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スパイシーなMac Book
Mac Bookからはカレー屋のネパール人の香ほりがする。
崎田さんがそんなことを言うものだから、じゃあ試しに分解して中を見てみようということになった。
個人経営をしている崎田さんは、先に入った給付金で懐が暖かい為に、少しの躊躇もせず十年間愛用したMac Bookを分解し始めた。これを機に最新のMac Book pro16インチを買うそうだ。
パソコンというものは、どういう理論でメールが送れたり、動画が見れたり、キーボードを打つと文字が現れたりするのかちっとも分からないけれど、だからといって中に摩訶不思議な呪文が書かれている訳でも、大量のゼンマイが一生懸命ギッコギッコいっている訳でもなくて、勿論カレー屋のネパール人なんかが入っている訳など微塵もない。
崎田さんはあっという間にバッテリーなんぞが入っている内側に手をかけ、容易に指先で持ち上げて中を見た。
途端、凄まじいほどのスパイスの香ほりと刺激が鼻腔を襲い、周囲には軽快な音楽が流れ、無性にマンゴーラッシーを嚥下したくなる欲望に駆られた。
崎田さんと私はいても立ってもいられなくなり、部屋を飛び出してこの場所から一番近いカレー屋へ飛び込んだ。ネパール人が伝票を片手に注文を取り、焼き立てのナンと数多のスパイスを使ったカレーを我々の前に運んだ。崎田さんと私は無我夢中でむさぼり、時たまタンドリーチキンを挟みつつマンゴーラッシーに溺れた。そこは紛うことなく、部屋に残されたMac Bookの中であった。
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