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奈良盆地南部の「土葬の村」

 歴史雑記073
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はじめに

 先ごろ出た高橋繁行『土葬の村』がなかなか面白かった。
 多くの人はあまり馴染みがないかもしれないが、僕の父の出た村では、つい10年ほど前まで土葬は現役であった。
 今回は父に聞き取りをして、葬式から墓石を建てるまでがどのような手順で行われていたかを記してみたい。

「土葬の村」だった五條市木ノ原町

 以前このマガジンでも書いたが、平林家はもともと、五條市に隣接する和歌山県橋本市中道(なかんど)というところに居住しており、大正年間に没落して妻方を頼って五條市木ノ原に移住した。
 おそらく中道もかつてはそうであったと思われるが、木ノ原では平成に入ってからもなお土葬が行われていた。
 6年ほど前に亡くなった祖母と叔父は火葬にしたが、その少し前まではもっぱら土葬で、戦後すぐ亡くなった祖父も、2歳で亡くなった叔母ももちろん土葬であった。
 祖父のケースと、その後父が経験した村の一般的なケースを交えつつ記していこう。

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