是枝 裕和 、ケン・ローチ 『家族と社会が壊れるとき』

僕がケン・ローチを知ったのは、たぶん『大地と自由』でだったと思う。
スペイン市民戦争を描いたあの映画に感銘を受け、『ケス』、『やさしくキスをして』、『麦の穂をゆらす風』、『わたしは、ダニエル・ブレイク』、『家族を想うとき』と、かれこれ十八本も彼の映画を観てきたことになる。
いつのまにか、ワイダの九本、アンゲロプロスの十本、トリュフォーの十四本、ベルイマンの十六本を超えて、僕が一番多く観た映画監督になっていた。
ローチが社会に対して抱え続けている怒りや、社会の底辺で貧困にあえいでいる人々に対する彼の視線が僕は好きだ。
本書を読んで、『ジミー、野を駆ける伝説』などのローチ映画がまた観たくなってきた。
たぶん、世界の風景はそう簡単には変わりそうもないから、これからもケン・ローチの存在理由がなくなることはないだろう。/


【「自由市場」は自由ではない。】(第四章 「悪い時」を乗り越えるために)/

この言葉は、NHKスペシャル 新・映像の世紀『02 グレートファミリー 新たな支配者』で聴いたケインズの次の言葉を思い出させる。

《「今、 我々がそのただ中にいるグローバルで、かつ個人主義的な資本主義は、成功ではなかった。それは、知的でなく、美しくなく、公正でもなく、道徳的でもなく、 そして、善ももたらさない。だが、それ以外に何があるのかと思うとき、非常に困惑する」》(ケインズ「国家的自給」より)

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