みになっている

リハビリデータがあることで、個々の身体的な特徴に合わせたデータによって他者とのコミュニケーションもスムーズに行える社会が実現可能になります。言語が話せなくても、口が動かせなくても、目の動きや腕の動きで感情や賛否の表現ができる時代がくる、つまりデータをもとに個人の意思表示を理解することでコミュニケーションが行える環境が実現できるのです。

こうしたサービス理念の背景には、障害者を支える親らがいつかいなくなっても、いつでも障害者自身が自律して支援者とコミュニケーションができたり、笑いあえたりすること、さらにはお金を稼げるようになることといった、デジタルの力を活用することであらゆる人の自律を促す社会基盤を目指しているからです。

自分の意志を示しコミュニケーションできることは、すべての人が心身ともに健康でポジティブにいられるということであり、平和への一歩にもつながっていくアクションになれると思います。

「コミュニケーションを通じた平和の実現」に向けて

アメリカの大学院で応用言語学を専攻していた時、手話の研究者など様々な言語やコミュニケーションにまつわる友人と多くの時間を過ごしました。

大学院での経験は、人種や性別、時には身体的な特徴を超えてコミュニケーションが行えるということの希望や期待を感じるものでもありました。

だからこそ、障害者も一人の人間として他者とのコミュニケーションを図り、他者と共存しながら社会に生きる人間であるということについての実感、そしてそれらを実現することの意味の重要さを理解しています。そしてそれは、今回登壇するセッションテーマである、まさにGlobal Wellbeingというテーマとも関わる問題だと考えています。

デジリハでの経験や私自身のこれまでの経験を通して、フォーラムに参加される方々との対話を図る機会に恵まれ、大変嬉しく思います。私なりの平和の実現に向けてみなさんと連帯し行動する良い機会になれば幸いです。


デジリハでは、絶賛仲間を募集しています。関心のある方は、ぜひコンタクトください。他にも各部署で人材を募集していますので、お気軽にご連絡ください。

・開発プロジェクトマネージャー

・広報


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