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懊悩の部決

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 昨日、志学社選書の創刊第一弾となる『侯景の乱始末記』の部決をした。部決、つまり部数決定であり、初版を何部刷るかを決めることの謂である。

 いったい、部決というのは充分なデータと豊富な経験、しっかりとした商品知識があってなお、うまくできるというものでもない。そうでない場合はなおさらで、刷り過ぎは版元が損をするだけだが、初版が過小であった場合の逸失利益というのは馬鹿にならない。

 「緊急重版」という言葉がある。これはポジティブに受け止める向きもあるようだが、ことはそう簡単ではない。
 もちろん刷らないよりはいいのだが、在庫が市場から払底することで販売機会が失われるし、初版でまとめて刷っていれば、印刷費も安く済むし、印刷会社に無理な進行で重版依頼をする必要がもない。
 かつて営業をやっていたころの経験と試算から、僕は発売二週間以内の重版決定は初版部決のミスであると考えている。

 ──と、特大ブーメランになりかねないことを書いたが、今回は需要予測データとして使えそうなのはAmazonの初回発注数のみ。条件が悪すぎる。
 だから、せめて即品切れを防ぐために、初版は当初想定していた倍の部数にした。また、受注状況によっては発売前に重版検討を行えるよう、事前受注の状況をこまめに確認し、どのくらいのペースで伸びているかを把握するようにしている(これは委託扱いでなく注文扱いだからできることでもある)。

 もう印刷所には伝えてしまったから、初版は変えられない。果たしてこの数字でよかったのかどうか、人事を尽くして天命を待つばかりである。

https://www.amazon.co.jp/dp/4909868003/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_ZqfTDbHAP843V

(これより下に文章はありません)

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