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対コロナウイルス論 ④日本食しか知らない日本食好き

この連載では、新型コロナウイルスCOVID-19に対して、私たちがどのように立ち向かっていけばいいかを考えていきます。

前回までで、世界で今、何が起きているのかを知ることとが大切なことであり、信じる情報と信じない情報の区別に注意しなければいけないことを主張してきました。

何を信頼すればいいのか。それがはっきりとはわからないのであれば、どの情報も怖く思えて、情報を手に入れることを辞めてしまうかもしれません。

しかし、自分がもっている情報が多いに越したことはありません。以前のナポレオンの例で言えば、文献を1冊読むより、10冊読んだほうがナポレオンについて詳しくなれるでしょう。今起きていることについても同様です。勿論、大量の情報を集めるためにはそれなりの時間がかかります。普段ならなかなか難しいものです。しかし、今は普段よりも時間はあるはずです。十分な時間ではないかもしれませんが、何もしないでいるには有り余るでしょう

情報は質によっても異なります。ナポレオンの情報も、中学生の夏休みのレポートより、中世ヨーロッパ軍事史の専門家のほうが有益になるでしょう。さらに、ナポレオンの軍人としての優秀さを語るだけの文献を読むよりより、政治についての文献や、本当に彼は優秀なのかを検証している文献も合わせて読んだほうが、皆さんが手に入れる情報は、良質になります。

しかし、情報の質を上げることはこれまた難しいことです。質は量とは違い、10倍の時間を使えば10倍上がるわけではありません。なぜなら、良質な情報は多角的なものであるからです。

人間という種は非常に主観的な生き物なので、僕たちが手に入れる情報は(僕も含めて)極めて断片的な場合が多いものです。毎朝起きてから見るテレビのチャンネルは何となく決まっているでしょうし、毎日、同じ会社の新聞が送られてきますよね。様々な情報が流れているスマートフォンでさえ、絶えず僕たちを監視して趣味趣向を分析し、僕たちが関心も持ちそうな記事だけをおすすめしてきます。その中で形成された僕たちのデータベースは、極めて断片的になりがちです。

でも、自分とは縁の遠いものや反対意見を主張する記事を読むことはなかなかありませんよね。それでも、データベースの質を上げるには、自分とは異なる意見も取り入れる必要があります。日本食しか食べたことのない人が語る日本食の良さと、トルコ料理やイタリア料理も食べたうえで語られる日本食の良さが異なるのと同じです。僕たちは、日本食しか食べたことのない日本食好きになってはいけないのです。

この記事のまとめ

今回は、対コロナというより「そんなの当たり前じゃないの?」という記事になってしまったかもしれません。

自分のデータベースは極めて断片的で不完全だ

このことを強く念頭においてください。そのうえで、この危機では、日ごろでは縁の遠いような記事も読んでみてください。

次の記事では、具体的に手に入れた情報をどう使っていけば良いのかを考えていきます。よかったら読んでください。

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