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偶には落ち着いた日記を。

4/21(日)

ごうんごうんと洗濯機のうるさい夜だ。

雨の夜。人気のないコインランドリー。洗濯機が回る意味の無い音が耳を塞ぐ。見るべきものも無い。外を見ようにも明るい室内から夜の街はほとんど覗けない。ガラスに反射した洗濯乾燥機をぼうっと眺めていた。

コインランドリーの照明は一段と白く感じる。何の温かみも無い白だ。清潔感があると言えば良い様に聞こえるが、要は寂しさを掻き立てる光だ。パサパサとした味気ない光。それを満たす無機質な音。この世から何か大切なものが一つ抜け落ちてしまったら、きっと世界はコインランドリーみたいになるのだろう。その世界には希望なんてどこにもなくて、洗濯機に入れる100円玉だけが輝いているに違いない。そんなことを考えて少し寂しい気分になった。

ぴいと音がして洗濯が終わった。何の意味もないBGMだけが流れる。コインランドリーの前、雨のアスファルトを走る車の音がしゃあっと聞こえた。静かになった世界に僕はまた少し寂しい気持ちになった。意味の無い洗濯機の音でも賑やかしにはなっていたらしい。それなら僕も生きてて良いかもなと思った。

洗濯物を乾燥機に突っ込み、また同じような時間が経った。誰かがコピペしたみたいな時間。一週間が始まるというそれだけを感じさせる時間。僕はまさにその準備のためにここにいるのだ。そう思いながら、僕は一週間が始まることに何の希望も見出せずにいた。洗濯したお気に入りの服を見せたい人もいない。この服を着てやりたいことも無い。それでも一週間は始まる。

乾燥が終わると、僕は服をまとめて夜の街に出た。雨は嫌いだ。小さな折り畳み傘に体を押し込んで家路を歩いた。また意味のない一週間が始まる。僕を擦り減らすだけの毎日。僕はその対価を見つけられずにいる。

それでも、それでもきっと生きていて良いのだ。きっと。

僕はそんなことを考えながら、せっかく乾かした服をまた雨に濡らして家に帰った。

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