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一歩踏み出すのは、

ずっと、エスカレーターが苦手だった。いや、今でもちょっと苦手かも。小さい頃、お母さんとデパートに行って、屋上の駐車場から降りる時、恐らく初めてエスカレーターというものに乗った。お母さんは妹の手を引いて一緒に乗って、後ろをひとりで歩いていたわたしは、エスカレーターに乗れなかった。タイミングがわからず、足を出しては引いて、そうしてるうちに長靴が脱げて、わたしの長靴だけが下で待つお母さんのところへ行く。わたしはより一層焦るけれど、やっぱりエスカレーターに乗れなくて、悲しかった。通りかかった方が手を引いて一緒に乗ってくれて、わたしは無事にお母さんのところへ行けた。それ以来、ずっとエスカレーターにうまく乗れなくて、エスカレーターが苦手だった。

エスカレーターに乗るように、一歩を踏み出すのが難しいことがある。今なのか?ってタイミングに迷って不安になったり、うまく乗れなかったらどうしよう?足を踏みはずしてしまったら?って、怖くなる。でも、エスカレーターと同じで、一歩踏み出すことができたなら、すいすいっと前へ進んでいけることがある。

最近のわたしは、外に出て気分転換したい、現実逃避したいって思いながらも、疲れるかもしれない、めんどくさいって引きこもりがちになっていた。そうなると、どんどん気持ちが低迷していく。でもこの日曜日、たまたま人に誘ってもらって、外で1日を過ごした。その日の朝にLINEがきて、たまたま夫が仕事でひとりだったから、出かけることにした。陽の光を浴びて、風を感じて、海を眺めて、家の近所なのに遠くに来たみたいに気持ちが軽くなって、ただ外に出ていただけなのに、とても気持ちよかった。一歩踏み出さなきゃって思っている時、その一歩はとても大きなもののように感じる。あれこれ迷って悩んでなかなか前に進めなくて、でもいざ一歩踏み出す時って、案外簡単だったりもする。

30歳を過ぎて、ようやく怖がらずにエスカレーターに乗れるようになったのは、立ち止まらないことを覚えたから。タイミングをはかろうと、足を止めてしまうと、余計にタイミングを掴めなくなる。歩いてきたままの流れで、えいっと足を踏み出したら、エスカレーターに乗れる。そうやって、あれこれ考えずに、流れに乗って、えいっと足を踏み出したら、いつの間にか一歩前に出ていることってあると思う。

あれもこれも、えいっと踏み出すのはやっぱり怖いし不安だけど、時には流れに身を任せて、自然と一歩が踏み出せたら、何か楽しいこと、わくわくすることが起こるかもしれない。そんな風に、前に進むことを恐れずに、めんどくさがらずに歩いていけたらいい。

読んでくださって、ありがとうございました。

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