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ある日突然、嵐は去る

思えば私の人生は、竜巻みたいな出会いで大きく動いてきた。

「自分の歌を歌ってみたくて…」と話せば
「おー!やったらええよ!」

どかーんと背中を押してくれたシンガーソングライターの大先輩。

「ワンマンライブをやってみたくて」と言えば
「よっしゃ、いつやる?」

カレンダーを手に、すぐチャンスをくれたカフェのマスター。

「あなたの作る歌には力がある」と力強く言い切ってくれた、ボイストレーナーの言葉には、その後会社員を辞めてライブに専念してみる勇気をもらったし。

「音楽やってるなら社歌作る?」と思いつきのように言ってくれた社長は、本当に歌を作る仕事をくれた。

みんながみんな、竜巻に巻き込まれた後のことまで見てくれるわけではないけれど。

私は竜巻に乗って、思いっきり飛んでみる選択を選んだこと、ひとつも後悔してない。

それは、いつも突然現れる。

依頼されて作った音楽を聴いてくれた人が、2時間半にもわたって「私の今後のブランディング」について熱く語ってくれたのだ。

「あなたの今後は、私が保証する」なんて
かっこよすぎる……!

でも、それ以上に嬉しかったのが「私の作った音楽が、こんなにも一人の人を動かしているんだ……!」と思えたこと。

今までの私ならきっと「ほんと、すごい人だなぁ」で終わっていただろうけど。なぜだかそう感じられたのだ。

今までどんなに褒めてもらっても埋まらなかった大きな穴が、少しだけ塞がっている気がした。

それはきっと、これまで出会って素敵な言葉や体験をくれた人たちのおかげで。そして、今まで積み重ねてきた、取り留めもないすべての出来事のおかげなのだろう。

嵐が去るのも、いつも突然だ。

それまで起きてきた出来事の意味を知るのも、ふとした瞬間。

でもきっと、大粒の雨に打たれた最悪の日にも意味があったんだって、いつか教えてくれる。

私は竜巻にはおそらくなれないけれど、誰かにそっとチケットを差し出せる人になりたい。

気が向いたらおいでよ。
わたしを深める旅に出かけようって。

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