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ソイワックスについて

近年、パラフィン製キャンドルに代わって広く使われつつある "ソイ" キャンドル。私も、キャンドルを製作するにあたって素材の一つとして「ソイワックス」を使用し始めました^^

さてそのソイワックス、「ソイ(soy)=大豆」ということは比較的簡単に分かるのですが、詳しくは一体どのようなものなのでしょうか?

その素性や特性、ソイワックスを使う意味などについて、科学的観点から少し深く調べ&自分の実感と照らし合わせながら考えてみたいと思います!



1)そもそも、ソイワックスとは?


キャンドルの原料を扱っているお店で「ソイワックス」について調べても、単に「大豆油を主原料にしたワックス」程度にしか書いていない場合が多いです。

しかし、大豆油ってそもそもワックス状だっけ??
そして、「"主" 原料にした」っていうことは、他の物質も混ざってるの??
・・・という、元リケジョとしての疑問が沸き上がってきます(笑)

そこで、いろいろな油を販売している会社(あぶら屋ヤマケイさん)のHPを拝見してみると・・・

大豆油に水素を添加した硬化油で、ワックス(蝋)ではないのですが海外では「ソイワックス(大豆の蝋)」という商品名で販売され、ソイキャンドルやアロマワックスサシェの材料としても使われております。

https://yamakei.b-smile.jp/products/list.php?category_id=183 より

・・・とのこと。

なるほど!
つまり、中学校 or 高校の理科で習った「マーガリンはもともと液体だった油に水素を添加して固形化したもの」と同じ原理でした💡

ここでさらに調べると、大豆油の主要成分は「リノール酸」と呼ばれる、分子内に二重結合を2つ持った不飽和脂肪酸のようです。

リノール酸(富士フイルム和光純薬(株)のHPより)

脂肪酸の種類はたくさんありますが、一般に、炭素の数と二重結合の数によって「液体で存在しやすいか/固体でいやすいか」の性質が変わります。

炭素数が同じ脂肪酸を比較した場合、二重結合の数が少ないほど融点が高くなる(=固体で存在しやすくなる)ので、その点を利用して、二重結合が多い(液体状の)脂肪酸に水素を付加(※反応イメージについては以下の「参考」に記載)することで、固形化できるという訳です。

ちなみに、マーガリンの原料として大豆油が用いられることもあるそうなので、ソイワックスはマーガリンの一種とも考えられますね。


<参考>
水素付加については、財部明郎さんのWEB記事の図が分かりやすいので引用させていただきます。ついでにマーガリンのお話も載っています!

水素付加の反応図(「世界は化学であふれている」第2.3章の図-14より引用)


以上のことから、「ソイワックス=天然物」というのは半分間違っていると考えて良いかと思います。半合成化合物の部類ですね。

ちなみに、「大豆油を "主" 原料にした」という記載についてメーカーに問い合わせたところ(ヤマケイさんではありません)、使用感の調整のために極少量、植物性油脂を添加しているとのこと。

キャンドルづくりの教本を見ると、ソイワックスに限らず、蜜蝋・パラフィンのいずれを主原料にしてキャンドルを作る場合でも、ステアリン酸などの添加物を入れて作業性や仕上がりの良さを高めることが書かれているので、完全無添加で作るのは難しいのかもしれません。。。

つまり、「ソイキャンドル」や「蜜蝋キャンドル」として販売されている商品でも他の物質が入っているということは認識しておく必要があるということです。お値段が安い商品については特にご注意を!

※私自身が作品を製作する際は、商品紹介文の「原料(素材)」として記載したもの以外は一切使用しておりません。ただし、上記のとおり「ソイワックス」として売られているものにすでに未知の物質が入っている場合については私の知るところではないので、その点はご了承下さい…

2)ソイキャンドルの特長(一般論)とその検証


一般に言われる(パラフィン製と比べた時の)ソイキャンドルの特長は…
 ◎ スス(煙)が出にくい
 ◎ 燃焼時間が長い
 ◎ パラフィンキャンドルのようなイヤな臭いがない
 ◎ アロマキャンドルとして使いやすい
 ◎ やさしい灯り
 ◎ やさしい色・表面性(乳白色でツヤ消し調)
 ◎ 空気を浄化する
 ◎ 環境にやさしい

以上についてその根拠や実情をざっくり調べてみると…

◎ スス(煙)が出にくい

ここで、そもそも「スス」って何でしょうか?
答えは、炭素(C)の微粒子です。

炭化物(今回の場合はワックス)の燃焼時に酸素(O2)が十分あれば「C+O2 → CO2)となり、目に見えない形で空気に溶け込んでいきますが、酸素が不十分だった場合(不完全燃焼)等には、炭素の微粒子として空中に浮遊します。

ということは、「ススが出にくい=不完全燃焼しにくい」ということでしょうか?
それとも、ワックスを構成している化学物質達の特性として、炭素粒子になりにくいものがあるということでしょうか?
パラフィンは原油から精製されて作られるため、その精製度合いによってはいろいろな不純物を含んでおり、それがススになりやすい可能性もあります。

この辺りについてはもう少し調べる必要がありそうです。


≪2023-11-24追記≫
追加調査の結果はこちらにまとめておりますので、よろしければご参照ください!



◎ 燃焼時間が長い

この理由として良く商品紹介に書かれているのが「ソイワックスはパラフィンワックスに比べて融点が低いため、ゆっくり溶け出して燃えるので燃焼時間が長い」という文句。

「ふ~ん、そうかぁ!」とつい納得しそうですが、融点が低い=溶けやすい=早く溶けるはずなので、この文章は少し「?」です。

実際、同じパラフィンワックスで比較すると、融点が高いものほど燃焼時間が長くなるようです。

詳しくはもう少し調べてみないと断定できませんが、燃焼=酸化反応であることを考えると、パラフィンに比べるとソイワックスはこの酸化反応が起きにくい物質である and/or ソイワックス燃焼時の方が酸化反応が起きづらい状態(=反応場が低温)であるのではないかと考えられます。

なにせパラフィンは石油由来の飽和炭化水素(CとHばかりで構成された、極単純な構造)なので、ガンガン燃焼していきそうなイメージは持てますね🔥

◎ パラフィンキャンドルのようなイヤな臭いがない

こちらについては、根拠というよりは自身の実感の方が大事と思います。

私自身、パラフィンキャンドルの臭い(特に消火後)は正直苦手で、その点もあり天然由来の素材でキャンドルを作っています。

ちなみに不快な臭いが少ないという点では、個人的には俄然(ソイワックスよりも)蜜蝋推しです!

パラフィンの臭いの原因は、精製時に除去しきれなかった不純物によるものであるという説もあるので、高級なパラフィンキャンドルの場合は感じないのかもしれません。(そのようなキャンドルをまだ体感したことがないので・・・すみません💦)

◎ アロマキャンドルとして使いやすい

こちらは先に挙げた「ソイワックスはパラフィンワックスに比べて融点が低い」ことが論拠となります。パラフィンワックスのようにワックス特有の臭いがアロマの邪魔をすることがないから、と記載されている作家さんもいらっしゃいます。

アロマキャンドルの着火時に広がる香りは、おそらく(気化したワックスではなく)液化したワックス中で香り成分が温められて揮発したものではないかと推測します。

その点において、ソイワックスは低い温度で液状になってくれ、また、芯の太さを工夫すればより広い液だまりをつくれるため、香料をゆっくりかつ大量に放出させることができるのではないかと考えます。

一方で、調べてみるとパラフィンワックスにもソイワックス並みに融点が低いものはあり、結局は作者のこだわりやコストとの兼ね合いという点も大きいのかな?とも思いました。

◎ やさしい灯り

こちらについては臭いと同様、自分で感じることの方が大切かと思います。

私が所持しているパラフィンキャンドルの数が少なく、きちんと比較できないのが最大の要因ですが、正直申し上げると私自身はそこまで大きな差を感じないかな、というのが現在のところです…

「ススが出にくい」のところで述べた「ソイワックスの方が発生する炭素粒子が少ない」という点から、炎の中に存在する炭素粒子も少ない=炎の輝度が下がる、という可能性も考えられる??

※キャンドルの炎の大部分を占める橙(赤)色の炎は、炭素が熱に晒されて発光したものです。

◎ やさしい色&表面性(乳白色でツヤ消し調)

こちらは完全に好みの問題と思います。

私自身について言えば、パラフィンのツヤ感がどうも人工的に感じてしまい苦手です。
そのような理由もあって天然由来の素材でキャンドルを製作しております🍃

◎ 空気を浄化する

最初に申し上げると、こちらについては【要検証!】と思います。
根拠となる科学的データが簡単には見つからず、自分で考えてもすぐには答えが出せそうにありません。。

ではなぜみなさんが「空気を浄化する」と書かれているのか、その理由についてざっとネットを見ていて感じたのが、

① 燃焼によってマイナスイオンが出てる、という点のみにフォーカスしている。
② エッセンシャルオイル(精油)に含まれる成分が空気を浄化する説、から転じて、ソイワックス単体も空気を浄化する、と論理をジャンプさせてる?
③ パラフィンに比べて空気を汚さない(ススや石油由来の有害物質が出にくい)⇒ 空気浄化、という論理のジャンプ?

・・・ではないかな~と。

②③については検証の仕様がありませんが、①についてはもう少しいろいろ調べると分かるかもしれません。

キャンドルが燃焼すると、ワックスに含まれる水素原子(H)と空気中の酸素(O2)が結合して水(H2O)が生成するという事実から、マイナスイオンは確かに出ているのかもしれませんが、それならガスコンロやファンヒーターを点火していてもマイナスイオンは出るのか?!

マイナスイオンが出ることで空気はどのくらい浄化されるのか?!

マイナスイオンが出て空気が浄化される度合いは、キャンドルを燃焼することで発生する汚染物質を相殺する以上の効果があるのか?!

・・・などなど、未解決の疑問があります。

自分自身の感覚としても、キャンドルを使用していて空気が良くなった!という実感はまだ持てておりません。
※現状私がキャンドルを使用しているのが天井がやたら高い部屋なので、実感するのは到底無理な話だとも思いますが。。。

よってこちらの項目については、もう少し詳細が分かり次第、続報をご報告できればと思っております!

◎ 環境にやさしい

こちらについてはこの件に限らず、常に私が意識している点です。
しかし、これがまた複数の角度から考えないといけないので難しい!

どのような点が環境にやさしいのか?と考えてみると、
1) 石油由来ではなく栽培で得られる原料からできるので、サステナブル。
2) 廃棄時、生分解性がある。

・・・これらの点については環境にやさしいと言えると思います。

一方で、ソイワックスは大豆油を化学変性したものなので、その変性過程が環境にやさしい技術かどうかは不明ですし、「大豆を育てる」と一言で言っても、森林を切り開いて農薬をバンバン使い、都合がいいように遺伝子まで組み替えて大規模に栽培することが果たして環境に優しいと言えるのか?
また、海外で作られたものを莫大な輸送エネルギー(重油で動くタンカー等)を使って輸入し、使うことが果たしてエコなのか??
・・・などなど、自問自答は続きます。

作品づくりにはできるだけオーガニックで国産の原料を使いたいと思っているので、今回作品を作る前に調べてみましたが、残念ながらオーガニックな国産ソイワックスというものにまだ巡り合えていません。

せめてものあがきで「日本製」と書かれたワックスを使うようにはしていますが、おそらくこれもワックスに加工したのが日本なだけであって、残念ながら原料の大豆はアメリカかどこかで大規模栽培されたものでしょう…

今後の日本の取り組みに期待するばかりです!

3)結論 ~私がソイワックスを使う理由~

以上、不可解な点も抱えつつ長々と述べて参りましたが、私がソイワックスを使う理由は・・・

★ パラフィンキャンドルのようなイヤな臭いが少ない

★ パラフィンキャンドルよりも自然な質感

★ サステナブルな素材(場合によるけど…)

・・・という感じです!

本文中で「要検証」とした点については、今後も調査を続け、分かり次第結果をお伝えできればと思いますので、引き続き応援のほどよろしくお願い申し上げます^^

長文を最後までお読みいただきありがとうございました!

☆本記事の無断転用はご遠慮ください☆


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