埼玉のギャルが大赤字の老舗和菓子屋に入社した話vol,2


遅くなってしまってごめんなさい、、!!
やっと更新できました!!

前回の続きになります。
まだお読みになっていない方は是非こちらからお願いします!
https://note.com/moemi_nu/n/n7a1b36232c55


入社

そんなこんなで2月に退職し、20歳で実家の老舗和菓子屋『五穀祭菓をかの』に入社した。

入社してすぐは自分でも何をすればいいか分からないし、周りも何をやらせればいいのか分からない謎の立ち位置だったので、とりあえずアルバイトの子達と同じように当時1番忙しかった店舗の販売員をやりつつ配達をしていた。

よろしくお願いしますとお店に入ったはいいものの、そのアウェー感は尋常じゃなかった。

そりゃそうだ。私が生まれる前や幼稚園の頃から働いてる従業員も沢山いたし、私の今までのギャル姿をみんな見てるし、職人に至っては親から私のどうしようもない娘エピソードを沢山聞かされていたから、このギャル本気で継ぐつもり、、?もうこの会社終わりやん、、。ってなりますよね。私も逆の立場なら怖すぎる。

パートさんやアルバイトの子もなんか変なこと言ったら社長にチクられるんじゃないかとか、悪く言われるんじゃないかとか多分警戒していたと思う。本当驚かせてごめんな、、。

月日は経ち、最初は馴染めなかったものの毎日働いてるうちに仕事に慣れ始め、従業員たちにとってもMOEMIという存在が当たり前になった頃、私は少しずつ自分の意見を出していくようになった。

一番問題に感じていたのは商品のロスだった。私が入社した当初、17時になると売れ残った商品を値引きしていた。ちょっと前にスタバさんもこの取り組みを試験的に始めて話題になっていましたよね!

私はロジックとか本当に皆無で、嗅覚と第六感で物事を決める野生児なのでもしかしたら間違っているのかもしれないが、残ったものを値引きすることに反対だった。

本当に良い素材を長年の歴史のある技術で作ってるのにも関わらず工場の大量生産されているものと同じ値段で販売してしまうのは、うちの規模感やお客様の層を考えると商品、そしてお店のブランド価値がどんどん下がってしまうと思ったし、実際に夕方以降安くなるからとあえて定価で買わなくなるお客様も沢山いた。そして何より職人も従業員も商品に対する愛情がどんどん薄れているのをなんとなく感じていた。

そしてそれは商品自体にも顕著に表れていた。残った草餅やお団子を久しぶりに食べてみたところ、味も食感も元のをかのの商品とは全くの別物になっていたのである。

『ぜんっぜん美味しくない』

職人に問い詰めたところその商品たちは私の父が工場を留守にしてる時に作られた物だった。(当時は父が外に出ることも多く、ほとんど職人に任せていました)

なんでこうなったのだろう、、
理由をブワーーーっと書き出したらこの答えにたどり着いた。

商品の値段を下げる→価値が下がる→作り手、売り手も商品に対する愛がなくなる→商品や接客が雑になる→既存のお客様が離れていく→安さだけを求めるお客様だけが残る→定価で買う人がいなくなる→商品がさらに残るようになる

完全に負のスパイラルである。
このままではまじでやばい。
すぐに値下げをやめるように父に頼んだ。

しかし一度離れたお客様は簡単には戻ってこない。そして完全にやる気を無くしてしまった従業員の気持ちを変える事は、実力も実績も権限もない当時21歳の私には出来なかった。むしろ値下げをやめた事で売れる数が減り、ロスが増えたけどどうするつもりだと問い詰められた。

値下げしなくてもロスにならないようにする方法はなんだろう。今以上に知識のない私は一生懸命考えた。

そしてない頭から絞りでた方法は二つあった。

一つ目は、商品の生産数を減らす事。
でも生産数を減らす事はロスは減るけど売り上げも落ちてしまう。そうすると人件費や家賃等の固定費が払えなくなってしまい、それでは会社が続かなくなってしまう。

二つ目は、ロスにならないように商品を変化させる事。まず最初に変化させたものは当時の看板商品である『豆大福』賞味期限が当日しか保たなかった豆大福の配合や作り方を変え、二日間販売できるようにした。

ところがどっこい(古い)、これが大失敗。

看板商品の味や食感がガラッと変わったことで豆大福ファンのお客様がどんどん離れていき、すぐに元に戻したものの先程の話と同様、一度離れたお客様はなかなか戻ってきてはくれない。看板商品って変えない方が良いみたいですね。完全に勉強不足でした。てへ

それなら変えても支障のなさそうな商品でもう一回チャレンジしてみよう。

お店をぐるぐる見回している時、目に止まったのは一日一個も売れない日もある程人気のなかった葛ゼリーだった。そういえば売ってたなこれ、というレベルである。

残った葛ゼリーをみんなで食べながらこれ売れないからやめた方がいいかもねと話していたら、母から『あんた昔はこういう蒟蒻畑みたいなのよく食べてたのに最近全然食べなくなったね』と言われた。

私は『えーー元々ゼリーはあんまり好きじゃないもん。蒟蒻畑は凍らせて食べるから美味しいの』と言い返した。

ん?凍らせる?
その時昔の記憶が蘇った。

セブンイレブンでバイトをしていた頃、深夜にアイスを品出ししてる先輩がいた。品出しって普通新しい賞味期限のやつを後ろに置くのにその先輩はそのまま前に出していて私は『賞味期限見なくていいんですか?』と聞いた。その先輩は鼻で笑いながら『アイスは賞味期限ないんだよ。そんなことも知らないの?学ねえな。』と言われた。先輩が綺麗に並べたそのあずきバーで頭かち割ってやろうかと思った。

そうだ、アイスは賞味期限ないんだ。(本当はなくはない)
しかも凍らせた方が絶対美味しい。(完全に私の好みの問題です)

その場で父に葛を取り扱ってる問屋さんに電話してもらった。

私『このゼリーって凍らせたらどうなりますか?蒟蒻畑を凍らせたやつみたいになりますか?』

問屋さん『蒟蒻畑は葛じゃないですけど似た感じにはなりますよ。アイスにしてるところもあるし』

蒟蒻畑みたいなしゃりぷるアイスになる、、
賞味期限がないならロスもない、、
よし、アイスとして作ってみよう。

ちょうど市内の夏祭りが控えていたこともあり、
試しに販売することに決めた。お祭りの一週間前に。
間に合わせる為に父に毎日試作してもらった。大変そうだった。(鬼)

そして販売してみたところ、、
なんと1日目に完売してしまったのだ。
父は焦って追加のアイスを夜な夜な作っていて大変そうだった。(鬼2)

結局葛きゃんでぃは2日で1000本売れた。
先週まで2日で1、2個しか売れなかったあの葛ゼリーが
凍らせてみただけで人気商品へと変化したのだ。

私たちはすごいすごいと喜び合い、これを機に正式に商品化しようと決めた。

しかしこの辺りから会社の雰囲気は徐々に変わっていくことになった。それも悪い方に。

つづく

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