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リモート・コミュニケーションを助けるアイテムを作ったので思想を説明します。

リモート・コミュニケーションが増えた

今さら書くまでもないが、COVID-19の感染拡大に伴って日本において一気にリモートワークの機運が高まっている。COVID-19以前の社会においては限定的な企業でのみリモートワークは許可されており、私の所属する企業においても「子供が風邪で学校を休んでいるので自宅からボチボチ仕事します」「今日はMTG(ミーティング)がないのでWFH(Work From Home = 在宅勤務)します」というメンバーが散見されていた。

実際にデータとしても本日(2020/4/17)リリースの記事(4月上旬のテレワーク実施率は27% 緊急事態宣言前から2倍に 都内では49%が実施 - ITmedia NEWS)において以下の記載がある。従業員が10人以上の企業で働く男女を対象に調査をすると、既に都内では49.1%の企業がテレワークを実施しているという。

パーソル総合研究所が4月10〜12日に調査した結果、テレワーク実施率の全国平均は27.9%で、3月9〜5日の調査結果(13.2%)から約2倍に増えた。政府は4月16日に対象地域を全国に拡大したため、テレワーク導入はさらに進みそうだ。(中略)4月の調査では、東京都内で働く人の49.1%がテレワークをしていると回答。3月の結果(23.1%)から2倍以上に拡大した。神奈川県(18.9%→42.7%)、千葉県(17.0%→38.0%)、埼玉県(13.8%→34.2%)、大阪府(12.5%→29.1%)なども大きく上昇した。

更にここ2ヶ月程で全国民が覚えたフレーズに「不要不急」が存在するが、これまで主にオフラインでおこなわれてきた様々な不要不急な営みについてもリモートへの移行が活発である。私の経験としても、複数回のオンライン飲み会や一度のオンライン合コンをおこなった。オンライン合コンではこっそりと特定の女性に個別でチャットを送っていた男性参加者がいたが、あまりにも最先端な技術であるが故に「あれ何かメッセージ来たんだけど?」と女性によってアッサリと(「部屋かわいいですね!」という気持ち悪いチャット内容が)晒されていた。2020年4月現在において、人類はまだオンライン合コンには不慣れなのだ。

ともあれ、これまでオフラインで顔を合わせて、接触や飛沫を伴いながらコミュニケーションを取ってきた人類は、「それなりの画質/音質に変換されたデジタルデータを介してのコミュニケーション」を取ることを余儀なくされている。

コミュニケーションのリモート化による影響

さて、リモートでのコミュニケーションが増えることでポジティブな影響とネガティブな影響があると感じている。ポジティブなものとしては仕事でも私用でも「会うための移動時間がなくなったので時間効率が上がった」という声が最も大きいのではないだろうか。

特にビジネスマッチングの世界においては「初回は直接会う」というのが常識的なマナーとして盲信されてきた。私自身も気持ち長めに1.5時間と設定された他社との打合せのために、新幹線に往復4時間を掛けて乗った経験がある。COVID-19以降の社会においては、むしろ「初回はオンラインでコミュニケーションを取り、どうしても細かい話をガッツリしたいならF2F(Face to Face = 対面)でおこなう」と効率化されたように感じている。

考えてみれば個人間の出会い系アプリで「会う前にLINE/電話してもいいですか?」という提案はよくあることで、経済社会もようやく非効率的なビジネスマナーの呪縛から解かれようとしていると言えそうだ。

一方で、リモート・コミュニケーションにおいては課題もあるだろう。前述の記事においても、リモートワークの課題として「相手の気持ちが分かりにくい」ことが第一に挙げられている。果たしてこれは真実だろうか。次節で細かく考えてみたい。

リモート・コミュニケーションにおける課題

コミュニケーションがリモート化すると、あくまで用いるツールに依存した方法でしかコミュニケーションが取れなくなる。COVID-19以前のコミュニケーションは今思えば多様であった。例えば、我々は以下のような方法でコミュニケーションを取っていた。

・上司にちょっとした確認を取りたいときに、上司が作業しているPC画面をチラ見して、SNSをボンヤリと眺めている瞬間を狙って声を掛ける。

・いつも身だしなみがしっかりとしている後輩の後頭部に珍しく寝癖があるのを見つけて「もしかして昨日寝不足だったりする?」と声を掛ける。

・高校生のときに陰キャ同士だと思い込んでいた元クラスメイトの女子と成人式で再会した際に、よく見ると分かる派手すぎない丁寧な化粧と香水の匂いを感じて、彼女がオトナになってしまったのを静かに悟る。

フェロモンたっぷりの異性に対して信用や愛情を(幾らでも嘘が言えてしまう言葉以外の形で)伝えようと、ハグやキスをする

コミュニケーションがリモート化したことで、これらの情報伝達の手段は失われ、コミュニケーションの質も低下してしまった。我々は上司のPC画面をチラ見することができなくなったし、後輩の後頭部を視界に入れることがなくなったし、ノートPCに標準装備のカメラ画質以上によく見ることができなくなったし、匂いを嗅ぐことができなくなったし、五感を超越した空気感を感じるヒントが少なくなったし、物理的に他者と接触することができなくなった。

こうした情報伝達の手段の減少・劣化を通して、我々はコミュニケーションをおこなう「相手の気持ちが分かりにくい」と感じているのだろう。

リモート・コミュニケーションを助けるアイテムを作った

では今後、我々はどのようにしてこの課題に向き合えるだろうか。一つの方針として、リモート・コミュニケーションが取りこぼした情報量をリモート・コミュニケーションの枠組みに押し込んでいくことが挙げられる。

つまり、「それなりの画質/音質に変換されたデジタルデータを介してのコミュニケーション」の中で、これまでのF2Fコミュニケーションにおいて伝達されていた情報を新たに伝達する手段を具体的に考えていけば良い。

やっと本題だが、今回はその一例として主にリモートワーク中に自分自身がリラックスしながら仕事をしていて「雑談OK」なのか、集中しながら仕事をしていて「雑談NG」なのかを「それなりの画質のデジタルデータ」でも一目瞭然で表現する方法を考え、用いるグッズを作成した。

以下がその商品例と説明である。

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・リモートワーク中に「雑談OK」であることを衣服を着るだけでアピールするためのアイテムです。
・衣服については最上部にロゴがプリントされているので、姿勢よく仕事をしていれば割とちゃんと映るかと思います。
・集中モードに入りたい場合は、別途販売中の「雑談NG」アイテムに着替えましょう(※着替え中は映像OFFにするよう気を付けてください)。

商品ラインナップとしては以下を用意した。

スクリーンショット 2020-04-17 17.37.48

ショップURL:https://suzuri.jp/charamoex

詳細は上述の通りでしかないのだが、リモートワークなどで映像をゆるく通信しあいながらも、それなりに作業している環境を想定している。説明した通り、我々はリモート・コミュニケーションによって相手の情報量不足を嘆いているので、今後は映像を基本的に繋ぎっぱなしにしながら情報量を増やして仕事をすることが一般的になる可能性はある(プライバシーの侵害だとかで嫌がるかもしれないが、COVID-19以前の職場においても常時あなたはより広い範囲で監視され得た)。

そういった状況において単に衣服を身に着けるだけで「気兼ねなく声をかけられる」「協調性が高い」「時代の最先端を行っている」「最高に仕事ができる」という評価を得られるのが今回作成したアイテム群である。もちろんファッションであるため好き嫌いを考慮して計5パターンを用意したし、リモート・コミュニケーションの画質/画角でも伝わることを重視したためにやや派手であるものの、我々はもう不要不急な外出をしないので今さら衣服が多少派手でも全く問題はない

COVID-19以降のコミュニケーションについて

最後に、コミュニケーションの定義を正確に見ていこう。岩波書店の広辞苑においては「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。」と定義されている。社会生活とは、人類が農耕を覚えて定住生活を始めた約一万年前が起源とされている。農耕型の社会においては大人数で収穫した作物を長期に渡って保全・配分する必要が生じるため、法が定義され、より厳密な意思疎通が必要になったと考えられる。

現代においても同様に、人間同士は社会生活の中で何らかのメリットを求めて情報伝達をおこなっている。他方、この一万年間続いてきたコミュニケーションの形が大きく変わろうとしているのも事実である。我々は「それなりの画質/音質に変換されたデジタルデータを介してのコミュニケーション」を強いられており、一万年前に農耕・定住を始めた人類よりも明らかに少ない選択肢で劣化した情報量のコミュニケーションをおこなっている

今回、私が提示したアイテム群は2020年4月現在においては少しだけ突飛に感じる人がいるかもしれない。COVID-19以前の生活をのんびりと過ごしてしまった人類にとっては仕方がないことかもしれない。しかし我々は社会生活が始まって以来、一万年後に来たこのパラダイムシフトに適応し、これまでの価値観をアンラーニングしていく姿勢が求められている

最後にもう一度だけショップURLを置いておく。さて、ここまで読んだ読者はいま一万年の時を経て「あなたは新時代に適用できますか?」と問われているのだ。アイテムの購入通知はリモート・コミュニケーション技術の恩恵に預かりメールで届くため、メールボックスを開いて皆さんの解答を待つ。

ショップURL:https://suzuri.jp/charamoex

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