『平ら山を越えて』(テリー・ビッスン)

「平ら山を越えて」:
この短い物語で、展開が読めてしまうというのは、ちょっといただけない。/

「ちょっとだけちがう故郷」:
一つのメルヘン。
主人公トロイのいとこの少女チュトの面影が忘れられない。
この短篇が読めただけで僕は満足だ。
ある日、トロイとバグは古びた競走場で、旧式飛行機のようなものを見つける。
そして、次の日、オンボロ飛行機は三人を乗せて空へ飛び立つ。/


【チュトはトロイのいとこだが、姉のようなものだ。(略)
チュトは十一歳、トロイよりひとつ年上というにはすこし足りない。(略)
チュトはフランス語でなにもかもという意味だ。それはおかしい、とトロイは思う。なぜなら、チュトにはなにもないも同然だから。まず母親が亡くなった。つぎにどんどん背中が曲がって、ほとんど歩けなくなり、自転車にはまったく乗れなくなった。(略)
あくる朝、トロイはいつもの木からさほど遠くないチュトの家まで自転車を走らせた。(略)
チュトは階段にすわっていた。ふさぎこんでいるみたいだったが、トロイの姿を目にするとにっこりして、
「夜中にあんたの夢を見たわ」といった。「あんたが自分の飛行機を持っていて、あたしを乗せてくれる夢」】

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?