今度は「おかえり」って言ってあげよう
先日こんな話を聞いたとき、私の頭の中には木でできた可愛らしい扉が見え、開けた瞬間ふわっと肌に触れる柔らかい風を感じた。
扉を開けたんだね。
新しい世界を見に行くんだね。
そんなあの子に、私は思わず「いつでも帰ってきていいからね」と言ってあげたくなったのだった。
*
一歩踏み出すまでの道のりが、途方もないことなんてざらにある。
新卒で入った会社は、本気で「辞めよう」と思った日から半年は真剣に悩んだし、今だって「私が人生でやりたいことはこれかも」とわかった日から、本格的に動き出すまでに2年もかかっている。
頭の中でぐるぐる作戦会議をし、悩み相談をし、ようやく小さな一歩を踏み出せたかと思ったら、またぐるぐるし……。
一体このぐるぐるはいつまで続けるんですか?
せっかく進んだのに、また戻ってきてるじゃん、と。
半分泣きそうになりながら生きてきた。
だけど、自分の中で作戦会議を繰り返すことは、そんなに悪いことなのだろうか?本当に一進一退なのだろうか?
勝手に「挫折」とか「退化」とか、ネガティブなものだって思い込んでないかな?
*
公には出さないまま試行錯誤を繰り返す時間は、家の中にいるみたいなものだ。一人でもくもく試作したり、心を許した相手にだけちらっと見せたり。
準備はしてもしなくてもいいけれど、いずれはその家の扉を開けて、外に出てみた方が楽しい。刺激的で、ときには危険だけど、その分学びや喜びも大きいかもしれない。
でも疲れたら、いつだって安心なおうちに帰ってきたらいいんだ。
あったかいお茶を淹れて、日記でも書こう。
そうしてエネルギーが溜まったら、準備が整ったら、また外へ出かけたらいい。
そう思うと、ぐるぐるしまくりな日々も、スッと許せた気がした。
今度、私が外への冒険に出かけてまた迷ったときは、優しい気持ちで迎えよう。
「おかえり、お疲れ様」って。
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