コロナ世代について いっちょまえに語ってみる


2020年5月21日。
開催予定だった夏の甲子園が中止となった。
このニュースを目にしたとき
甲子園球児たちの悲しみや絶望を強く感じたが、
しかしそれは何も、
甲子園を目指していた少年たちだけでなく
コロナウイルスによって延期された
大会やコンクール、発表会などに関わる
すべての学生も同じ気持ちであることを
忘れてはいけない。

夢と希望と努力を抱いて、
まっすぐ走ってきた道の先に
何もない…。
その虚無感を思うと、すべての関係者に対して
なんともいえない切ない心持ちになる。

しかし、私は強く思うのである。
理不尽なウイルスによって、
いともたやすく夢や青春を摘まれた若者たちは
どの世代よりも優しく、忍耐強く、立派な精神を持ちうる、と。


コンクールの延期で出場ができなくなったある吹奏楽部が、
ビデオ通話を使って、全員で合奏をした、
とニュースで見た。
防音がきちんとされていない部屋や、
楽器演奏禁止のマンションに住む中で
各々が思考を凝らして、車の中で演奏したり、
人のいない河原で演奏したり。

制限という拘束の中で、
「こうしてみたらどうだろう」「こうしたらできるんじゃないか」
と、辛い側面ばかりに支配されないで、
輝きを失わなず、幸を見出す。
『辛』という字に一本足して『幸』にする。
それがどれだけ大変なことか…。

この自粛の最中、数多くの学生が、
そういったを見出している。
なんて素晴らしいんだろう。

「いままで普通に演奏できたことがどんなに幸せだったのか、と思う」

そう10代の子が言うのだ。
なんのくすぶりもなく言えるだろうか。私は言えない。

今、自粛を要請されている子どもたちは、強い。
徳が高い。そして優しい。
彼らが国の先端を担う大人になったとき、
日本は変われるかもしれない。


一般に、団塊ジュニアと呼ばれる世代のことを
俗に『ロストジェネレーション』という。

バブル崩壊の煽りを受け
就職氷河期を迎えた人たちをそう言い、
1970年代後半〜1980年代後半辺りに生まれた人々を指す。
彼らは、幼少期はバブル真っ只中で豊かに暮らしていたが
バブル崩壊によって全てを奪われた人たちである。

終身雇用や、専業主婦など
当たり前、と言われていた概念がことごとく壊されて、
終末をも感じる絶望的な現実を目の当たりにした世代。

大学を卒業してもアルバイトをする。若年のホームレス。
それまで信じられなかったことが
当たり前、になってしまった。
まさに天から地に堕ちる経験をした世代なのである。

しかしながら、彼らは多大なる苦しみを知っているからか
社会人になると大変に優秀な存在になる。
「何も信用できない」と心の隅で絶望している為
最悪のケースを想像することもでき、
たとえそれが現実になっても冷静に対処できる。
理不尽な仕事を回されても、
それ以上の苦しみを知っている為に
くよくよせず、非常にタフネス。

さらに、痛みを知っている故に優しい
まるで僧のごとく、悟りを開いているような人が多い。

まさにロストジェネレーション世代である
SMAPメンバーが歌った『夜空ノムコウ』が
同世代の人々から絶大な人気を博したことは納得のいくことである、と矢野利裕氏は著書に記している。

画像1


(『ジャニーズと日本』著・矢野利裕)



私は思うのだ。
このコロナ禍で、大変な悲しみ、
絶望を味わった子どもたち、学生、就活生は
絶対に『第二のロストジェネレーション』になりうると。
痛みに強く、誰よりも優しい世代になるだろうと。

今は、大変に苦しい。
子供というのは、家庭と学校にしか世界がないから。
狭い世界で、我慢して我慢して、傷ついて、泣いて…。
でも、その苦しみは、彼らを仏にする。英雄にする。

辛いなあ。
イライラするなあ。
悲しいなあ。
なかなか忘れられないよな。この痛みは。
でも、絶対未来で、その傷が君たちを守ってくれる。
そんな日が絶対来る。

「『ロストジェネレーション』でもないお前が何を偉そうに」
と思うかもしれないが
兎にも角にも、私にはっきり言えることは
今の子供たちは強い。
君たちは偉い。

胸を張ってほしい。
ハチャメチャに立派だ。
腹立つことも、むしゃくしゃして八つ当たりすることも
何もやる気が起きなくてダラダラしちゃっていても
耐えていることに変わりはない。
胸を張ってほしい。

きっといつか『夜空ノムコウ』が沁みる日がくるから。

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