『世界2024年1月号』

松里公孝「正義論で露宇戦争は止められない」:
文中、アルジャジーラ紙のサイトで、ロシアの反体制派の調査を根拠に、ロシア軍の戦死者を五万人と推計していることが紹介される。
それを受けて松里は、ウクライナ軍の喪失(戦死者、重傷者の合計)を二〇万人を超えるものと推定している。

気になったので、両軍の死者数の推計を調べてみた。

ロシア軍の死者数の推計:
①12万人(米政府当局者/2023年8月18日/ニューヨーク・タイムズ電子版〈以下()内をNTと略す。〉)
②27万7660人(ウクライナ軍参謀本部/2023年9月29日/読売新聞)
③ 33万人(ウクライナの「キーウ・インディペンデント」紙/東洋経済オンライン)/

ロシア軍の死傷者数の推計:
① 29〜30万人(NT)

ウクライナ軍の死者数の推計:
① 7万人(NT)
② 3万人超(ウクライナの市民団体/2023年11月16日/ロイター)

ウクライナ軍の死傷者数の推計:
①17〜19万人(NT)

ここで疑問なのは、ロシア軍がバフムトやアウディイウカの肉挽き作戦を経ているにもかかわらず、なぜ松里はロシア軍の戦死者を五万人と、各種ある推計値の中でも最も少ない数で推計しているのだろうかということだ。
また、ロシア軍の戦死者五万人に、ウクライナ軍の喪失二〇万人超を並べているが、戦死者数を比較するなら、なぜウクライナ軍の死者数の推計を掲げなかったのか?、あるいはまた、喪失者数を比較したかったのなら、なぜロシア軍の死傷者数の推計29〜30万人を掲げなかったのか?
この数字の取り上げ方一つを見ても、松里がプーチン・ロシア寄りの観点からこの戦争を眺めているのが分かる。/

また、松里の著書『ウクライナ動乱』にしても、この呼び方はまるでウクライナが旧ソ連の一構成国家でしかないかのような命名であり、松里がプーチンと同一の視点から世界を見ていることの証左ではないだろうか?
さらに、『ウクライナ動乱』には、【私見(たとえば、国際法上の(略)ーー旧行政境界線が国境に転化する原則ーーは社会主義連邦の解体には適用されるべきではなかった。)】が展開されているとのことだが、まさか松里はウクライナのみならず、ジョージア、モルドバ、エストニア 、ラトビア 、リトアニア などのソ連崩壊後に独立した十三か国の正統性にも疑問を投げかけ、プーチンの更なる進軍への露払いをしようというのではないだろうな、と嫌な予感が背中をつたう。
そんな本、僕にはとても読めない。
まだ、買ってなければいいのだが。

「残念!もう買ってますから〜」w

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