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フットボールを生きる街 #04 熱気

04

“El sur es más pasional y eso se nota a la hora de vivir el fútbol.”
- Alexis

「『南』がいちばん情熱的なんだ。この街でフットボールを生きてみればわかるさ」

セビージャの街は、その猛烈な夏の暑さゆえに「アンダルシアのフライパン」と称されることがある。直射日光にさらされた街頭の気温計が 50°Cを上回ることもしばしばで、たまに吹く風は呼吸がしにくいほどの熱を帯びているし、恵みの雨など滅多に降らない。

それでもひとたびこの攻撃的な夏が過ぎ去ると、どこかもの寂しいような、恋しいような感覚にとらわれ、自分があの原色の猛暑に魅せられていたことに気がつく。

夏は、鮮やかなセビージャが最も映える季節。容赦ない熱気と底ぬけの陽気さを併せ持つ気候は、この街の人々によく似ている。

それもそのはず、息がつまるような熱風や、文字通り刺すような陽射しにさらされて暮らす彼らが、陰鬱で閉鎖的な雰囲気をまとうはずがないのだ。

セビージャの人々は、その真反対の性格をしている。

太陽に誘われるように外に出て、陽が高いあいだから仲間と酒を飲み交わし、陽が落ちたことにも気づかずおしゃべりに興じる。そんなふうに、一年中、街のあらゆる路地が地元の人で明るく賑わっている様子を、わたしは実に「セビージャらしい」と感じる。太陽が照らす時間が長い分だけ、この街ではゆっくりと時間が流れているような錯覚に陥ることもある。

もともと、スペイン語で「南」を意味する “sur” は、「太陽のそば」を表すことばを語源にもつという。セビージャは、そのいちばん近くで太陽に愛され、照らされるべくして生まれた街なのかもしれない。

南に生まれ育った彼らは、みずからを形容するためのことばとして、「情熱的な (“pasional”)」「熱烈な (“caluroso”)」「陽気な (“alegre”)」などを好む。彼らは、生まれ故郷と同じように、熱く、あたたかく、時に激しい。付き合いが深まるたびに、つくづくエモーショナルで大らかな人々だと気づかされる。

この街ではスタジアムまでもが同じ表情をしている。

サンチェス・ピスフアンは、世界でもっとも太陽の似合うスタジアムのひとつだと思う。ここでは、近く、低く、強く降り注ぐ陽を一身に受けとめてきた人々が、めらめらと蓄積させた感情を一気に顕わす。

そして、このスタジアムに充満する熱気は、街の暑さ、人々の情熱に比例するように強烈で、直線的にピッチまで降りてゆく。スタジアムそのものがまさにフライパンのように熱せられて生み出される相乗効果は、思わず武者震いするほどの迫力を持っている。

そういった意味では、スタジアムは常夏である。たとえ冬の日に冷たい雨に打たれても、勝ち方を忘れたチームが頭を垂れても、人生の憂鬱を抱えただれかがスタンドで嗚咽していたとしても。こもった熱は決して放出されることなく芝生の上に積もってゆく。

このスタジアムで数々の奇跡を目撃するうちに、それはチームの推進力、クラブの糧になる上昇気流へと変貌を遂げているのだということを、信じずにはいられなくなった。

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セビージャの夏は、本当に暑いです。

本文にも書いたとおり、体感気温は50℃を超え、22時を過ぎて日が沈んでからようやくみんな外に出るので、時間の感覚がおかしくなります。

わたしも留学中にはその暑さにやられ、人生最大の夏バテに襲われましたが、息苦しいあの夏が、いまはとても恋しいのだから不思議です。でもはじめてアンダルシアに旅行に行かれる際は、6~9月は避けることをおすすめします!笑

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1994年うまれ / スポーツ×ソーシャルメディア

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