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シリーズ クラシック業界の色々 〜今、そしてこれから〜 音楽大学編②

皆様こんにちは。
だいぶ間が空いてしまいましたが、先日よりスタートしましたこちらのシリーズ。
シリーズ最初は、音楽大学の色々について、5回に分けてお話します。

第1回では、大学学部の専攻実技の課題や試験について書きました。
このシリーズは、もしクラシックの演奏家を本業にするのであれば、という目線で書いております。
念のため付け加えておきますね。

さて第2回の今回は、「大学学部の授業について」のお話です。
専攻実技の練習、試験準備、コンクール出場…これだけでも盛り沢山ではありますが、
音楽大学では、音楽の理論・歴史などについて学ぶ授業などが、カリキュラムとして入っています。
順を追ってお話しますね。

なお、これは私の在籍していた東京音楽大学のカリキュラム、
更にはピアノ演奏家コースの学生のカリキュラムの一例になりますが、
基本的なことはどの大学も一緒かと思うので、参考になれば幸いです。

・音楽理論


こちらは、その名の通り音楽の理論について学びます。
特徴として、入学までに勉強してきた量など、様々な要素によって、入学時点からレベルの差があるので、レベル別にクラス分けされた上で授業が行われることが挙げられます。

ちなみに、音楽高校及び大学の入試で「楽典」という科目が試験科目に入っていますが、これは音楽理論の導入的な要素と言えるでしょう。
楽典をマスターしてから「和声」へ入るのが一般的です。
「和声」の授業は、大学1・2年は必修科目、
3年からは選択科目になり、必修でやったことの先の内容を履修し、同じく基本的にはレベル別でクラス分けがされます。

また、学校・専攻によってはコードネームについて学ぶ授業もあります。
これは、クラシックからは少し離れる内容ではありますが、
例えば卒業後の活動では、クラシックを専門としながらも、他ジャンルの曲を演奏する機会もあります。
その時に、コードネームとメロディーだけの譜面でも演奏できた方が、仕事の幅が広がるのは明らかです。

「楽典」「和声」は、楽曲分析(後述。楽曲の構成や使われている和声を理解し、楽曲全体の構造を把握すること)を行う上でも必要不可欠なので、
これらの理解度も最終的には演奏に直結してきます。
理解していることしていないのとでは、演奏にも大きな差が出てきます。
コードネームは、絶対に必須とまではいかなくても、やはり活動の過程ではオールジャンル弾くことが求められる場面も多いので、
しっかり学んでおいて、あとは実際のポップスや歌謡曲などの譜面で、練習しておくことも必要だと考えます。

・ソルフェージュ

こちらは、
この科目も音楽理論と同様、入学時点からレベルの差が出るので、やはりレベル別にクラス分けが行われます。
主には以下のような授業があります。
「聴音」(8小節程度の単旋律や、メロディーとベースの2声のもの、和音などを、数回で書き取る授業)

「新曲視唱」(8小節程度の単旋律を初見で歌うこと)

「クレ読み」(ト音記号、ソプラノ記号、アルト記号、テノール記号などのいずれか一つ、あるいは複数で示された8小節程度の譜面を、初見で読むこと)

もう一つ特徴として、特に「聴音」では、管楽器など移調楽器の専攻の学生は、実音と自分の楽器の音名と分けてこれらの科目と向き合わなければならず、
ピアノやヴァイオリンなど、実音で記される楽器の学生とは、差が出やすいことが挙げられます。

私の母校では、大学1・2年生は必修、3年からは選択科目にになり、
選択科目になってからは、ピアノによる初見の授業、ジャズやポップスの音楽理論など、様々な授業が展開されていました。

これらも、やはり一通りできていた方が、演奏にも活かせたり、
卒業して指導業を展開する際も、自分の楽器のレッスンだけに留まらず、ソルフェージュのレッスンの展開にもつなげられます。

クレ読みに関しては、できておくと様々な演奏の仕事で役に立ちます。伴奏の仕事などではもちろん、
4段譜や5段譜での演奏にも活かせます。
4段譜、5段譜での演奏は、日本の音大の授業では殆どやりませんが、海外の音楽院では専攻によっては必須です。
特にピアノの方で、本格的にクラシックでの演奏活動を視野に入れている方は、
自発的にでもやって、できるようにしておけば、仕事の幅は広がります。

・楽曲分析(アナリーゼ)

前述で紹介の通り、楽曲の構成や使われている和声、調性などを分析・理解し、楽曲全体の構造を把握する力をつけるための授業です。
私の在籍していた東京音楽大学のピアノ演奏家コースでは、
高校は必修科目、大学ではピアノ演奏家コースの学生だけに展開されていました。

バッハのインヴェンションとシンフォニア、平均律クラヴィーア曲集、
ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタなど、
バロック〜古典派の作品を中心に用いて、ディスカッションなどをしながら分析を進めます。

結論から言うと、これは絶対理解できていた方がいいです。
これらをしっかり学び、活かした演奏と、
何も考えずに感覚やフィーリングで弾いた演奏とは、
実際の演奏の質・中身の充実度、説得力も、比較にならない程違います。

・音楽史

こちらは大学1・2年の必修科目。1年生では中世〜バロック、2年生では前古典派〜近現代までを学びます。
3年以降は、ピアノ、管弦楽、オペラ、歌曲など、楽器ごとに特化した授業が展開され、いずれも選択科目になります。

作曲家の生きた時代、作品の書かれた頃の社会的背景や、作曲家自身の置かれた環境、
作曲家がどういう活動をしていたかなどは、
やはり演奏する上でも把握しておいた方がよいのは明らかだと思います。
ちなみに音楽史は大学院修士課程の入学試験では受験科目にも入ってきます。

書いただけでもこれだけの授業があります。
よく、とにかく練習時間を確保したいがためにこれらは単位のためだけにやるという学生も多いかと思いますが、
それだと最終的に音楽活動の過程で限界が出てくると考えます。

私は、上記の授業にもしっかりと臨み、
それが仕事の幅を広げ、学んだことも大いに活かされています。(活かさせて下さっている環境に感謝しています🙇‍♀️)

音楽活動に活かせる要素が沢山詰まっているので、どれだけ向き合い、活かすかは自分次第です。

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